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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
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復讐

 帝国南部にある街「フタラジン」そこに、ここ一帯を治めている城がある。


 俺は麻袋を担いで裏口近くの物陰に隠れる。裏口と言ってもしっかり門番は立っている。

 メキシ=レチンを殺すにはなんとかしてあの城の中に入る必要があった。


 侵入するための策を考える。

 毎朝必ず食料の仕入れをしているはずだ。おれは静かにそれを待った。

 今日は城で宴があるようで、かなりの量の物資の搬入があった。


 仕入れの馬車が入っていったのを見届けた後、俺は裏口へと向かった

 まっすぐ門番の前に走っていき「くそっ間に合わなかったか」と肩で息をする。

「おお、どうした坊主」

「オヤジの忘れ物を届けに来たんだ!もう中入っちまったよな」


 俺がそう言うと「ああ、さっきの」と勝手に勘違いしてくれる。


「俺が届けておいてやろう」

「あっ馬鹿やめろ」


 門番が麻袋を取り上げようとしたので慌ててその手を払う。門番の眉が寄った。


「実は……さっき袋に穴あけちまって、手で押さえて隠しているんだ」

 ばつが悪そうに顔を背けてみせる。


「だ、誰にも言うなよ!」


 門番は大笑いしながら通してくれた。

 フラフラキョロキョロ歩いていると、厨房はそっちじゃないあっちだと教えてくれる。


「わかってるよ!ちょっとこっちが気になっただけだし!」

 親切な門番はぎゃはははと笑いながら見送ってくれた。


 ちょろい。


 城の中にはいると馬鹿みたいに装飾品が多く隠れる場所には困らなかった。

 私腹を肥やしている証拠だ。


 隠れる場所がなくても少し良さげな服を着て堂々と歩いていれば意外と怪しまれない。

 全財産叩いてきちんと見える服を買ったかいがあった。

 特に今日は勝利の宴があるらしいから、貴族がたくさん来ている。

 余裕だ。


「なんだお前は」


 油断している所を声をかけられ、心臓が飛び跳ねた。

 慌てて振り返ると一般兵のようだ。


「お前、俺のこと知らないのか?名を名乗れ!」と偉そうに言うと相手は怯んだ。

「今度なめたマネしてみろ父上に言いつけてやる」

 ふんっと鼻を鳴らして不機嫌そうに立ち去ったら、そのまま追いかけて来ることはなかった。


 俺、案外こういうの得意なのかもしれない。


 城の体制というのは、どこもたいして変わらないな。

 勝手がわかるというのは中々に便利だ。


 メキシ=レチンの私室を特定することは難しかったので大広間へ向かう。


 メキシ=レチンが派遣されてきた帝都へ戻る前に、この戦いの功績を讃えるための場が必ず設けられるはずだ。

 おそらくそれが今日の宴なのだろう。


 壇上にある装飾品の中に身を隠した。

 一見したら人が入れそうには見えないが中は案外スカスカなのだ。なぜ知っているのかというとやはり昔家に似たようなものがあって隠れたことがあるからだったりする。

 大人では絶対入れない大きさだが。


 こうして俺は時を待った。



 予想通り大広間に続々と人が集まってきた。まず貴族達がばらばらと集まる。そのあと兵が列をなして入って来て整列する。その後を部隊長と思われる奴等が自由な歩みで入って来て壇上近くに並ぶ。


 メキシ=レチンはどいつだ?隙間から様子をうかがうが、なにせ視界が狭い。

 一定の方向しか見えず探すことが出来ない。


 その後も続々とお偉いさんが集まり最後に領主と思われる人物が壇上中央に座った。


 おちつけ。大丈夫だ。

 メキシ=レチンはこの戦いの一番の功労者だ。

 となると必ず壇上へと呼ばれ領主から褒美があるはずだ。

 そこを斬ればソイツに間違いない。



 隊長クラスが集まる中、そんなことをしたらどうなるか想像するのは容易かった。

 だが今更退くことは出来ない。退く気もない。


 殺した後の事は考えてはいない。

 考えても無駄なのだ

 逃げ切れるほどこの世の中甘くはない


 メキシ=レチンを殺すことだけ出来ればいい。あとの事はどうでもいい


 チャンスは一度きりだ。


「次」はもうない。


 俺は剣を握りしめた。

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