場違い
手に走った衝撃が体の傷に響く。
「っつ!!」
何とか攻撃を受け止めることができた。
見切っていたわけではない。ただ既視感があったのだ
そしてその通りに攻撃が入った。
それだけだ。
止めれた奇跡に汗が噴き出し、心臓がバクバク言い出す。
茶色は攻撃を防がれた事ですぐに身を引き距離をとった。
今の踏み込みで一体何人やられた?
すでに皆、満身創痍だ。
領主側はすでに兵士は倒されてしまったようで、阿鼻叫喚になっていた。
もはや戦闘どころではなくコデインを壁の端側にして団子状態だ。
外側からはがされていくため、より内側に入ろうと皆必死である。
俺も今のはなんとか防いだが、次来たらきっと止められない。
このまま全滅する。
なんだコイツ等の尋常じゃない強さは。
くそっ! 出口は目前だというのに!
「いやあ、よく止めましたね」
死の恐怖と絶望に包まれる中、場違いな明るい声が響いた。
目を向けると、そこにクロの姿があった。
突然の出現とその全身すすだらけの姿に驚く。
言葉の出ない俺の前まで来て腕に抱いた黒い包を渡される。
それはクロのマントに大事に包まれたキクだった。
床に膝をつきしっかりと受け止め状態をみる。赤みもひき呼吸も正常に戻っていた。
「なんとか、症状は落ち着きました」
いろいろ気持ちが追いつかない。
キクが助かって安堵する気持ちはあるのだが、
今、それどころじゃない。
クロのうしろで茶髪がユラリと動く姿が見えた。
「あぶない!」とか「避けろ!」とか叫ぶ間もなく、火花が散る。
一体何が起きたかわからなかったが、茶髪が体勢を崩しながら飛退いた。装束の一部がハラリと切れ落ちる。
クロはゆっくりと立ち上がり、茶髪を見る。いつの間にか手には剣が握られていた。
その様子をみて手強いと判断したのか、領主の集団を襲っていた金髪もクロへと標的を変えた。
茶髪を見るクロの死角へと位置取る。よく訓練されてる。
「ここは任せて、行ってください」
クロの代わりに背後の金髪を見張っていたのだが、先に行くよう催促してくる。
大丈夫なのか?
コイツ等相当な強さだぞ?
二人同時はさすがのクロでも……
などと思っているうちに金髪が動いた。
俺は結局「あっ」と言うことしか出来なかった。
風圧と金属のかちあう音だけ認識できた。間髪開けず茶髪も踏み込んできたが、クロはすでに計算済の様子で軽やかに対処していた。
俺は全く動きについていけず、目の前の攻防戦を呆然と見つめるばかりだ。
途中クロの攻撃で体制を崩した茶髪の背中が迫ってきて焦る。
キクを抱きしめ庇う体制になったが衝撃は一向に来なかった。顔を上げると二人を蹴散らしたと思われるクロが立っていた。
「巻き添えになっても責任持ちませんよ」
そう言い残し、クロは再び魔法石付き人間へと向かって行った。
このクロの一言で、先に行こうと決めた。俺がここにいてもただの足手まといだ。
「今のうちに脱出するぞ!!」




