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夢の世界で魂を求めて -ソウルメイト-  作者: nusuto
第一章 魂の管理者編
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第七話 新たな魂(上)

 新たな戦いが幕を開けた、奴隷商人との決着である。この国を根本的に変革させるには、奴らを潰さないと平和が訪れない。このチャンスはもう二度と来ないかもしれない。

 

 今日の授業を終え、放課後に有栖先輩が待っている部室に向かうと、部室には有栖先輩の姿がいなかった。しかし鍵はかかっておらず、部屋が空いている状態だった。今日の話し合いの代わりなのか、机の上に置かれている手書きのメモ帳があった。だがメモ帳には有栖先輩の悲鳴を感じた。

「夢の牢獄から救って」

汚い文字で大きく書かれており、精神状態が危険だと感じた。夢の牢獄とは一体何か、夢の世界で何かが起きているのではないかと思い、無我夢中で帰宅した。

 

 帰宅後、宿題も勉強も何もせず、すぐに夢も世界に入った。夢も世界に入れば何か情報を得られるかもしれない。俺は有栖先輩の無事を思い、暗闇の世界に入った。

 

 それから体感で10分後、いつもの部屋ではない場所に到着した。床には瑠璃色に光り輝く小石が辺り一面に配置され、透明な机と椅子が置かれいた。透明な机と椅子は石のように硬い素材だ。そして俺の目の前にはエレアノールが座っていた、しかし彼女の表情は笑みが一切なく真剣だった。

「東條翔吾、君に伝えないといけないことがあり、ここに来てもらった。有栖裕美は禁忌を犯したため、処罰する」

「先輩を処罰するのですか!先輩は何もやっていないはずです!」

「残念ながら有栖は夢の世界を徹底的に調べ、ここに来てしまった。この世界を体感してみたいという好奇心で訪れてしまった。君がデグロードを倒した同じ時点で禁忌に踏み入れた」

「夢の世界に行っても処罰されるなんて、なんで俺が良くて先輩は駄目なんですか!」

「ここは魂の契約を行った者のみ踏み入れることができる空間。有栖は魂の契約者でもないし依頼者でもない、魂の契約と無関係だ。だから有栖は処罰する」

俺は怒りと悔しさが頭の中で回っていた。有栖先輩を許さないエレアノールと有栖先輩に情報を与えてしまった俺。エレアノールは冷静に淡々と話し続けた。

「有栖裕美は別室で処罰を受けている。処罰の内容としては有栖の夢を就寝から起床までずっと暗闇に閉じ込めるだけだ」

「それは俺がいつもこの世界に転移するときに見る大穴の光景と同じなんですか!」

「そう、ずっと黒色しかない世界に閉じ込めた。これも魂のルールだ。だけど君には特別に部屋に入室させてやる」

「早く行かせてくだい!先輩が可愛そうです!」

俺は机を大きな音が響くほど力強く叩いた。

「慌てるな、部屋に行くから冷静になれ」

エレアノールも机を蹴飛ばし、俺の胸ぐらを掴んだ。彼女に歯向かわず、彼女の案内に従った。

 

 赤色の宝石が床に配列されている廊下を歩くと、黒色の壁が見えた。廊下の壁は白色なのに、処罰する部屋の壁だけが黒色だった。

「ここに有栖がいる。扉を開けてみろ」

俺は黒色の扉を開けると、真っ暗な空間が広がっており、室内では制服姿の有栖先輩が手足を拘束され椅子に座っていた。

「これが禁忌を犯した者の処罰だ。起床するまでこの世界で暮らす。五感は封じてあるから君の声は届かない」

「先輩!」

何も感じられない漆黒の夢の世界を漂う有栖先輩。有栖先輩はこの状況に置かれていたために、メモを残していたのだろう。これが魂の牢獄だ。

「本当は私も有栖裕美を解放したい。君にはアリアを救った恩義があるからね。しかし私以外の魂の管理者が君だけに特別な行動をすれば私はこの世界からいなくなり、君も有栖裕美も危険に晒されるだろう。申し訳ないが、我慢してくれ」

「この処罰はいつまで続くのですか!」

「1週間だ。これは管理者の多数決で決定した」

有栖先輩は1週間もこの空間に閉じ込められる、俺は有栖先輩に情報を与えてしまい、このような状況においてしまった自分を責めた。


 しかし状況は一変する。有栖先輩は最悪な状況下に置かれてしまった。大粒の汗を流しながら走ってきた、黒色のメイド姿の女性がエレアノールに叫んだ。

「管理者ラデオア様が裏切りました!ラデオア様が処罰中の100名を無理矢理この世界に引きずり込んでいることが判明しました!ラデオア様の正体は奴隷商人です!」

「その情報、正しいのか?」

「ええ、他の管理者3名が魂の契約の動向が1日で急激に増えていることを発見し、判明しました!1日で100名の契約が完了し、契約者全員は奴隷にされてました!」

「どういうことなんだ!」

エレアノールは冷静さを失い、顔が真っ赤になるほど焦り始めた。そして有栖先輩が拘束されている部屋の壁を突き破るほどの力で壁を蹴った。メイドは普段落ち着いているエレアノールの急激な変化に驚き、声が弱くなりながら話し続けた。

