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手を伸ばして握り返してくれたのは……  作者: 太極
第二章「森の魔女の聖域」
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第百三話「真の実力」



『グルァアアアアアアアアアアアアアア!!』


 リザの無力感からの解放に伴う咆哮を浴びながらも恐らく聞くにも堪えないただの飢えから来る叫びと共に残りの四体の魔獣が挑みかかってくる。


『行くのか、リザ?』


『グル!』


 その魔獣たちに対して、鬱陶しさを感じていたリザは前に出ようとしていた。

 最早、力の差は明白でありリザにとっては目の前の魔獣の群れ(そう仮称する)はただの子供がが投げかけてくる砂のようなものだ。

 だからこそ、すぐにでも終わらせたいのだろう。


『グルァアアアアアアアアアアアアアア』


『グル!』


 残っている二体の通常の個体に近付くと、突如リザは身を翻し奴らに背を向けた。

 敵に背を向けることなど、人間ならば隙を見せるのと同等のことだ。


『グルァ!?』


『グァア!?』


 だが、あくまでもそれは人間の場合に限った話だ。

 リザにとっては最も丈のある尾が鞭の様にしなやかに、そして、棍棒の如く二体纏めて叩きのめした。


『グル!』


 残っていた通常の魔獣を全て倒したリザは今の回転によって生まれた力を左腕で止めた後、そのまま大型の二体を睨み付けた。


『グルァアアアアアアアアアアアアアア』


『グルァアアアアアアアアアアアアアア』


 大型の個体二体は既に周囲の群れが崩壊、いや、そもそも群れと言うのも怪しい集団がなくなっても、リザとその奥にいる我とリナを執拗に狙い続けた。


 やはり、此奴らは異常だ


 魔獣は余りにも歪だ。

 魔物の中でもリザが特例なのは百も承知だ。

 しかし、魔獣の生命維持や生存本能を度外視した食欲は生物として明らかに狂っている。


『お、お姉ちゃん……』


 リザの圧倒的な強さから安全は確保されているのにも関わらず、リナはまるで化け物を目にしているかの様に怯えていた。

 魔獣たちの異常な食欲から不気味なものを感じ取ったのだろう。


『大丈夫だ』


 恐らく、こんな言葉に意味はないのだろう。

 リナにとっては殺されるという恐怖よりも、魔獣たちの不気味さへの恐怖が上回っているのだ。

 だからこそ、その恐怖を一時的とはいえ、取り去る為に


『やれ!!

 リザ!!』


 リザに勝つことを命じた。


『グルァアアアアアアアアアアアアアア』


『ギィッ!?』


『ギィア!?』


 それに呼応しリザが直立し自らの前脚を前腕に変え、二体の魔獣の首を掴み身体を宙に上げた。


『グルゥ!!』


『ギィッーーー!?』


『ギィアーーー!?』


 そして、間を置くこともなくそのまま地へと叩き伏せた。

 ユウキと我がリウンの母親の「超越魔法」を利用して、倒した大型の魔獣をリザは圧倒的な力を以って、それも二体も倒して見せた。


 ……やはり、ユウキに無理をさせてでも強化魔法をかけたのは間違いではなかったな


 リザの身体能力はあの時、我とユウキが安全策で通常の強化魔法で戦っていればリザを倒せたとしても間違いなく魔力切れと体力の消耗でその後が詰んでいた可能性がある。

 リザが我と相対した時に撤退を選んでいなければ我ら三人は無意味に死んでいた可能性がある。

 

 間違いなく、通常の戦力として我らの中で最強なのはリザだな


 ユウキの魔力がなければ魔法が十全ではない我や、通常の強化魔法と「テロマの剣」があるとはいえまだ未熟なユウキ。

 そんな我ら二人よりも真の姿のリザは間違いなく強いだろう。


 だが、今は……


 我ら三人の奇跡的な幸運について思いふけりそうになったが今はすべきことがある。


『リザ、よくやったな』


『グルッ!!』


 リザを労うとリザは誇らしげに声を鳴らした。

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