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手を伸ばして握り返してくれたのは……  作者: 太極
第二章「森の魔女の聖域」
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第百六話「厳しく、優しく」

「今から、貴様の魔力を使ってこの家にある書物と食糧を我の亜空間に収納する。

 よいな?」


「うん。分かったよ。

 だけど、僕の魔力をそんなに使っても大丈夫?

 その……リウンのお母さんの「超越魔法」を壊した時に結構消耗した気がするんだけど」


 先ほど言った通り、ウェニアはリウンの家から食糧とリウンの母親の書物を持ち出すつもりらしい。

 だけど、僕の魔力はかなり消耗しているはずだ。

 そんな状況でさらに消耗すれば僕が戦闘を行うことが出来なくなる懸念を感じた。

 ウェニアの言う通り、今回ウェニアが持ち出そうとしている食糧と書物は大きな利益を僕たちに、そして、何よりもリウンの将来の為になることは間違いないだろう。

 しかし、それはあくまでも持ち出せたらの話だ。

 「命あっての物種」という言葉がある様にどれだけの価値があったり、大量の宝物があったとしてもそれを売ったり、使ったり、公開出来る場所まで運び出さなければ、それは宝の持ち腐れだ。

 僕たちがいるのは森の中央。つまりは魔物の生息範囲だ。

 物資の持ち出しは方法はウェニアの「空間魔法」でクリアできている。

 しかし、問題はウェニアという荷台を森の外へと運び出す運搬方法だ。


「安心しろ。

 何故、我が貴様にだけリウンのことを任せていたと思う?」


「え?それは……」


 そんな疑問にウェニアは既に解決策を用意していることを仄めかすかのように応えた。


「まさか、貴様が命懸けでリウンを連れ出そうとしていた時に我がただのうのうと待っているだけと思っていたか?」


「え!?いや、そんなことは!?」


「ならば、よい。

 我には我の。貴様に貴様のすべきことがあるのだ。

 言っておくが、それはこれからも同じことだ。

 だから、一々自分の身の丈に合っている務めを果たしている時に他の者と比較してくよくよするな。

 少なくとも、我は理解したうえで貴様に役目を任せているのだからな」


「っ。

 ごめん」


 僕の疑問に明確には答えていないが、それでも僕が何か自分の役目を果たそうとしている時に彼女もまた同じであることを彼女は示した。

 それは今の状況に対する不安と同時に僕が常に抱いている自分の不甲斐なさへの嫌悪感を晴らそうとしている言葉だった。

 『一人は皆の為に。皆は一人の為に』という言葉じゃないけど、お互いがお互いに出来ることをする。

 そこには決して、貴賤なんてない。

 魔王なのに彼女自身は否定すると思うが、それは厳しい博愛の精神に思えた。


「……じゃあ、頼むよ。

 ウェニア」


 ここまで言ってくれたのだ。

 ここで彼女を信じないのは間違っている。


「ああ、任せろ」


 僕の信頼に対して、ウェニアは傲慢そうに誇らし気に、そして、嬉しそうに応えた。

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