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夢の世界で魂を求めて -ソウルメイト-  作者: nusuto
第一章 魂の管理者編
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第八話 新たな魂(下)

 俺と有栖先輩は動揺していた。まさかメルマールが仲間になるとは思ってもいなかったし、俺の目の前に有栖先輩がいるとは思わなかった。有栖先輩も自身が置かれている状況に困惑して、顔を真っ赤にしていた。

「では私は下がりますので、お二人でごゆっくりと。話が終わりましたら声をかけてくださいね、部屋の外で待っております」

メイドは俺たちの行動を見て何かを感じたのか、扉を開けて部屋から出た。俺たちは部屋に取り残されてしまった。

 

 メルマールは身長が155センチメートルの小柄な女性で、明るい桃色のポニーテールである。服装は濃い桃色のブラウスに黒色のベスト、黒色のミニスカート、靴は桃色で軽快に動きやすそうである。明るい桃色のベルトには黒色のホルスターがいくつか取り付けられ、短銃を4丁、ナイフを2本収納している。ちなみに胸はエレアノールより大きい。後で聞いた話だが、年齢は15歳。元の肉体のメルマールは奴隷商人から逃げているところを元騎士団のデグロードによって保護されたが、衰弱死してしまい城で肉体を保管していたらしい。

 

 メルマールの明るい桃色の目は動揺していた。

「なんでここに来てしまったの?どうして?」

「先輩の命が危なかったのでエレアノールがメルマールの肉体と魂を結びつけました」

俺は魂の管理者ラデオアの事件の内容をすべて語った。

「もし私がこの肉体と結び付けられていなかったら」

「有栖先輩はもっと地獄を体験していたと思います。魂を何回も失うほど、危険な奴隷生活だと思います」

「絶体絶命だったのね」

「ええ、有栖先輩に無事に会えて良かったです」

「私もよ」

有栖先輩は寒気を感じ、体が震えていた。もしラデオアが有栖先輩の魂を死亡した奴隷と契約されていたら、と考えると震えが止まらない。

 

 しかし一点だけ話の内容と違う箇所があった。夢の牢獄についての話だ。

「私は夢の世界に行こうとしてない。無理矢理飛ばされたわ。何もこの世界の文献がないわ。誰かが私をこの世界に連れて来たのだわ」

「エレアノールが語っていた内容は嘘だったのですか?」

「そうよ、この世界に自力で行ける人間なんていない!」

有栖先輩が納得できないように話すと、突然部屋にエミが入ってきた。

「有栖さん、犯人はラデオアであることが判明した。ラデオアが有栖さんをこの世界に強制転移させ、罪がないのに処罰された。処罰された魂のほうが、魂の契約が簡単に実行できるからね」

エミはラデオアの真相を語っていたが、有栖先輩はエミのことで頭が一杯だった。

「あなたがエミさん!」

「なんで私の名前を知っている?」

「東條くんからメールで、いいえ、ある人からエミさんの存在を教えて頂いて」

「そうなの?私の名前を知っている理由はこれ以上聞かないわ」

初めて実物に会う有栖先輩は戸惑いを隠せず、冷や汗をかき、体を揺らしていた。いつもと違う有栖先輩だった。

 

 しかし有栖先輩の身柄もラデオアに取られるところだったとは予想外だった。有栖先輩は勉強熱心だから、と思っていたが実は奴の思惑によって夢の世界に転移されるなんて。

「エミさん、何でこの事実が分かったのですか?」

「私は1回だけ魂の契約書を提出した。戦死したハンター仲間を復活させたい、だけど否決されたわ。でも魂の管理者の1人と仲良くなれたわ、名前は教えないけどね」

「その人がラデオアの行為を見抜いたのですか?」

「そうよ、魂の契約書の他に、過去にあった処罰も全て4人で調べたそうよ。すると処罰した魂の9割がラデオアが実行し、その魂は死亡した奴隷の肉体と結び付けられていたわ」

「そんなことあるのかよ!」

「ええ、私も信じられなかったわ。魂の管理者に裏切り者が潜んでいるなんて考えていなかった。だけど実際に起こってしまった!」

「ゼルガンドを潰すしかない!」

「ええ、これ以上悲劇を生まないために!」

「さっさと結成式を終わらせて行かないと!すぐに出発しましょう、エミさん!」

「待って!まだ仲間の紹介が全然終わってない!まずはこれをやってから考えるよ!」

エミは興奮している俺を制止させた。エミは手を俺の顔に近づけて落ち着かせた。その後俺の耳に小声で語りかけた。

「ゼルガンドを潰すことは重要、だけど仲間との連携がないとゼルガンドを潰せない、仲間のと交流がもっと重要。今はメルマール、いや有栖さんを落ち着かせることに専念するわよ。騎士団団長命令よ」

 

 エミは仲間を呼びに部屋から飛び出すと、再び俺と有栖先輩だけになってしまった。

「私もここに来てしまったんだね、東條君がいる世界に。でも私大丈夫かな、武器を触ったことないから?」

「有栖先輩なら大丈夫です。俺が有栖先輩を守りますから。有栖先輩に傷がつかないように戦いますよ」

「こんなに頼もしい東條君は初めて見たなあ、嬉しいなあ」

「いえいえ、有栖先輩の為なら頑張れますよ」

「そんなこと言える東條君は新鮮だなあ。でも私も頑張らないとね。奴隷を救うために!」

「そうです、有栖先輩!」

俺たちは初めて笑みを浮かべた。これからどんなことが待っていても有栖先輩を助ける。俺は心の中で決意した。有栖先輩に情けない姿を見せない為に、心配させない為に。

 

 すると仲間を呼んできたエミが扉を開いた。これからエルディア、アリア、リル、エミ、メルマール、クラーラ、デグロードの7人による戦いが始まる。メルマールの瞳は動揺ではなく、覚悟を決めた瞳に変わっていた。

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