表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の世界で魂を求めて -ソウルメイト-  作者: nusuto
第一章 魂の管理者編
14/31

第十三話 君の為に僕の為に(上)

 俺達は反撃の手段もない、逃走することもできない、圧倒的にラデオアが有利な状況で崖に追い込まれたような気分だ。この状況を突破するには何をすれば良いか、考える時間が無駄だった。崖から落とされたくなかったら一か八か立ち向かうしかない。真っ赤に染まった剣は切れ味が非常に悪い、ただの鈍器に化していた。ほかに使える剣がないため、下っ端が所持していた剣を拾い、剣先をラデオアに向けた。この剣も刃がボロボロだが、ただの鈍器よりはマシだろう。ラデオアは俺の苦しい表情を眺め、挑発しながら笑い始めた。

「おいおい、しょぼい武器で俺を倒そうとしているのか、あまり舐めないでくれよ」

「いや、本気だ!奴隷を限界まで苦しめて、人間の機能がなくなったら捨てて、他者の魂を奪い取り、また死んでもいい奴隷を作り出すお前を倒すまでは何度でも立ち上がる!奴隷を作って何が楽しい!?」

「楽しいさ、お金を作り出してくれる有能な道具だからね。魂の管理者の権限を勝ち取ってから、俺の人生はバラ色生活だよ。俺の代わりに鉱山や工場で24時間、ずっとお金を生み出してくれるからね。君は俺のお金儲けの計画を潰すつもりかな?俺のために人間が勝手にお金を恵んでくれるシステムがそんなに妬んでいるのかな、羨ましいのかな?」

「ふざけるな!!お前がいるから、この世界が平和にならないんだ!」

「でも俺を排除しても不正ギルドや盗賊は一緒に消えないよ。それに俺は犯罪はしないよ、民間人に危害を加えていないし戦争に加担していない、あいつらのように惨めな行為はしないさ」

「これは本音か!?」

「もちろん本音だ」

「覚悟しろ、ラデオア!!」

体中が灼熱になるほど怒りに満ちた肉体は、さっきまで不自由だった手足が活発に動き始めた。涙を流しながら地面を思いっきり蹴り、ラデオアに向かって剣を大きく振った。剣は先程の戦闘よりも神々しい輝きを帯びており、ラデオアが目を瞑るほどの光だった。しかしラデオアは俺の剣を素手で掴んだ、ラデオアの拳には血が一切流れていない。ラデオアは俺が剣を振る前に左手を目の前に突き出していた、そして一瞬のうちに音を発せずに剣を強い力で握りしめた。ラデオアはさらに笑みを浮かべた。

「君が俺を倒すと宣言したな!残念ながら君には俺を倒す資格すらないだろう、ここで退場してもらおうかな、東條翔吾さん」

ラデオアが剣から手を離すと、大きな地響きを発しながら地面が揺れるほどの衝撃波を生み出した。俺は何も抵抗できず、圧倒的な差を感じながら100m離れるほど吹き飛んだ。吹き飛されている間は無重力状態になるほど何もできず、地面に顔が着く瞬間を待つしかなかった。衝撃波は俺以外にも被害が及び、立つこともできないほどダメージを負っている仲間にさらに怪我を負わせてしまった。仲間も俺と一緒にラデオアから100mも離れた。

 衝撃波による地響きが収まり地面から体を起き上がると、辺りは仲間の血の海だった。仲間の全身は大量の砂と傷だらけになっており、体を起き上がれるほどの力がない瀕死状態だった。もちろん俺も衝撃波を直に食らっており、鈍器で肉体をずっと殴られ続けているほど限界の状態だった。地獄の状況下でラデオアは俺達に向かってくる、明るい鼻歌を呑気に歌いながら涼しい顔をして襲ってくる。

 もう何もできない、俺達はこれで終わりだ、降参したほうがいい、俺はいつの間にかネガティブなことしか考えられなくなった。周りには下っ端の剣が無数に落ちているが、下っ端の剣では絶対に勝ち目がないと分かった。もう歩くことさえできない、絶対に俺は戦えない、あとは死ぬだけだ、絶望の状況下で大粒の涙を流しながら最悪の言葉を呟いてしまった。

「アリア、リル、クラーラ、エルディア、ごめんな。明日から奴隷に戻ってしまうけど、頑張って生きてくれ」

呟き終わると俺はラデオアに降参するため、手を上げようとした。しかし心の声はそれを許さなかった。

「君の人生はここで終わって満足か?また俺達を奴隷生活に戻すつもりか?」

「仕方ないだろう、俺は諦めたんだ」

「でも......」

「俺は何もかも諦めたんだ、勝ち目はないよ!」

「エレアノールとの約束はどうする!君の間違った選択でアリアの笑顔を消すつもりか!仲間を見過ごして逃げる気か!」

「だけど俺には何もできない」

「できる、だから俺達と約束してくれ!君に俺達の魂をすべて託そう、もちろん君だけではなくアリア達にも奴隷として死んでいった魂をすべて託すつもりだ。だけど次は絶対にあきらめるな、エレアノールとの約束を忠実に守れよ、エルディア!!」

心の声は約束を言い残すと、俺達を純白の光が包み込み、真っ白な世界に飛ばされた。


 俺達は白しか色がない世界に無傷で立っていた。そして俺達の目の前には厳しい顔をしているエレアノールが分厚い本を読みながら、純白の椅子に座っていた。エレアノールが呪文のように優しそうに唱え続けていた。

「歴戦の魂達よ、戦士達に力をお与えください。非道な魂の管理者を排除するために力をお与えください」

呪文を唱え終わるとエレアノールは本をゆっくり閉じ、椅子から立ち上がった。

「アリア、リル、クラーラ、エミ、デグロード、メルマール、そしてエルディア。かつて奴隷として散っていった魂を力に還元して君達に与える。すべての奴隷の魂の願いや悲しみを背負い、ラデオアを倒せ。このチャンスはもう二度とない。私にとってもこの世界にとっても、そして君達にとっても最初で最後の運命の戦いだ。必ず勝利して戻ってこい!」

「エレアノールさん、ありがとうございます」

「お礼はまだ早すぎる、戦いに集中しろ!」

エルディアにお礼を言い終わると再び光に包まれた。


 数分後、純白の光が視界から消えると、俺達はあの絶望の戦場に立っていた。しかし絶望していたのはラデオアだった、口を大きく開けながらショックを受け、

「エレアノール、貴様は何をした!?」

と何度も呟いていた。俺達は新品の武器を所持しており、体も傷や血がついておらず、服も新品同様の輝きを帯びていた。俺は心の中でエレアノールやもう聞こえないこない心の声に感謝しつつ、ラデオアに剣先を向けた。

「ラデオア、俺はお前を決して許さない、逃さない!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