ちから(ベラ視点)
アムロが恋におちた。
お菊さんの前でデレデレしてかっこ悪いったらない
これは別に嫉妬してるわけじゃないんだから!
ジルとか勘違いしてるようでムカつくんだけど
ただ、なんと言うか「ただの女の子」というのが納得いかないだけなのだ。
魔法どころか戦う力を全く持っていない、家で待つことしか出来ない女の子
ただ、作ってくれるご飯はすごく美味しかった。
服は毎度洗濯されてきれいにたたんで置いてある。
洗濯だけではない、それだけでこんなにピシッとはならない
おそらくアイロンがけまでしてある。
一体この子の目的は何だろう。
こんなことをして何のメリットがあるの?
一方的な奉仕に気兼ねしてしまう。
他の皆は抵抗ないようで、すっかり甘えている。
自分のローブのほつれを発見したときは、女として譲ってはいけないような気がして修繕は自分でやるからいいと断ったのだが「丁度よかった。糸が余ったところじゃ」とさっと針と糸を取り出して近づいて来た。
「着たままの方が形がわかりやすいからジッとしとれ」
「ほらほら、動くんじゃないよ」
いつの間にか抵抗する方が失礼な流れになっている。
あれやこれやと言ってるうちに白い手が器用にローブを縫い上げてしまった。
この子はなんと言うか一枚も二枚も上手なのだ。
年下のはずなのに。
そんなことを繰り返しているうちにいつの間にやら自分も甘えるようになった。
悔しいけど敵わないと思った。
私ははじめてぶつかるだけが力じゃないのだと知った。
ぶつかっていったところで、やんわりと受け止められてしまうだろうと容易に想像がついた
私の魔法をつかえばイチコロだろう。
でもそんな恩知らずな事出来るはずがない。しようとも思わない。
……こんな力があるんだ
最弱だけど、この子が一番強い。
だってこの子に逆らえる奴なんて私たちの中にはいない。
全員お菊さんには頭が上がらない。
あのクロピド=グレルも敵わないくらいだ。
アムロが惚れる気持ちがわかる。
私もこんなお嫁さんが欲しいのだから。
◆
「俺、歩いて帰るわ」
クマリンへの帰り道、アムロはそう言って馬車を降りた。
反対したりとか理由を聞いたりとかせずジルは「わかった」とだけ言ってアムロを下ろした。
遠ざかっていくアムロの姿は哀愁が漂っていた。
もう!馬鹿ね!
「止めて」
私が言うとすぐ馬車は止まった。
ジルが笑ってこっちを見ている。
ムカつく!
とぼけた顔しているくせに。
「アムロの奴よろしくね」
「私はただ一人だと危ないと思っただけで、別に……」
「あいつ、たぶん失恋するの初めてだから」
私の言い分は聞かずにジルが言う
「なにそれ。いい気味ね」
アムロの口説き落とす手腕をみたところ、かなりのベテランだ。決して初恋などではない。
モテモテで羨ましいですこと。
「まあそう言わないで。口説いている時のアイツは本気なんだから」




