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おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです  作者: いそきのりん
大切なもの(アトル中心)
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横恋慕(アトル視点)


 しばらくして耐えられなくなったのかアム兄はキクの後ろに腕をまわすのをやめた。


「そうだキクちゃんに渡したいものがあったんだった」


 どうやら攻める手段を変えたようだ。

 アム兄は髪飾りを取り出し遠慮するキクの髪に自分の手でつけてあげている。


 プレゼント攻撃再びだ。


 それを受けるキクの顔は困惑顔だ。

 アム兄も懲りないなあ


「これは前、嫌な思いさせたおわびだから、お返しはいらないよ」


 ……なんで今?

 絶対クロを意識してるよな。


 事情を勘違いしているCCブロッカーにぴりりと緊張が走った。

 なにせⅠ群の許嫁を本人の目の前で口説いているのだ。

 皆息を飲んでクロの動きに注目する。


「いいですね。すごく似合ってますよ」


 そんなことに気が付かないクロはアム兄の髪飾りをつけたキクの姿をみて褒める。


 確かにアム兄の趣味は良い。前回の服も今回の髪飾りもキクにとても似合っていた。普通の女の子なら喜ぶこと間違いないと思うのだが、キクにはどうにも受けが良くない。


「いい歳してこんな可愛いもんつけてたらおかしいじゃろ」

「そんなことないですよ。たまには気分を変えるのもいいじゃないですか。折角頂いたんですしこんな機会でもないと着けないでしょう?」

「まあ、そうじゃのお……」


 クロに説得されキクはおとなしくつけたままアム兄を振り返りお礼を返していた。

 たぶんアム兄には横恋慕してはみたが、歯牙にもかけない許婚の余裕な態度に見えているはずだ。



「そうそう、僕も渡したいものが」


 そういって今度はクロがキクへのプレゼントを取り出した。

 手渡したのは、茶色い塊と鉋。


 なんだこれ?木の塊か?


 皆、クロの取り出した謎の物体に首を傾ける。

 キクだけが嬉しそうに目を輝かせた。


「鰹節か!!」

「そうです」


「カツオブシ?」

「その茶色い塊なに?」

「カツオっていう魚を乾燥させたものでな、この削り器で薄く削って使うんじゃ」


 皆「へえーー」と言ってはいるが、それがなに?って感じだ。


「それを食べるのか?」


「主に出汁で使うもんじゃ。料理の上にのせてそのまま食べることもあるがの」

 キクの声が弾んでいる。ウキウキだ。


「今日はうどんでも作ろうかの!」と小躍りでもしそうな勢いで台所へと入っていった。

 アム兄のプレゼントの時と打って変わってこの喜びよう。



 アム兄が恨めしい顔をして俺の方を見てきた。


 いや、俺は言ったぞ。キクはアクセサリーより魚のミイラのほうが喜ぶと。



「手伝います」と言ってキクの後にクロが続く。皆の目には仲睦まじい二人に見えてるのだろうが、俺にはわかる。



 ……クロのやつ、逃げたな





 二人が台所へ消えて行くのを見届けた後、沈黙が落ちた。

 本当なら皆憧れのⅠ群にテンションがあがるところなのに、キクの許婚という余計な肩書があるせいで反応に困っているようだ。


「おい、アトル。ちょっと来い」


 アム兄が低い声をだし俺は玄関外へ連れ出された。


「一発殴らせろ」


 嫌だよ。なんでだよ。



「許婚がいるなら最初から教えてくれたらいいだろ!?」


 ああ、そうか、そういう話になるのか


「いや、あれはただフリしてるだけなんだ」


「フリ?なんでそんなことするんだ?」

「女避けのためらしいけど」

「女避け?ならキクちゃんはいいのか?おかしいだろそれ」

「俺だってわけわかんねえけど、本当にあの二人何でもないんだ」

「なんでもない?今だってあんなに仲良く連れだって……何でもないようには見えないぞ」

「それは、クロがキクを巧いこと逃げに使っただけで……」


「ああ、もういい!わかった!もう何もいうな!お前の優しさが逆に心をえぐる!そんな気休めは要らない!!」


 アム兄に強めに言い捨てられて、口を閉じる。


 ショックだ


 信じてもらえなかった。



 まあ、俺もクロがあんなに見事にキクを盾に使っているとは思ってもみなかった。

 確かに効果抜群のようだ。


 ベラもニフェも許嫁に気を使ってかクロに対して一定の距離を保っている。



「でも、ようやく合点いったぜ。キクさんとお前は両想いなのに、どうしてくっつかないのかずっと謎だったんだ。あの許嫁がいるから、お互い身を引いていたんだな」



 ……何を言っているんだ。この男は



「それで、お前釣れない態度とってたのか。えらいぞアトル」


 やばい。

 アム兄の奴、ものすごい想像力だ。


 完全にメロドラマの主人公にされてるぞ俺。


 本当はキクもクロも特に何もないくせに許嫁のふりしてて、俺だけなんだかよくわからない状況にムカムカしているだけなんだけど。




 この日、アム兄達はうどんを食べることなくクマリンへと帰っていった。


 帰り際「アトル頑張れよ、俺はお前の味方だ」とアム兄に背中を叩かれた。



 ……なにが。



 親指を突き立て、いい笑顔を浮かべて去っていくアム兄の背中を俺は遠い目をして見送った。



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