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番外編 キクと刀 2

「一体何の音だ?」


 音の出どころであるキクのところに行ってみる。


「おお、ええ所にきた」


 助けてくれと手招きされたので駆け付けると、なにか、黒くて異常に長い奇妙な物体を手にしていた。


「どうにも固くての。刀が仕舞えんようになってしもうた」


 それは刃の部分と鞘が中途半端につながった状態のまま動かなくなってしまった剣だった。

 よくみると見ると刃と鞘の方向が反対に入っていた。


「ばあちゃん!違う!それ反対だ!」


 剣のカーブと鞘のカーブの形を見たらすぐわかるだろうに、どうしてこれに気が付かない?


 キクは途中で引っかかってしまった剣を、無理やり奥まで入れようとして、鞘の先端を何度も壁に打ち付けていたのだ。無理に押し込んだせいで鞘の入口が裂けている。

 自分がやったわけではないが俺は真っ青になった。


 とにかく、急いで抜こうとしてみたが抜けない。

 思い切り力を込めてみたが抜けない。

 キクも同様だ。


 仕方ないのでキクが鞘を持ち、俺が柄を持ってせーのっで引っ張っる。

 テーブルに足をひっかけ全力で踏ん張ってみているがビクともしない。


 どんだけ強引に突っ込んだんだよ。


 何度かチャレンジしてみたが結果は同じだった。

 どうするんだよコレ。


 剣から手を離したキクが台所の奥に行ったと思ったら、油を持ってもどってきた。


 ……まさかと思うが


「待て待て。それどうする気だ?」

「油を少し垂らしてみたらどうかと思っての」


 まるで名案が思い付いたかようにキクが笑う。この笑顔が可愛いから困る。


「いや、それはやめろ」

「滑りがよくなるぞ?」


 可愛らしく小首をかしげる。


「いいからやめろ」


 もうすでに鞘の入口が割れている状態なのだ、これ以上ひどい状態にしない方がいい。


 なんとかキクの凶行を抑えていると、タイミング良くだか悪くだか、クロが入ってきた。


「すみません、僕の刀がみつからないんですが知りませ……」


 こちらの状況を見て動きがとまる。


 やっぱり認識外だったか。まあ、そうだよな。自分の剣を料理に貸すわけがない。


「すまん、抜けんようになってしもうたわ」

 申し訳なさそうに、剣をクロに見せる。


 無様な姿になった自分の剣をみて、クロは絶句していた。


 誤解がないよう、これだけは伝えておこう。

「俺、関係ないからな」


 刀を黙って受け取ったクロは、引っかかって取れなくなった剣をざっと眺めた後、鞘と柄を握る。

 二人でどう頑張ってもビクともしなかった剣が、クロがちょっと力をいれるとすぐに抜けた。

 そして、正しく入れなおす。もちろんちゃんと奥まで収まった。


 しかし鞘の入口部分が割れているため、ストッパーが効かず少し傾けるだけで剣が鞘から滑りおちる。

 それを無言で見つめてから、クロはいい笑顔でキクを振り返った。


「行きましょうか。老人ホーム」


 ひいいい

 キクが震え上がった。


年末はいろいろ忙しくて更新が滞るかもしれません。ごめんなさい。

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