賭け(アムロ視点)
次なる手はプレゼント攻撃だ。
「キクちゃんって何が好きなんだ?何買って行ったら喜んでくれるかな」
「キクの喜ぶもの?」
参考までに一緒に住んでいるアトルに聞いてみる。
「米とか醬油はここら辺では売ってないしな」とぶつぶつ言いながら頭を悩ませそして出た答が
「魚のミイラとか……?」
「……」
こいつは何もわかっていない。乙女心と言うものを何にもわかっていない。
いや、俺が相談する相手を間違ったんだ。
女の子は一般的に可愛いものが好きだ。
花、アクセサリー、ぬいぐるみそのあたりだ。
「そんな気をつかわんでええそにからお金がもったいないぞ?」
彼女はいつもそうやって遠慮してくるが、押せばちゃんと受け取ってくれる。
他の女のようにガッツいて来ない、この慎み深さがたまらなくいい。
プレゼント渡した日は帰りに必ずお返しをしてくる。キクちゃんの手作りお菓子だ。
すごい美味い。幸せ。
そうしてプレゼント攻撃を繰り返していたある日
「迷惑だからもう持って来るなって角が立たないようにそれとなーく伝えるように言われたぞ」とアトルに言われた。
……どこがそれとなくだ。今ストレートに胸に刺さりましたよ?
「キクの気遣いはちゃんと伝わってきただろ?」
お前、これ聞いたらキクちゃん怒るぞー
大体『迷惑』って本当に言ってたのかよ。
「要約すると『迷惑』なんだからいいだろ別に。面倒くさい」
コイツ無精すぎる
こうしてプレゼント攻撃は終わった。
ここまでの所、俺の試みはことごとく失敗に終わっている。
何をどうしてもなびかない。
何の進展のない中、二人での鎧磨きの時間だけは穏やかなものになっていっていた。
あの完敗した後もずっと続けていたのだ。
最初のうちは、共通の話題がみつからず会話が途切れて悩んだ。
そのうちに、アトルの話をすると喜んでくれるということに気が付き、アトルの話題を選んで語る。
俺の話を顔をほころばせながら熱心に耳をかたむけてくれる姿はとても良い。
少しずつだがキクちゃんとの距離は近づいてきている。
悩みどころは、依然としてキクちゃんの大部分をアトルが占めていることだ。
まあ今までの二人きりの時間を考えると仕方ないのだが、俺としてはもう少し自分の方にも向いて欲しいわけだ。
ずっとこの家でアトルの事だけを見て来たのだと思うと非常に萌える。アトルとは違う「大人の男」というものを是非この手で教えてやりたい。
ここで一つ、賭けをすることにした。
賭けの内容は簡単、明日の天気予想だ。
事の始まりは「明日は雨がふるぞ」と俺が何気なしに言うと「いやいや、明日は晴れじゃよ」とキクちゃんが否定してきたところから。
「今日は夕焼けが最後まで綺麗にみえたからの」と得意気に言ってきた。
空には雲一つなくきれいな満月がくっきりと見えている。
こいつはもしかして……。
「絶対雨。大雨」
「いやいや晴れじゃよ」
「それなら勝負しよう。負けたら丸一日勝った人の言うことを何でも聞くってことで」
「ええんか?本当にええんか?この勝負もらったようなもんじゃぞ?」
そういって彼女はフッフッフッフと嬉しそうに笑っていた。




