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経験不足(アトル視点)

「魔法は無限に使えるわけじゃないんですよ」

「使えなくなるの待つってか」


 気が遠くなるなあ


 ゲンナリ顔の俺をみてクロが笑う。


「大丈夫すぐ枯渇しますよ」

「なんで、そんなことわかるんだ」


「今、全方向、耐衝撃魔法に加えて防魔も持続させて使ってますから立ってるだけで消耗していってます」


 ああ、それで俺の剣に持ち替えたのか。倒すのが目的ではなくただの牽制。防魔の魔法を使わせるための。


「防魔は特に消耗がはげしいらしいんですよね」

 とクロが悪い顔で笑う。


「あの二人はいきなりⅠ群になったからか、要領が悪い」


 あんな全方向完全防御は消耗がはげしいため、ベテランならまずやらない。

 そんな状況になった時点で逃げの一手を打つらしい。



「頭が悪いんだろ」


 最初の消滅魔法にしても不意打ちでもしないとクロに当たるはずがない。

 あの状況では避けてくださいと言ってるようなものだ。

 まあ、一般人は来るとわかってても広範囲すぎて避けられないだろうが。


 俺の剣は神出鬼没のクロが持ってないと意味がないので代わりの剣を渡される。

 ポケットからとりだした剣はやはり刀だったがクロの持ってるやつより短い。


 「脇差ですみません」といわれたが何だソレ。

 はじめて手にする刀に心が躍る。



 クロが防御魔法を切れさせないように俺の剣で適当に打ち込みに行ったが、二人の狙いは相変わらず俺のままだった。


 魔法の速さが大人の投石速度くらいなので慣れると俺でも避けれる。


 距離があるほど避けやすくなっていく。

 

「へたくそー」

「どこ狙ってるんだ」

「こっちだこっち」


 無駄撃ちをさせるべく二人を挑発する。


「なめやがって!」

「くたばれクソガキが!」


 ムキになって連撃してくるので非常に助かる。


 消滅魔法は怖いが、二人が同時に使える魔法はそれぞれ二つが限界で防御の魔法を使ってる限り打てないらしい。



 クロは二人は大したことないと言った。


 遠くから見てた感じだと当たると体がはじけ飛びそうな威力があるように見えたが、火の魔法をくらったクロも風の魔法をくらった俺もまだピンピンしている。


 なるほど、とんだ見掛け倒しだ。




 景気よく魔法を放っていた二人だがだんだん元気がなくなってきた。ついに攻撃をやめ背を向けて我先にと逃げ出しはじめた。



 やった!ついに魔法が切れた!



「にがすかっ」



 クロの制止の声が上がったが、走り出した俺は止まれなかった。


 ガンッ


 攻撃が通らない。魔法は切れていなかった。


「かかった」

「死ねっ」



 二人は経験不足だが、それ以上に自分も経験不足だった。


 クロの救助の手が及ばないようにフレカの風魔法がクロの行く手の邪魔をし、ピルシカの魔法が俺を狙う



 振りかぶったピルシカの手の上で尖った岩が形成されていくのがスローモーションのようにみえた。

 

 こんな至近距離では避けれない。



 あんな岩の塊が体に突き刺さったら間違いなく死ぬ。




 くそっ


 あんなあからさまな誘いに引っかかるなんて!!



 悪あがきだがせめて頭を守ろうと腕をあげようとしたその刹那



 突然、目の前の二人の体が倒れた。


 それと同時に発射された魔法は俺を掠めてそれていった。




 ズザザザザザザザッ


 フレカとピルシカは悲鳴を上げながら物凄い勢いで地面を滑っていく。



 クロが横に現れたので何事か聞こうとしたが、クロも目を丸くしてその光景を見つめていた。



 そのまま二人は足をつられて宙を飛び、振り子運動で木の幹に叩きつけられ目を回した。


 やっと動きの止まったイニド姉弟は、足を縛られ逆さづりの状態で木にぶら下がっていた。



 おれもクロもポカンと口をあけてそれを見上げる。




「……おばあちゃんすごいですね」


 クロの絞り出すような声に、俺も唾をのみながら頷く。


「……キクなめてたわ」




 それはさっきまでキクがイノシシを捕まえると息巻いて作っていた罠だった。

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