ニフェカラント
「まったく頭にくるなあ」
憤然としながら来た道を戻る。
今日はこのまま狩が出来ないままおわるだろう。
慣れない土地で道がわからず、途中で出会った猫背の男に山の山頂までの道を聞いたのだが行けども行けども山頂にはつけなかった。
山道は蛇行しているものなので、おかしいと思いつつも他に通る人もいないため猫背の言葉を信じるしかなかった。嘘だと気が付いたのは自分達の進む道が山の麓を抜け遠ざかっていくのを見てからだ。
「あの男、次見つけたらぶっ飛ばしてやるんだから!」
ベラの言葉に大きく頷きながらがけ下の道を歩いていると、前方に人が倒れていた。
「た、助けて」
頭から血を流した男が這いつくばりながらこちらに助けを求めてきた。
「ちょっと!大丈夫!?」
「一体何があったんだ!?」
すぐに駆け寄り助け起こす。
こいつはたしかチーム「ニフェカラント」の一人だ。
六人チームで狩の内容を見る限りⅡ群を狙っていると思われる。
「ソタロールの奴らに突き落とされたたんだ」
崖の上を見上げる。脅しとか冗談とかですむ高さではない。殺す気だったとしか思えない高さだ。
前方を見ると、同じように地面の上で男達が数人蠢いていた。
全員ニフェカラントのメンバーだ。
ジル兄が重傷者から順に治癒魔法をかける。
こいつらは俺達と同じ特殊モンスターを求めてこの山に来たとのこと。そして途中ソタロールの妨害をうけ崖下へと落とされたらしい。
「ひどい」
「フランに訴えてやりましょう!」
そんな悪質な奴らフラン環に訴えれば登録抹消間違いなしだ。
一度抹消されたら二度とフラン活動は出来なくなる。
「無駄だ」
意気込む俺達を一言で一蹴した
「証拠も何もないからな。とぼけられて終わりだ。言い争いになったら負ける」
「そんなわけないわ!」
「あるんだよ!奴等は各方面に顔が広い。新参者の言うことなんて誰も聞いちゃくれねえよ。それを承知でやってるんだ」
全員の治療は流石にジル兄の手に負えないため、命に別状がなくなった時点で治療を止め、歩ける者を中心に治していった。そして手分けして重傷者を町まで運ぶ。
俺も肩を貸した。身長が低くて申し訳なかったが何度も泣きながらお礼を言われた。もう駄目だと思ったらしい。
まあそうだろうな。もし俺達が通りかからなかったら全員あそこで死んでいただろうしな。
それにしてもソタロールの奴等ひどいことしやがる。
◆
「天下のニフェカラントが、見る影もないな」
「女子供に助けられるなんて情けないやつらだ」
「俺なら死んだ方がましだね」
街の入り口で頭の弱そうな男が三人、俺達を笑ってきた。
「あっ!あんた!よくも嘘を教えてくれたわね!」
よく見て見れば内一人は今日俺達に道を教えてきた猫背だ。
「覚えてねえな」
猫背の男はニマニマと笑いながらしらばっくれてきた。
「何ですってー!!」
キー!!となるベラをニフェカラントの奴らが制した
「やめろ!あいつらソタロールのメンバーだ」
あいつらが!?ただのチンピラじゃねえか
「ソタロールはフランの中で圧倒的に人数の多いマンモスチームだ。奴らはその中の下っ端だ」
馬鹿にした笑い声にムカ腹が立ったが止められたので我慢。
「奴らには関わらない方がいい。俺達のようになるぞ」
「俺達はもうⅡ群は諦める。命あってこそだ」
「気をつけろよ。俺らがいなくなれば次はおそらくお前たちの番だ」
全員を宿屋まで運び終わり、散々お礼をされた俺らは部屋を後にした。
最後にかけられたのは俺達への忠告であった。




