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手を伸ばして握り返してくれたのは……  作者: 太極
第二章「森の魔女の聖域」
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第六十七話「束の間の……」

あけましておめでとうございます

展開が遅くてすみませんがよろしくお願いします

「はあ……はあ……」


 ようやく、魔物の影も見えなくなり声も聞こえなくなり戦いが終わったことを理解出来た。

 辺りには魔物の死骸もなく、もしもこれが魔物でなければ今頃僕の手は血で真っ赤に染まり、周囲には血だまりや骸だらけになっていただろう。


「キュル……!」


―ユウキ……!―


「リザ……」


 そんな風に戦いの疲れとあり得た惨状の想像の中で呼吸を整えようとしているとリザが駆け寄ってきた。

 どうやら、心配してくれていた様子だった。


「キュル……!?」


―大丈夫……!?―


 彼女はやはり、最初に僕のことを気にかけてくれる言葉を言ってくれた。


「……ありがとう。

 リザは?」


 そのリザの優しさに僕はリザも怪我をしていないかを訊ねた。

 見た所、その様子ではなさそうだけど、それでも、確かめたかった。


「キュル……

 キュルルル……」


―ウン……

 大丈夫ダヨ……―


 その僕の問いにリザは辛そうにそう返してくれた。


 ……ダメだなぁ……リザをここまで悲しませて……


 リザが気にかけてくれるのは嬉しくもある。

 でも、同時に悲しませたり、心配させる自分が嫌になる。

 無関心なのが嫌な癖にだからと言って心配してもらうこと重くのしかかる。


 面倒くさい奴だな……僕……


 気にかけてくれるから戦う気力も湧いてくる。

 でも、その結果、その気にかけてくれる相手を悲しませることが辛い。

 本当に我ながらめんどくさい人間だと思う。


「……リザ、ありがとう」


「キュル……?」


―エ……?―


 しかし、僕は心配してくれているリザに感謝の気持ちを伝えた。

 仮令、心配させてしまったことへの後ろめたさはあっても彼女の気持ちは本物だ。

 皮肉にも彼女が僕を大切に思ってくれているからこそ僕は戦える。

 それが矛盾を抱えていても守りたいと思って動いてしまうのだ。


「ユウキ、首尾はどうだ?」


 リザと僕がお互いの無事を確かめ合っているとウェニアが今の状況について訊ねてきた。


「もう……大丈夫かな……?」


 僕はそれに対してそう答えた。

 魔物も声も聞こえず、リザがこちらに来ている。

 そのことからある程度の安全は確保できていると判断できた。


「そうか……

 苦労を掛けたな」


「………………」


 ウェニアは僕を労った。


 『苦労か』……なら少しは……


 その言葉に僕は彼女に人間味を感じた。


 『でかした』とか言わないんだね……


 もし彼女の口から『でかした』とか、『よくやった』とかの言葉が出てきていたら僕は恐らく失望に近い感情を抱いていただろう。

 けれども、彼女は僕を気遣う様に『苦労をかけたな』と労ってくれた。


 やっぱり……人の痛みを気遣えるじゃないか……


「どうした?」


「……何でもないよ」


 王様というよりも魔王様ぶっているけど、その割にウェニアは相手を思いやる言葉を使う。

 恐らく人心掌握なのかもしれないけれども、少なくても人の心は理解出来てる。


 利用されているかもしれないけど……

 ただ嫌いにはなれないんだよな……


 王、指導者なのだから綺麗事ばかりでやっていけないのは事実だ。

 人を時として利用する。

 利用された側にとってはたまったものじゃないかもしれない。

 でも、踊らされることを理解しているだけいいかもしれない。


「……リナは?」


 リザとウェニアの気遣いで多少は報われた気がし、僕はリナのことを訊ねた。


「ああ、大分安定した。今は落ち着いている。

 貴様が時を稼いでくれていたお陰だ」


「……そう良かった」


 どうやら、リナは何とか無事らしい。

 本当に良かった。

 戦った甲斐があった。


 本当に……良か―――


 魔物の気配もなくなり、安全が確保された安心して息を吐いていると二人の無事を確かめようとした。


「―――!?

 リストさん!!リナ!!逃げて!!」


「なっ!?」


「キュ!?」


 僕は予想が出来なかったものを目にして考えるよりも先に叫びそのまま走った。


「死ねぇええええええええええええええ!!?」


「ぐぁ!?」


「お父さん!?」


 それはリストさんを張り倒してリナに対して小剣のようなものを振り下ろそうとしていたルズだった。

 どうして、あいつがここいるのかわからないままであったが僕はがむしゃらに走った。

 しかし、その切っ先はそのまま父のことを案じるリナへと落とされた。

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