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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
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快感

 我慢したのではなく、あまりの痛みに声が出なかった。


 手はまだつながっている。

 見ると、中指の爪に釘が刺し込まれていた。


 血も噴出さないし見た目の派手さはないが、敏感な指先なため悶絶するほどに痛い。


 コイツは、どうすれば生かしたまま最大限の苦痛を与えることが出来るかよく知っていた。


「私は女の裸といったものには、全く興味が湧かなくてね」


 苦痛で顔を歪める俺を眺めて鬼畜野郎が微笑む。


 次の指へと手を伸ばされ、俺は恐怖で取り乱した。

 何とか力尽くでベルトから手を抜こうと暴れたがビクリともしなかった。

 悪あがきする俺を見て嬉しそうに、親指の爪の間に釘を押し込んでいく。

 喉が仰け反り腹の底からの叫び声が出た。


「その代わりに、人の恐怖や苦痛に歪む顔を見ると堪らなく興奮する」


 本人が言うように悶絶する俺を見て心底楽しそうな顔をしている。


 まだ2本目だ。

 これなら、さっさと腕ごと斬り落としてくれた方が楽な気がする


 人差し指に釘の先が振れ息を止める。

 すぐに来るはずの痛みが来なくて、止めていた息が続かなくなり細く息をする。


「そんなに、こわいか?」


 痛みのかわりに馬鹿みたいな質問が飛んで来る。


 死ねよ!!


 とやけくそ気味に叫ぼうとした瞬間差し込まれた。

「はっ……うあ……ああああっ」

 息を吸うのか吐くのか止めるのかパニックに陥いり軽い過呼吸がおこる。


 コイツ間違いなく狙ってやっている。


 コイツのいやらしい溜めが非常に厄介だった。

 従者の拷問は命令されるがまま単調に行われていたからか、心構えがしやすかった。


 がこの鬼畜は俺の呼吸のタイミングを読んで仕掛けてくる。

 来るかと思って構えていると来ない。

 気を抜いたところを狙ってくる。しかしずっと構えたままでいると神経がすり減る。


 右手が終わったところで「どうする?もうやめてもいいぞ」と悪魔のささやきがあった。


 やめるイコールキクを見捨てるってことだ。それは絶対「NO」だ!


 皇子はその答えを待ってましたとばかりに拷問を継続した。

 終了した時には、続く激痛に意識が朦朧としていた。

 ちゃんとNOと言い続けれていたのかもよくわからない。最後の方はもうやめてくれとわめいていた気がするが。


 ぐったりした俺をおいて、悪趣味野郎はキクの方へと目をやる。

「それにしても、こんなに意識が混濁してたらつまらないな」

 もっと俺が苦しむ姿を見て絶望に顔を歪めて欲しいと相変わらずのキクの様子を見ながらため息をはく。


「舌切って死んだら最高なんだが」


 何が最高だ。つくづく正気でなくて良かったと思う。

 キクならやりかねない。

 今、目の前でそんなことされたら俺は間違いなく発狂する。


 キクがそこにいるから俺は細い糸一本で、正気を保っているのだから。



 なんとか息を整えていると手に瓶を持った従者が前を通った。

 朦朧とする意識の中、手の中のものを見る。

 瓶の中、不気味な虫が蠢いていた。


 それをキクの傍にいる皇子へと手渡すのを見てヒヤリとする。

「おい……何を?」


「ん、これか?」

 サソリのような形態の虫が中に入っていた。

「心配しなくても、コイツの毒は死に至るようなものじゃない」



「ほら、あそこにいる女達を見ろとても幸せそうだろう?」

 そう言って皇子が隣の部屋を指さす。


 そこには男に跨り髪の毛を振り乱し一心不乱になって腰を振る女の姿があった。


 血の気が引いた。


「解放してくれるって!」


「ああ、解放してやろう」


「恐怖からな」

 いま、訳も分からずに怯えて可哀想だからなと笑う皇子に殺意を覚える。


「それとも他に耳から侵入して脳を食べる虫もあるが、そっちにしようか?」

 想像するだけでおぞましくて、必死で首を振る。


「大丈夫、これで彼女は最高に気持ちよくなれる」



 なにが大丈夫だ。

 ギリリと歯をくいしばり睨みつける


「イカレテル」


「よく言われるよ」



 氷の瞳が俺の罵りを受けて笑う。

 コイツと話しても何もかもがかみ合わず失意だけが残る。


「……クロ!!」

 堪らず俺は叫んだ

「クロ!助けてくれ!キクを!」


 クロはコイツがいる限り現れない。

 そんなことはわかっていたが俺が頼れるのはクロしかいなかった。


 クロが手を震わせるのを見た。

 思いつめるクロの姿も。

 会うことのないよう手を引くと言っていたのだ。皇子の話を聞く事も嫌だと。


 クロもコイツの餌食になったことがあるのかもしれない。



「来てくれるといいな」


 無様に助けをよぶ俺をみて、鬼畜野郎は薄くわらう。


 瓶のふたをあけキクの体へと押し付ける。機嫌の悪そうな毒虫がキクの肌に近付くのが見えた。


 助けは現れない。


 虫の毒針がキクの肌に刺さるのを俺は絶望的な思いでみつめた。

拷問について書くとどうも痛々しくて辛くなります。

なるべく端折るようぼやかすように書いていたら、あまりに緊迫感がないのでちょっと詳しく書いていくとまあ長い長い(笑)

不快な話が続いてすみません。

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