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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
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 盗賊避けのためなのだろうが、なんて恐ろしい。


 先程と同じようにランタンを手に持ち戦々恐々としながら先頭を歩こうとすると引き止められた。さっき大男と一緒に右へ視察に行った男だ。


「お前はうしろを歩け」


 なんだいきなり。


「いいからうしろだ。案内人が死んだら困るんだよ」


 そう言って俺の前を歩く。それを合図のように奴隷達に周囲を囲まれてしまった。


「敵はどこにいるかわからないからな」


 キッと皇子側の人間たちを睨む。

 そういえばコイツ、コデインに切りかかっていったやつだ。


 頼むからこんなところで喧嘩するなよ。


 一触即発かと思ったが、領主側から意外な提案があった。


「私が前を歩こう」


 は?


 さっきの命の恩人の兵士だ。おそらく「離れ」の警備に当たっていた奴だろう


 いやいや、お前は領主守るのが仕事だろ。


 鎧を装備して一番守りが堅い自分がという申し出だった。

 

 領主の方は他三名ほど兵士がつき、十数人の使用人に囲まれているため特に気にしていないようだ



 五個目の分かれ道に差し掛かった時、突然、領主が叫んだ。


「もしかして、像の向きか!」


 やっと気が付いたか鈍いだろ。

「像の向き?」


「離れに置いてある像の見ている向きになっているんだ!」

「つまり、今回は?」

「右だ」


 自信満々でコデインが答える。

 よし、答えの出し方に気が付いた以上これで俺のお役御免だ。


「お前の勘とやらは?」


 ……とは、ならないか。


 ここはひとつ外してみせて、俺の強運が終わったようにみせよう。

 こんなに勘があたるのはさすがに不自然だ。


「……ひ…ひだり……」


「……よし、左に行くぞ」

 あまりに簡単に信じるものだから焦る。

 正解を出したはずのコデインが信じてもらえず情けない顔をした。


「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」


 ハズレ判定が死を伴うものだということを失念していた。

 俺が引き止めると、大男は振り返りニヤリとした。


「……本当は?」

「……みぎ」


 やっべーやっべーやっべー

 冷や汗が噴き出る。墓穴を掘ってしまった。


 そもそも、この抜け道を知っていた時点ですでに怪しさMAXだ。


 どうにか誤魔化す言い訳を!言い訳を考えないと!


「……実は俺盗賊でさ、下調べしてあったんだ」


「なるほど通りで。薄汚いコソ泥め」


 コデインが汚いものを見るようにペッと唾を吐いた。


 俺この領主好きだわーー。超好きだわーーー。


 二人だけで逃避行したい。


 他の奴等は黙ったままで反応なしだ。

 誤魔化せたのか、誤魔化せてないのか、どっちなんだ!




 通路を抜けると、広い空間に出た。狭く無機質な通路とは違い、そこだけ城内のような造りになっていた。


 壁には自分たちが入ってきた扉を含め6個の扉があった。

 それぞれの立派な彫刻がされた扉だ。扉だけでなく周りにも装飾がされていた。


 「さあて、出口に通じる扉はどれだ?」

 「おそらく、この豪華な飾りの中にヒントがあるんだろうな」


 ごちゃごちゃと細かい細工がされた中の一体どれがヒントにあたるのか。

 それを特定するだけでも骨が折れそうだ。


 だが、恐ろしいことに俺は見た瞬間に答えがわかった。


 何をみてそう思ったのかはわからないが、この扉を行けば外に出られると直感した。

 もう一つの扉はたぶん城の方につながっているとわかる。

 あとの扉は、何にもわからなかった。


「ボウズはどれだと思う?」


 他の奴は全くわからないらしい。無意識に刷り込まれた何かがあるのだろう。

 さて、どう返すのが正解だろうか


 悩む俺の視界の端、ユラリと影が動いた


「あれ?」


 俺が声をあげると「どうした?」と他の奴らも俺の視線を追う。


「今何かいたような……」


 言い終わるか終わらないかのタイミングで血しぶきがあがった。


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