第3話 壊滅監獄
「おいデーモン。ここの地図はあるのか?」
「いや。ここの地形は毎朝変動しているから地図なんて物は存在しないな」
変動か…なかなかややこしいな。
ハンニバルの部屋が分かれば計画が進みやすいと思ったが…上手くはいかないか。
そうすれば考えられる手段は限られてくる。
「監獄の中にはクラリス、へモンド、ハンナの優秀な勇者が3人いる。お前の方はどうなんだ?」
「あいにく全員勇者討伐に向かっている。残っているのは役立たずのチビデビルぐらいだ」
なるほど。
これで作戦は絞られてきた。
「デーモン。俺はしばらく勇者の中に紛れ込む。5年越しの計画だ。台無しにするなよ」
「デーモンを舐めるな小童」
デーモンに魔法封印の縄によく似た縄をくくってもらった。
そしてデーモンの全力パンチを5割の力でガードし、扉をぶち破って退出した。
5割の力で結構ダメージが入った。
あいつも5年の間で強くなったんだな。
看守達が集まってきて俺を勇者達の監獄へと連行する。
生きているのが不思議と言わんばかりの顔をしてくる看守達が可愛らしく見えてきた。
勇者達は俺が帰ると歓声を上げ喜んでくれた。
こいつらのためには頑張らないといけないな。
ここから俺は駆け出し勇者のハルマに戻らなければならない。
あの“目的”を果たした時、俺の“復讐”が完了する。
それまでは辛抱だ。
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夜になり皆が眠りにつく頃、へモンドが看守に連れて行かれた。
嫌な予感がした俺はトイレに行くフリをしてへモンドの後をついていく。
ここでへモンドに死なれては計画は台無しだ。
しばらく歩くとそこは特別拷問部屋と呼ばれている部屋があり、ゴブリン達が見張っている。
この中にへモンドがいるのは間違いないだろう。
中に入る手段を考えるとしようか。
「すみません…トイレってどこでしたっけ?」
「おい。ここに近寄るな。トイレは反対側だ」
看守の肩に手を触れ、眠らせた。
ゴブリン達は魔法耐性がほぼない。
3割ぐらいの催眠術で眠ってくれるパワー系モンスターだ。
扉の向こうを覗くとへモンドと黒いローブの看守が話していた。
へモンドの手には地図が、黒いローブの看守の手には金貨が握られていた。
この現場はもしかしたら取引現場というやつか。
まさか勇者とモンスターが取引するとは思わなかった。
俺も人の事言えないが…
へモンドにバレないように監獄に戻り、すかさず眠りについた。
デーモンが言うにはここでは地図の意味がないと言っていたが、へモンドが手にした地図の意味は一体…
明日へモンドにこっそり聞いてみよう。
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翌日眼を覚ますとへモンドの姿がなかった。
というか周りの勇者達の姿が見当たらない。
どこへ消えてしまったんだろう。
「勇者1415番ッ!早く仕事場に迎え!!」
しまった…
今日は…
「貴様…勇者の分際で遅刻か…?」
1週間に1回だけある看守長のオークによる朝礼の日だった。
前から言われていたが、誰も起こさないのは想定していなかった。
目立たないように行動するはずが…しくじった…
「勇者1415番は“サキュバスの練習場”に連行しろ」
周りの勇者達がざわめき出す。
半分は怯え、半分は羨ましそうな顔で見ている。
“サキュバスの練習場”。
欲を吸い取る悪魔サキュバスによる死刑場の呼び名である。
“サキュバスの練習場”から帰った者は少ないと聞く。
果たして俺に未来はあるのだろうか…