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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
176/219

牢屋

「あいたたたた」


いきなり頬をつねられて目を覚ます。


「やっと、起きたわね」


女の子がこちらを覗き込んでいた。

頭痛のする頭を持ち上げて辺りを見渡す


わしゃどうなったんじゃ?


鉄格子が目に入りたまげる。

なんと、牢屋に入れられていた。


なんでじゃ!?


鉄格子に駆け寄ると、向こう側に監視員らしき人が座っていた。


「一体これはどういうことじゃ?」

お髭もじゃもじゃの監視員はチラリとこちらに目を向ける

「わしゃ何も悪いことしとらんぞ!」と必死で訴えるわしを見て、鬱陶しそうに再び目を背けた。


「きっと何か、誤解があったんじゃ!話せばわかる」

なんとか無実を証明する場を設けてもらおうと言ってみたが聞く耳を持ってくれそうにない


「話なんて聞くわけないじゃない」

鼻で笑う声が聞こえて振り返ると、可愛らしい桃色の髪の女の子が同じ牢屋内に座っていた。

「おまいさんも逮捕されてしもうたんか?」

「逮捕?」


この国の法律をよく知らない。

知らない内に何か犯罪を犯してしまったのかもしれない


「なんでじゃ……何がいけんかったんじゃ」

なんとか思い当たることはなかったか記憶をたどる。

一つ思い当たることがあった。

「もしかして、あれか!」


つい数日前、牧場の柵にもたれかかっていたら、うっかり柵の留め金を外してしまって中の羊が出てしまったのだ。

なんとか押し戻そうとしてはみたが、あれよあれよという間に群れと成した羊たちはわしを押し流していった。成す術もなく羊の流れに飲み込まれたわしはそのまま護衛さんが助けてくれるまで翻弄され続けた。

見張りの犬がすぐに飛び出していきその声を聞いた飼い主も慌てて駆けだして羊の群れを追いかけて行った。

泥だらけになったわしをみた護衛さんは有無を言わさずわしを家へと回収していった

「あれから放置したままじゃったが、やはり謝りに行くべきだったか」


謝りに行こうとしたところ護衛さんに止められたのだ。

むやみやたらに謝ってはいけないと。下手に謝るとなめられると。

だいたいが留め金が甘いのが悪い、それに羊の脱走はよくある話。そのための番犬だから気にしなくていいとのことだったのだ。

今更ながらに頭を抱える。


「それは、護衛さんが正しいわ。きっと謝ってたら足元をみて吹っ掛けてきたわよ」


日本とは違い、普通こんなことで謝らないらしい。

日本では「誠意」が重んじられるが、ここら辺では単なる「弱み」としてみられて終わるとのこと。

女の子の後押しもあり、この件は不問で間違いないようだ。


では、他に何かあるじゃろうか。


「もしかして、あれか」


以前街を歩いているとたくさん並んだ木箱の上にそれぞれ赤や黄色や緑やオレンジといったカラフルな実がばらばらと無造作に置いてあった。

見たことも無い実で一体どんな味がするのか気になった。


「まさか、それ食べたの?」


女の子の驚きの声に、肩身が狭くなる。

「ほんのちょっとじゃぞ。ほんのちょっとかじっただけじゃ」

自分の出来心に必死に言い訳をしてみる。


「馬鹿ね!それ魔よけの実よ。虫とかモンスターとか悪いものを追い払うために置いてるのよ」


ものすごく辛かったでしょう?と女の子はあきれ顔だ。


「しばらく唇が腫れて大変じゃった」

「でしょうね……」


もしつまみ食いの現場を見られていても、馬鹿な奴と笑われて終わるとのこと。



「それより、あなた何か勘違いしてない?別に悪事を働いたから捕まったわけじゃないわよ」


「それも違うとなると……」


「ちょっと!きいてる?」


「それじゃあ、あれかの」


「まったく聞いてないわね」


露店に売ってある食器を見て回っている時じゃ。

ある陶器のポットを持ち上げたとき、取っ手の部分からパキッと音がした。

焦って目を向けると根元にヒビが入っていた。

青くなったわしは誰にもばれないようにそっと元に戻しておいたんじゃが……


わしがやったとバレておったか!


確かに指紋はしっかり残っておる。これは迂闊であった。

まさかそこまで調べるとは思わなかった。

相当高価なポットだったのじゃろう……


「だからあ……」

「あ、いや、それとも、あれか……?」


「……結構やってるわね」


後ろめたいことというのは、考え始めるとキリなく湧いて出る。

自分は決して清廉潔白ではない。

潔白どころかボロだらけの人生じゃ。


これは素直に謝るしかない。

「わしが悪かった。この通りじゃ!」

鉄格子の向こうの男に床に手をついて許しを請うた。


「賠償金でも示談金でもなんでも払う、謝罪もちゃんとしよう。だから、ここから出してくれんか」

必死で頭を下げて見るが、男はまったく無関心であった。


「だから、無駄だって。私たちはこれから奴隷として売られるんだから」

女の子の言葉に驚く。

「それは刑務所で働かされるってことじゃよな?」

「何よケイムショって」


日本では犯罪者は刑務所で働かされるのだが、どうやらこの国では刑務所は存在しないらしい。

代わりに奴隷として売られるようだ。

確かにそうすれば金も手に入り一石二鳥だ。

男の様子を見る限り話し合いなどする気はないらしい。

それもそうじゃ。揉めるよりさっさと売り払った方が楽じゃろうて

その事実に真っ青になる。


あまりのショックで牢屋の隅で座り込んでいると


「ねえ、私ここから脱走しようと思うんだけど協力してくれない?」

「脱走?」


それは、まずいのではないか?脱獄囚は射殺されたりするかもしれんぞ?


「じゃあ、このまま大人しく奴隷になるつもり?」

奴隷になったら一生逃げ出せないわよ!と恐ろしいことを言ってくる。


「どうにか話を……」

「話なんて聞くわけないわ」


そうかもしれないが……


「もういいから!とにかく協力しなさい!」

躊躇するわしをみた女の子は腰に手を当て尊大に言い放ってきた。

その態度、生地のしっかりした恰好を見る限り、ちょっとええ所のお嬢さんなのかもしれない。


わしは女の子に押し切られ脱走に協力することとなった。


いろいろお待たせして申し訳ないです。

夏休みは人手が足りなくなるので仕事が忙しくなり、平日子供を相手にしてあげられない分休日にお出かけしたりと家族サービスに勤しんでおり中々執筆が進まない状態です。迷惑かけて申し訳ないです。

読者が多い夏休みですし、本当はガンガン更新したいんですが上手くいかないものです(;´▽`A``

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