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Magier Krieg -マギア・クリーク-   作者: 巻刺 司
第一章
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アプリデビューは喫茶店で

 ――蓼浜市、私立朝熊しりつあさま大付属小学校


一颯いぶきちゃん。このゲームやってみてよ。絶対ハマるって」


 そういって、強引にスマホにインストールさせられたのが、マギア・クリークだった。最近流行りだしたスマホのアプリで、クラス……、というかこの街の小学生みんながやっているものだ。


 もちろんゲームが面白いっていう話もあったけれど、メールの機能、つぶやきといったいつも使う機能がまとまっているのもあるし、すれ違いや距離機能なんかでフレンド登録して、新しい友達を増やすのも人気の要因なんだと思う。

 みんなはフレンド登録している友達が何人いるとか、レベルがいくつになったとか、そんなことを毎日話すのを楽しみにずっとアプリを起動している。先生には内緒だ。


 大人たちは、私たちが授業中に通信チャンネルを開いていないか終始チェックしていて、ついこの間、流行っていたメールのアプリが大人たちにバレてしまったばかりだ。

 そのアプリのサーバーへのアクセスが制限されてしまって、学校が始まってから終わるまでの間使用禁止になってしまった。


 けど、このアプリは子供しかインストールできないようになっているらしくて、他にも絶対大人にバレないしくみ……、っていうのが組み込まれているとかでみんなの間で流行り始めた。

 伝説の子供のハッカーが作ったとか、本当に魔法で作られているとか、噂は絶えない。それから、ストアにも出回っていないしくて、誰かのをコピーさせてもらうことでしか入れられないしくみらしい。

 

 アプリは本人が触らないと、スマホの画面に出ないっていう作りこみようだ。確かにこれだと大人にはバレないのかもしれない。作ったのは本当は大人だと思うけれど……。

 

 私も入れてはみたものの、メール以外の機能は使い方がわからなくて、全然やってない。ステータスはすべて初期のままだ。ゲームの方も面白いらしいんだけど……。



蓮花れんかちゃん、今日付き合ってくれる? 私もマギ・クリ入れてもらったんだけど、何から始めたらいいか全然わかんなくって」


「やっとその気になったか~。いいよ~。最初はいろいろわかんないもんね」


「ありがと。じゃ、放課後、よろしくね!」


 授業中だというのに、先生に内緒でメールが出来るのはやっぱり便利だ。教科書に隠してスマホを操作するスリルも楽しい。でもメールの返事が来てからは、なんだか落ち着かなくって、なんだかふわふわしてた。

 先生に当てられたときは何だかわかんない答えを言っちゃって恥ずかしかった。


      ◇◇◇


 ――喫茶店にて、


 二人で喫茶店に入って、チョコバナナシフォンと紅茶を注文して待っていると……。


「一颯ちゃん、今日授業中ずっとぼーっとしてたでしょ? マギ・クリのこと考えてたの?」


「蓮花ちゃん。そうなの、なんだか急にワクワクしちゃって」


「良い良い! やる気になってるのはいいことだゾ! それじゃあ、ゲームのガイドラインに沿って初めてみようか? わかんないことがあったら何でも聞きたまえよ?」


 なんだか急に先生みたいな喋り方になった蓮花ちゃんがおかしくってつい笑ってしまった。


「じゃあ、最初からガイドお願いね!」


「うん。先ずはほんとに基本の基本ね。マギア・クリークつまりマギ・クリは敵を倒してレベルを上げていって、魔導士として自分だけの国を守るゲームなの。まあ、魔導士っていっても魔法以外に物理攻撃もできるし、名前がそうなっているだけかな」


「自分だけの……国?」


「そう、魔法でできた国を守るっていう神様になるって設定、なのかな。レベルがあがるといろんなものが作れるのよ。お城とか、かわいいお店とかも作れるし、お花を植えたり、男の子たちは城壁とか大砲とかを置いているみたいだけどね」


「それでね、まずはその国を守る神様を決めるの」


「神様?」

 

「そう、自分が一番好きな神様を決めるの」


「私の神様はね。アルテミス。月の女神様なの」


「自分が好きな神様って、なんでもいいいの?」


「そうね。男の子たちは、悪魔とかドラゴンとかを選んでるし、女の子は天使とかを選んでいることが多いかもね。なにか決まってるの?」


「天使と悪魔って、神様とは厳密には違うんじゃないのかな。って思うんだけど……」


「いーの、いーの、そのへんは適当によ。自分の信じるものっていうのが重要らしいよ。信じられるかどうかでステータスが変わるっていうしね。相性とかもあるのかもしれないけど。どの神様を選んでも、最初はそうそう変わらないらしいしね」


「そう、じゃあ私、阿修羅様がいい」


「阿修羅って、歴史でならった仏像の?」


「興福寺の阿修羅様、超カッコいいもの」


 そういって、阿修羅像のことを思い浮かべる。なんでもいいから好きな神様と言われれば阿修羅様に決まっている。


「神様はアバターにも影響するから、適当っていっても、もっと天使様とか女神様とかのほうがいいかもよ」


 そういって、見せてもらったのは蓮花ちゃんのアバターだ。ひらひらとしたかわいい服を着ているし、月の飾の着いた杖が印象的だ。月の女神をベースにしているからだろう。

 これが、阿修羅様だったらどうなるのだろうか? 仏像ベースだからなぁ。袈裟とか? なのかな。


「そうなの? でもな~。決めちゃったからね」


「まあ、好きなものがいいのかもね」


「じゃあ、阿修羅って入れて検索してみるね!」


 マギ・クリには世界のありとあらゆる信仰対象が登録してあるらしくて、阿修羅様もヒットした。


「神様は阿修羅様っと。それからどうするの?」


「そうね、アバターの調整かな~。少しはアレンジしてかわいくしないとね」


 そういわれて、自分のアバターを見てみる。みたところ自分に似た普通の女の子だし、装飾品も少ない。腕輪と首飾りくらいだ。阿修羅様は天部だからなぁ。如来クラスや菩薩クラスと違って、仏様を守るのが本来の役割だからしかたないのかも。その分バトル向きなのかもしれないけど。

 条帛じょうはく【薄手の布状の服】を着ているだけだ。


「服とか髪の色は好きにできるよ。後からでも変えられるけど。一颯ちゃんのアバターは初期設定だと白黒みたいね」


「じゃあ、白ベースなのは変えないで、金色の刺繍をあしらうって感じにする。髪の色も白でいいし。あと細かいところは後で決めようかな」


 こういう細かい色塗りは好きだし、得意なことだ。時間をかけてゆっくりやりたい。


「そう? じゃあ次は特性ね。えーっと、阿修羅の特性はっと」


「特性?」


「そう、神様には特性があるのよ、アルテミスだと、月の出ている夜は魔力強化の補正が入るとかね」


「阿修羅様の特性ってなんだろう。三面六臂さんめんろっぴの戦闘の仏様だからなぁ」


「ろっぴ?」


「そう、顔が三つと、腕が6本っていうこと」


 そういって、特性の部分を見ると……。


「戦闘中に三種類の武器が換装できる。だって」


「えー、それってすごい。なんてすごい特性なの!?」


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