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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
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初日

 ……やばい。これは想像以上に胸糞わるい。



 突然のクロの棄権申請により一人でオークションに参加していた俺だが、あまりにも酷い内容に気分が悪くなっていた。


 今日はフタラジンででた大勢の奴隷落ちが中心だった。

 あのフタラジンの争いが、こんなとこまで影響してくるのか。俺が聞くには苦い話だった。


 この争いで住処を失った人、負傷した人、助けを求めに来た人そういった人々を奴隷商人たちは甘い言葉で騙しては奴隷に落としていく。あまりに大人数のため他の部門のように細かく分けられておらず老若男女ごちゃまぜになっていた


 今日はとても盛り上がるとクロが言っていた。

 そんな内容で何故盛り上がるのか不思議でならなかったが、確かに盛り上がっていた。


 親子や恋人、仲間等がまとめて出品されるのだ。


 何が起こるかというと、引き裂かれまいと奴隷達の抵抗がおこる。

 その姿を見て客は楽しむのだ。


 他の部門では、すでに引き離された奴隷が多いためあまりこういったことは無いらしい。


 奴隷が泣き叫べば泣き叫ぶほど、暴れれば暴れるほどオークションは盛り上がった。



「お願いします。何でもします。一緒に行かせてください」



 今ステージでは母親らしき女性が子供を抱きしめ取られまいと必死に懇願していた。


「この子は私の命なんです!生き甲斐なんです!」


 まだ状況が理解できない小さな子供も母親の姿に尋常じゃない事態と悟ったのか必死にしがみついている


「お願いとらないで!」


 母親のすすり泣く声を聞くだけで胸が痛んだ。

 だが、痛んでるのは俺だけのようで取り押さえられた母と子は力尽くで引き離されていく。

 こうして二人はそれぞれの落札者の元へと連れて行かれるのだ。


「いやあああああ」


 涙で頬をぬらしながら女の悲痛の叫びが会場に響き渡った。


 会場は大爆笑だ。


 俺は耐えれなくなって、会場からでた。


 一体コレのどこが楽しいんだ!



 奴隷のクセに無駄に抵抗する姿が醜くて最高ならしい


 大笑いするお前らにだって母親がいるだろうが!なんで笑えるんだ!

「奴隷のクセに」と言うが、彼女達も同じ人間なんだぞ。抵抗するに決まっているだろう!



 廊下に出れば、そこはもう野外だ。外の空気を吸って悪い気分を覚ます。


 廊下ではゴージャスなドレスを着た貴婦人達が集まり立ち話に花をさかせていた。

 どこの層にいっても女の噂好きはかわらない。


「ほら、ごらんなさい。また皇子が買い取ってらっしゃるわ」

 女の一人が階下を覗いて、声を上げる。

 その声を聞いた周りの奴等全員、階下をのぞき込んだ。俺も興味を引かれて覗く。


 この階下にみえる庭園で奴隷の受け渡しが行われているようだ。さっきの母親を落札した男に、何やら正装した男が話しかけていた。


「皇子は親子や恋人といった深い仲を引き裂かれるのを見るのがお辛いそうよ」

「でもオークションに水を差しても悪いといって、よくああやって後からこっそり買い取っていらっしゃるようなの」


「まあ……皇子はおやさしい」


 女の解説を聞きロス皇子にうっとりとなる貴婦人達。



 俺はロス皇子の意外な一面に目を見張った。


 ロス皇子はもしかして今日そのために来たのか?

 憐れな奴隷を拾い上げるために。


 この胸糞悪いオークションを止めるのは無理だが、少人数でも自分で出来る範囲で救おうとしているのか。


 クロがあまりにもロス皇子を酷く言うから、俺も悪人のイメージが先行していたが


 アイツいい奴じゃん!


 俺はロス皇子のことを誤解していた。

 やはり、何事も自分の眼でみることは大切だ。




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