「ラデオア様は過酷な労働をさせることで有名でした。管理者の仕事と共に、奴隷商売もしていました。ゼルガンドの代表として働いていました」

「ふざけるな!魂の管理者ってなんだよ!」

「東條様、落ち着いてください。ゼルガンドは死んだ肉体を回収し、そこに新たな魂を埋め込み、また働かせる方法で成長したそうです。今回は依頼者が偽名を使用してラデオア様が依頼し、100名を雇ったそうです」

「だが魂の契約には多数決での合意が必要だ。私達4人は奴の依頼を通す訳がない。奴の偽名の依頼を拒否したはずだ」

「ラデオア様は『依頼者が緊急時の場合のみ独断での魂の契約を認める』ルールを使用しました。これを100回使用しました」

「認められるか!奴め!」

エレアノールは叫びながら扉を蹴り、有栖先輩の拘束を解いた。その後エレアノールはメイドから分厚い白い本を受け取った。本を開くと赤色に輝く魔法陣が展開された。

「その情報、本当に正しいのか?魂の契約書をすべて確認した結果だよね?」

「その通りです、エレアノールさん。私達3人で調べた結果です。ラデオアさんは昨日100名の魂の契約を済ませました。累計で2000名の独断の契約を行っている履歴がありました。いずれも処罰された魂全員です」

「奴の権限はまだ残っているか?」

「はい、魂の契約が可能な状態です」

「処罰から解放するのと魂の契約とでは、どちらが優先される?」

「魂の契約が優先されます。それを利用してラデオアさんは契約を進めました」

「分かった、今から魂の契約を実行する!」

エレアノールは魂の依頼書を羽ペンで書き始めた。

「私は後で処罰されても構わない。処罰されている残りの1名を奴に取られる前に契約を済ませる!私が依頼者だ!奴隷にされる前に、安全な場所に移動させるために、独断で契約させる!有栖裕美の契約を通す、昨日死亡したメルマールの肉体と契約させる!これが依頼書だ、緊急時のルールを使用して今から通す!」

「いいえ、4対1で正当に契約を処理させます。有栖裕美の魂の契約を実行させます」

「ありがとう」

エレアノールは落ち着き、俺に謝った。

「すまない、私の判断で全てを進めてしまった。申し訳ない。私にはこれしかできなかった」

「いいえ、先輩が奴隷にされなくて良かったです。しかしゼルガンドは許せない!早くいつもの部屋に転送してくれ、さっさと奴を倒さないといけない!エレアノールさん!」

俺は決心した。アリアのためだけでなく、他の人のためにも戦わないといけない。俺が決心すると魔法陣から報告が上がってきた。

「エレアノールさん、大問題を見つけました。エルディアさんの魂の契約回数が6回ありました。5回がラデオアさん、最近の1回がアリアさんとなっております。他にも城で肉体を保管しているメルマールさんも5回ありました。もちろん4回がラデオアさんです。アリアさんやリルさん、クラーラさんなど数え切れないくらいラデオア様は肉体の再利用を2回以上しています!」

「奴は何処まで屑なんだ!だから1日に何十回も魂の依頼書を、否決されることを知りながら審議にかけてきたのか!そして契約が不可能だから裏で緊急ルールを自分都合で勝手に使用したのか!そういう目的だったのか!嫌な奴と思っていたが、本当に嫌なやつだったとは!」

エレアノールは精神崩壊しているように、冷静さを欠いていた。彼女の目には怒りと焦りしかなかった。壁には彼女が蹴った跡が無数に残っていた。

「頼む、東條翔吾!奴を潰せ!私はこれ以上被害を抑えるために魂の管理をしておく!」

 

 その後俺はエレアノールにいつもの部屋に転送してもらった。そこには昇格を自ら辞退し、メイドとして仕えるクラーラが立っていた。

「東條様、今日もよろしくお願いしますね」

「ああ、それより今日は騎士団の結成式だよな?さっさと終わらしてゼルガンドに向かう!」

「ええ、そのお気持ちは分かりますが、本日から新たな仲間を紹介しますので、出発はお待ちください。どうぞ入ってきてくだい」

ノックの音が聞こえ、扉が開くと、身長155センチメートルの女性が現れた。メイドは明るく笑顔で紹介した。

「新たな仲間、メルマール様です!」

「メルマール、嘘、有栖先輩!?」

「エルディア?東條君!どうして私がここにいるの!?ねえ、東條君!!」

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