内海と外海(アトル視点)
その紙には手書きで紙いっぱいに絵が描いてあり、あちこちに文字が書いてある。
「なんだこれは?」
理解できず、クロに尋ねる。クロは観念したのか俺から取り上げたりはせずその紙を好きに見させてくれていた。
「これは、世界地図です」
それって、キクが欲しがってたやつじゃないか。
まさか自分の家にあったなんて。
「くれぐれも、おばあちゃんには見せないように」
「なんで?」
「よく見ればわかりますよ」
そんなこと言われても、世界地図なんて初めて見るし、おかしいところがあったとしても気付けないぞ?
まず自分の知っているところから探す。
「ヒダトイン帝国ちっちゃ」
ここらでは一番の大国って言われてるのにこんなに小さいのか。
「まあ世界地図ですからね。」
真ん中に大海がありそれを囲むように大陸が連なっている。
真ん中の海に【内海】、大陸の外側の海に【外海】と書いてあった。
ほとんどの国は内海沿いに集中している。
外海は別名「死の海」と呼ばれており、凶悪なモンスターがうじゃうじゃいて近寄ることすら出来ないとの話はきいたことある。
外海につながっている川も同様だ。
外海からのモンスターが上がってきて危険なのでその周辺に国はない
外海にはろくに近づくことも出来なければその先に何があるのかも知られていない。
謎に包まれた未知の世界だ。
「滝になって落ちている」とか「魔界が広がっていてそこからモンスターが渡ってきている」とかいろいろ憶測を呼んでいる。
「おかしいだろこの地図」
「なんで外海にある島まで書かれているんだ」
前人未踏の地なはずだ。
俺が聞くと「ああ、そっかそうですよね」という反応を返される。どうやらクロの求めた答えでは無かったようだ。
「本当に誰も足を踏み入れたことはないなら書けないでしょうね」
つまり、すでに人が足を踏み入れているってことか。
この地図は空から眺めてきたのかと聞きたくなるほど、精巧に書かれていた。
驚くべきことに外海にある島にも国の名前が記されている。
凶悪なモンスターだらけと思われるが、こんな場所に人が存在しているだけで驚きなのに国まであるのか。
「ここには特殊な人類が住んでいますよ」
「行ったことあるのか!?」
「はい」
驚く俺に余裕の笑顔で頷く。まえのイミダゾールといいどれだけ行動範囲がひろいんだコイツは。
まさか外海にまで足をのばしているとは。
「……なんでも有りだな」
「チートってやつですねえ」
「チート?」
ってなんだと聞いてみたが「いえ、説明出来ないので何でもないです」と返された。
世界地図を見るのはなかなか面白かった。疑問があればクロが丁寧に教えてくれる。夢中になって眺めていると、あることに気が付いた。
ニホンがない。
「おい……ニホンはどこにあるんだ?」
記入漏れか?
「ありませんよ」
「は?」
「日本なんて国は存在しません」




