日本人
ふっと顔に温かい何かが触れて、目を覚ます。
いつの間にやら眠っていたようだ。
泣きすぎて、頭が痛い。
「すみません、起こしてしまいましたか」
クロがベッドに腰かけ、顔に手をのばしていた。
あー坊が横に立ち、心配そうな顔でこちらを見ている。
「大丈夫ですか?ひどい顔してますよ」
「今、回復魔法をかけてはみたんですけど」
「病気には効かないので。どこか気分が優れないですか?」
熱がないか額に手を当てられる
熱なんてあるわけない。ただ望郷の念にかられておるだけじゃ。
「大丈夫じゃ」といった声がびっくりするくらいしわがれていた。
「心配かけたの、今ご飯の準備をするからの」
体を起こそうとするが、押し戻された
「今日は休んでください。疲れがでたんでしょう」
いつもなら、それでも大丈夫といって起きるのだが今日はそんな元気がなかった。
今は何も考えたくなかった。
ぼんやりとクロの顔をみたところで、ある考えがあたまに閃いた。
「クロ助!」
席を外そうとするクロの服を掴んで止める。
「はい」
クロ助は少し驚きながらも再び腰をおろした。
「あの味噌や醤油じゃが、もしかして、日本からの輸入品か?」
もしそうなら日本に帰る方法がわかる
日本に帰れるぞ!!
そういえば、会った時からずっとクロに聞きたいことがあったんじゃった。
お互いが暗黙の了解のようにそう認識しているため、あえて確認はしていなかったが、
クロの黒目黒髪という外見からはじまり、
あー坊が苦戦していた箸も難なく使いこなし、言わずとも「頂きます」と「ご馳走様」と手を合わせる
そしてわしが味噌と醤油を欲していることまでも予想して見せた。
もしかして、というかもう疑う余地がない。
間違いなくクロ助は……
おまいさん、日本人じゃよな?




