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ただの事故

 

「あのガキがどうなっ……」

「待て!!話をきけっ」


 誰かの慌てた声が聞こえてきた。どうやらわしはまだ生きているようじゃ。


「ぎゃっ」

「がっ」


 目を開けるとクロ助が屋根の上にいた男女を蹴り落したところだった。


「……!!」



 あの高さから落ちたら、死んでしまう!


 思わずクロ助にしがみつく手を放し、身を乗り出し二人の方へと手を伸ばす。


 そのままバランスを崩して前のめりに落下する。


「わっびっくりした」


 クロ助の手が伸びてきて体を支えられる


「気が付きました?」


 今一瞬気を失ってましたよというクロ助の話はまったく頭に入ってこない。

 さっきの二人がどうなったか気になり駆け付けようとしたら腕を掴まれ引き留められた。


「大丈夫です。彼らはあの程度で死ぬほどやわじゃない」


 にっこりと笑うクロ助の頬を張る。


「人を突き落としておいて、何言うとるんじゃ!」


 ちょっと気が触れとるんじゃないのか。



「大体、さっきも、人の話は最後まで聞かんかっ」


 無事だったからよかったものの、死んだらどうするんじゃ!!




 怒鳴りつけられたクロ助は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてこちらをみていた。


「こっちだっ!!!」

 唐突に沸いた声に振り返ると街の男たちが屋根へ登ってきていた。


 なんでこの町の人達はこんなにしつこく追ってくるんじゃ。

 もしかしたらただの屋根の修理かもしれないと淡い期待をしてみたが、やはりこの男たちも同じように襲い掛かってきた。


 すかさずわしを抱えたクロ助は後方へ飛び隣の屋根へと移った。


 大きな手が後頭部に回され顔がクロ助の胸に必要以上に押し付けられる


 次の瞬間、何か重たい音が後方から聞こえてきた。


 後ろを振り返ろうとするが後頭部を強く固定されて、なせなかった。


 なんじゃ?何が起きたんじゃ?

 唯一見ることができるクロ助の顔を見上げる


「———っ……」


 その方向を見るクロ助の無表情さに身を震わせる。


 さっき襲ってきた男たちが落ちたのか?

 落ちて死んだのか?


「……すみません」


 それが、答えだった。

 解放された時にはすでに見えない場所にまで移動していた。クロ助が気を使ったのが分かった。


「クロ助!」


 別に誰が悪いわけではない。ただの事故じゃ。


 じゃが


「屋根は駄目じゃ!落ちたら危ない!」


「……そう言われましても」


 道に降りて逃げようと提案すると、クロ助は困った顔で下を見下ろす。

 下ではわしらの姿をみつけた男たちが追いかけてくるのが見えた。降りたら最後あっという間に囲まれてしまうだろう。


「大丈夫じゃ、話せばわかってもらえる」


 なんならわしも一緒にあやまってやろう。


「それは無理でしょうね」


 じゃが、それしか方法はないじゃろうが。

 町の出口にはすでに人がはっていて、出れそうにない。

 女達は子供をつれて家の中へ避難しカギをかけて成り行きを見守っているようだ。


「あの二人に見つかる前に どこか隠れる場所……」


 クロ助はブツブツつぶやきながらあたりを見渡している。まだあがく気らしい。


 もう勘弁してほしい。



 ……あー坊は大丈夫じゃろうか。

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