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野イチゴ(アトル視点)

 心地よい風を感じながら三人で草むらに横になる。



 先程まで聞こえていた魔法の音も収まり、今はもう聞こえない


 今日は夕方までここで羽を伸ばす予定である。



 ひと眠りし終わったキクは少し離れた所に座って野イチゴを摘み始めた。


 その姿を横になったまま眺める。


 入れ物かわりにスカートを持ち上げて摘んでいく姿はとても愛らしい。

 これぞ女の子って感じがする。



「元気になって良かったですね」



 クロの言葉にうなずく。



 キクが部屋にこもった時はどうしようかと思った。



 あの時俺は、泣き声が聞こえてくるそのドアを開けることができずに部屋の前で立ち尽くしていた。


 結局クロに助けを求めて走ったのだった。



「ニホンが存在しない」か。



 知ったらまた泣くかな……




 キクがスカートを持ち上げ膝小僧を見せながらこちらへかけてくる。


 何かいいものでも見つけたのか満面の笑顔だ。


 クロとの約束通り、この事実は心にしまっておこう。

 わざわざこの笑顔を曇らせる必要はない。




「沢山摘んだな」


 そばに来たキクのスカートには山盛りの野イチゴが入っていた。

「頑張ったじゃろ?」と得意げに笑う。


 こんなに大量に何に使うか知らないがキクのことだからきっとまた美味しいものに変わるのだろう。


 お弁当を入れてきた籠に全部詰めたキクが振り返る。



「すごいものみつけたんじゃ!」


 目を輝かせながら、腕を引っ張ってくる。


「ああ?もーなんだよメンドクサイナー」と悪態をついて見せたが「いいからいいから」とグイグイ引っ張ってくる。


 そんなに俺に見て欲しいのか

 全く仕方ないなあ


 悦に入りながらキクについていく。



「こっちじゃ!こっちを見てみい」


 キクが頬を染めながら手招きし指をさす。


 どれどれ


 キクがこんなに嬉しそうに発見報告するものとはいったい何だろうと、ワクワクしながらキクの指さす方をのぞき込む



 そこには大量の動物のうんこがあった。




「……」




 ……俺は、どういう反応を返すのが正解だ?



「こんなに沢山!しかも、まだ新しい!」と興奮気味に体を揺すられる。



「おう」と適当に返事をしておいた。



 なんでコイツはこんなきれいな景色の中、汚いうんこを眺めてるんだ。




 永遠に野イチゴを摘んでてくれないだろうか。


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