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米寿

「おばあちゃんっておいくつですか」


 クロが手綱を握りながら隣に座るわしに聞いてくる


 今、クマリンから遠く離れた道を新しいハロタン車で走っている。


 落ち込んだわしを元気づけようと二人が旅行を計画してくれたのだ。


「最近は数えてなかったからわからんの」


「四、五十くらいですか?」

「もっとじゃもっと」

「もっとというと、六十?」

「そんなんとっくに過ぎとるわ」


 歳は覚えとらんが寝床に、記念の写真がずっと飾ってあったのは覚えておるぞ

 家族がみんな集まって真ん中に金色の服着せられた自分が写っていた


 あれにはなんと書かれておったかいの。傘寿じゃのうて……


「米……米寿祝いじゃ」


 みんな元気にしとるかの。

 ああ、いかん! また日本が恋しくなってきたぞ




「米寿祝い?」


 さすがのクロ助も米寿の意味は知らなかったらしい。


「米って書くんじゃが、「米」って漢字は八十八って書くじゃろ?じゃから米寿


「……ってことは。八十八歳以上?」


「八十八!?」


 隣で聞いていたあー坊が飛びあがった。


「ばあちゃんの範疇肥えてるだろ。バケモンじゃねえか!! あほか」

「そうじゃよ。ばあちゃんはバケモンなんじゃよ。優しゅうせんと化けてでるからの」

「言ってろよ」


 幽霊の真似をしながら、あきれ顔のあー坊に絡んでやる。

 ヒュ~ドロドロドロ……


 この国は寿命が短く六十でも大往生と言われているらしい。


「いやー、見えないですよ」


 クロ助も驚きの声を上げていた。


「そうかの」


「ええ」とクロが頷く


「もっとずっと若く見えますよ」

「そうじゃろそうじゃろ、よく言われるんじゃよ」

「そうでしょうねえ」


 クロが持ち上げて来るのでわしも調子に乗ってくる。


「おばあちゃんの若さの秘訣は?」


 ふむ、若さの秘訣か。


「よく食べ、よく寝て、よく笑うことじゃな!」


 月並みじゃが、これに勝るものはないの。


「なるほど」


 参考にしますと、クロは仰々しく頷いてみせた。



「本当十二歳くらいにしかみえませんよ」


 上がってた温度が一気に氷点下まで下がった。


「そりゃ言いすぎじゃ。もっと精進せい」


 せっかくいい気分に浸っておったのに台無しじゃ。


「精進します」


 そういって、おかしそうに笑いだす。


「何笑っておるんじゃ?」




「いえいえ」と笑い涙を拭きながらクロが楽し気に応える。


「敵うわけないなあって」


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