ピルシカ=イニド
俺の名前は、ピルシカ=イニド。
イニドといえば地元では知らぬ者がいないくらいの力を持った家だ。
そこで生まれた俺ピルシカ=イニドと姉のフレカ=イニドは、幼いころから魔法石を与えられていた。
四元素魔法を習っていく中で魔法は合わせて使うことで威力が増すということを知った。
ではこれを全て合わせればどうなるかとフレカが言い出し、部下である俺はその実験につきあわされた。
合わせると言ってもそんな単純じゃない。
すべてを同じくらいの大きさにすると勘違いしているやつがいるが、まるで違う。
大体なんだ「同じ大きさ」って土の魔法と風の魔法何をもって同じとするんだ馬鹿か。
そんな間違った認識のおかげで消滅魔法は幻の魔法と言われ再現不可能とされていた。
そんなことなどつゆ知らず、俺たちは四元素魔法の混成に明け暮れた。子供の興味とは飽くことがなく、毎日試行錯誤を繰り返すうちついに消滅魔法が誕生した。
よくコツを聞かれるが、そんなの知るか。ポッとやってボワボワとなってポワワーとなればいいのだ
そうして一番最初に吹き飛ばしたのは自分の家だった。
ついでに後方にあった町も吹き飛び見事Ⅰ群認定を受けた。
消滅魔法が使えるってだけで大金がもらえ、たまに言われるがままに目の前の建物を吹き飛ばせばそれだけでチヤホヤされる。
なんてチョロい世の中だ。
そんな俺達の前に現れた男
クロピド=グレル
Ⅰ群の中でも、とびきりの有名人だ
なぜならⅠ群唯一の剣士なのだ。
Ⅰ群というのは、Ⅱ群と違い経験を積むだけではなれない。
「兵器」となる他人より抜きん出た「何か」がないとなることが出来ないので、どうしても魔法使いになる。どんなに強かろうが剣で攻撃できる人数などたかが知れている。
Ⅰ群に上がりたいがために剣士から魔法使いに変わる奴は多い。
そんな中剣士のままⅠ群まで上り詰めた異質な存在。
たかだか剣一本が魔法にかなうはずがない。
そう考え討ち取ろうとする奴らが後を絶たないのだが、その全てを返り討ちにしている。
初動が半端なく早く、敵に会ったらとにかく瞬殺。
命乞いも言い分も聞いてはくれない。口を開く前に首が飛んでいる。
クロピドの「敵」認定基準が良くわかっていないのが怖いところだ。
一度、村がクロピドの手によって滅ぼされるという事件がおきた。
俺らなら消滅魔法で一瞬なのだが、一軒一軒家をまわり村人全員を殺して回ったてんだから相当イカレテル。
以来、クリピドは自分の仲間以外『敵』と考えているのではないかというのがもっぱらの噂である。
あの事件以降、クロピドを知る人間は、まず近づかない。
遠くに黒髪の黒衣の剣士姿が見えただけでしっぽ巻いて逃げる人も少なくない。
近づくのは奴の首に用がある人くらいだ
そんな危険人物のクロピドが子連れで歩いていたのだ。
それだけではないそのガキを庇うことまでして見せた。
あの血も涙もない残虐非道と名高いクロピドが。
これはクロピドを殺るチャンスだ。
魔法で守ってさえいればアイツの攻撃は届かない。
あとはこちらの魔法が届くように舞台を仕上げるだけだ。
あのガキを人質にとる。




