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勇者刑務所からの脱出  作者: 象牙
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第2話 灼熱と極寒

 暑い…そして寒い…

 さっきから服を脱いでは着て、服を脱いでは着ての繰り返しだ。

 太陽が照ったと思いきや雲で隠れ冷たい風が吹く。

 暑さと寒さの繰り返しに他の勇者達が苦戦している。


 このまま脱走した所で死しか待っていないだろう。

 何か装備を整えない事には…


「おいお前ら!とっとと運びやがれ!」


 ゴブリンの看守が俺達を見張っていた。

 いつもならば俺の剣で一撃なのだが、現在その武器は取り上げられている。

 睨みつつもゴブリンがこっちへ振り向いたらへこへこと頭を下げなければならない。

 勇者として屈辱この上ない。


 クラリスは荷物を大量に運び、へモンドも僅かながら荷物をちょこまかと運んでいる。

 しかし、ハンナは荷物を運ぼうとせず、周りの景色を眺めていた。

 このままゴブリンに見つかればハンナはお仕置きされるに違いない。

 見たいが勇者としてのプライドがそれを守った。


「おいハンナ。働かないと死ぬぞ」


「黙ってて…」


 ハンナは集中していた。

 まさかと思うが脱走を企てているのではないかと考えてしまった。

 もしそう考えているのなら全力で止めてやる。

 まだ機は熟していないと…

 その間にゴブリンがハンナに気付くとゆっくりとハンナの背後に近づいた。


「何をしている…?」


「あそこに勇者の群れがいた気がするの。見に行った方がいいんじゃない?」


「…ウソをつくな小娘。働け。いつでもお前ごときへし折れる事を忘れるな」


 さすがのゴブリンもハンナにはなかなか手を出せないようだ。

 勇者のハンナは魔法の使い手だ。

 その中でも毒系の魔法は強力で自分の皮膚から毒を出す事ができる“ポイズンボディ”という魔法を覚えている。

 魔法封印の縄で縛られると言えどいつ解けるか分からないからゴブリンも簡単には手が出せないようだ。

 美しい薔薇には棘がある…ハンナのためにある言葉だろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 荷物を運び終えた後、そのまま休憩に入る。

 監獄の中に帰ると待っていた勇者から拍手で出迎えられた。

 まるで奇跡のような出迎え方だ。

 クラリス、へモンド、ハンナ…こんなに強い勇者がいれば死ぬ事はないって分かるだろ。

 もちろん俺様もいるが…


「勇者1415番…デーモン様がお呼びだ」


 デーモン…ハンニバルに仕える最強モンスターだ。

 適正勇者レベルは51。

 俺のレベルは21。

 レベル差は30。

 一撃で殺されるな。

 そんな強モンスターがなぜ俺を呼び出すのだろうか。

 殺すには手応えがないと思うぞ。


「…お前…気をつけろ。死相が出てるぞ」


 へモンドの一言で監獄の中は静まり返る。

 俺に死相が…?

 バカを言うなと言いたかったが、俺は唇を噛み締めながら監獄を後にした。

 もうあの監獄に戻れる保証はない。

 最後にハンナの胸をガン見しとけば良かったと後悔した…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 デーモンの部屋は暗く、何も見えなかった。

 ここで数多くの勇者が殺されたのか床は水…いやもっとドロドロした液体でビシャビシャになっていた。

 この液体にまた新たな液体が加わるであろう。

 ゴブリンは鍵を閉め、俺を閉じ込める。

 さて…

 そろそろ意識しないとな…


「待っていたぞハルマ…」


 恐ろしく低い声が監獄に響いた。

 久しぶりの声に感動すら覚えた。

 実は俺はデーモンに会うのは5年ぶりだった。

 あの頃はデーモンのレベルが低く敵にすらならなかったが、今ではこんな立派なモンスターに成長したんだな…


「水はいるか?飯は食えてるのか?」


「別にいらねえよ。ていうかこの縄解けるか?」


「お安い御用で」


 デーモンに縄を切ってもらった。

 デーモンの爪は鋭く尖っているので縄は簡単に切ることができる。

 便利な物だなデーモンの爪は。


「演技が下手だなハルマは。もう少し初心者勇者らしく演技しろよ」


「あぁ〜ん?5年前に生かしておいた恩を忘れたのかデーモン様よぉ〜?」


 恩知らずのデーモンにはあとでお灸を据えなければならない。

 さて、ここで混乱が起きてるかもしれないので説明をしておく。

 今まで俺は将来伝説の勇者になるために頑張る駆け出し勇者のハルマで、この監獄からの脱獄を企ててる勇者という“設定”だった。

 だが、もうここに仮の勇者はいない。

 ここにいるのはデーモンを仲間にし、この監獄をぶち壊そうとしている伝説の勇者ハルマしかいないのだ。

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