開かずの扉の先
そんな皆のアイドルクロ助は、たまに仕事にでかける。
なんの前触れもなく、ふと立ち上がり「仕事に行ってきます」と出かけていく。
そうして数日は帰ってこない。
一体何の仕事かと聞いてみても「さあ?今回は何でしょうね」と笑うだけだ。
毎回行ってみてのお楽しみらしい。
Ⅰ群としてのお仕事だとしたら、これで何千万と稼いでいることになる。
ただし、即死の危険のある仕事らしいが。
もう二度と戻らない可能性も大いにある。
なのに対象がクロ助だと、あまり死のイメージと結びつかないから不思議だ
あの飄々とした雰囲気がそう思わせるのだろう。
クロ助よりむしろ自分たちの方が心配であった。
もし、何かの拍子に結界が切れたらと思うと怖い。
夜物音がするたびに、隣の部屋で寝ているはずのあー坊が心配になり無事な姿を確認しに行く。
この方法だといざとなった時、あー坊を守れない。
食われた後に気が付いても遅いのだ。
いろいろ考えた結果、クロがいない間はあー坊と一緒に寝ることに決めた。
早速あー坊のベッドに入る。
わしの横で、恐怖に身を固くしている小さな背中を見て、「わしがしっかりせんといけん」と気を引き締めた。
安心させてやろうと、その背中を撫でていると
こちらを振り返り潤んだ目でしがみついてきた。やはりあー坊も怖かったのだと知る。
子供のこういう仕草が純粋でかわいい。
生意気なことをいってもまだまだ子供じゃのお
ぎゅーと抱きしめてヨシヨシしてやりながら眠った。
朝、目が覚めたら、あー坊は床に転がっていた。
◆
結界といえば、あの外の結界が切れた日以来、開かずの扉の結界も切れたらしくて、今では問題なく出入り出来るようになっていた。
開かずの扉の先にあったのはただの書斎だった。
おそらく前の持ち主が置いていったものなのだろう。
ただ、三つ目オオカミが暴れまわったようで、ひどく荒らされていた。
まあ以前の状態を知らないため、元から散らかっていたのかもしれないが。
散乱した書類や本棚、絨毯等片づけるのが大変そうで、しばらくは開かずの扉のままにしておくことにした。




