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手を伸ばして握り返してくれたのは……  作者: 太極
第二章「森の魔女の聖域」
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第八十八話「失敗続き」

「ただいま、リウン」


「あ、お兄さんたち、おかえ―――

 ―――!?どうしたのその怪我は!?」


「……ちょっと、大きな魔物と遭遇して」


「大丈夫なの!?」


 家に入り、リウンに出迎えられると、僕たちの様子を見てリウンは血相を変えた。

 それもその筈だ。

 僕はルズの取り巻きに殴られた痕が残っている。

 リザに至っては蹴られて意識を失っている。

 回復魔法を使おうにもウェニアも僕も魔力を消耗してしまっている。

 恐らくはウェニアも体力を消耗しているだけだろう。

 どう見ても僕らの様子は徒事に思えないだろう。


「大丈夫だ、リウン。

 この中で最も消耗しているリザに関しても休めば明日には出発できる程度には回復している。

 心配せずともよい」


「……え?明日……」


「ああ。我らは明日にこの家を出る。

 世話になった」


「そうなんだ……」


 ウェニアは僕たちの中で一番深手を負っているリザが直ぐに回復することを引き合いに出して、安心させるのと同時に僕たちが家を出ることを伝えた。

 実際、リザを始めとした魔物にとっては致命傷ではない限りは瞬間的なダメージ以外は問題ないらしい。

 魔物は致命傷以外の外傷や寿命で死を迎えることは稀であることは既に説明を受けている。

 だからこそ、体力さえ回復すれば明日にでも出発は可能だ。


 本当は心も休ませてあげたいけど……


 どれだけ、体力や生命力的に問題がないと言っても、精神状態が安定するまではリザを休ませてあげたかった。

 人を襲っていた過去があるとしても、本来のリザは優しい心の持ち主であることを僕は彼女が本来の感情を取り戻してから十分に気付かされた。

 だから、心の休息も必要だと僕は願っていた。


 だけど、これ以上はウェニアの負担になる……


 当初の計画では王国のやクラスの人間たちが再投入されるリザのいた地下迷宮の攻略に対する一か月という期間に五大魔王の一角を倒すはずだった。

 なのに貴重な一週間をほぼ僕の甘さで費やしてしまっている。

 これ以上の時間の消費はウェニアの迷惑になる。


 僕が弱いせいで……


 こうなってしまっているのは全部、僕が弱いことが原因だ。

 僕が強かったら、そもそもリザは怪我をしなかったし、ケルドさんは集団暴行を受けなかったし、そして、リナは父親を失わずに済んだ。

 なのにわがままだけは一人前。


 次こそは……次こそは……って、その次って何時だよ……


 何時も頑張ろうとした。

 けれど、その度に失敗して、結局、何も出来ないでいる。

 しかも、ただ失敗するのならまだいいが、そのせいで誰かが犠牲になる。

 だからといって、投げ出すことは出来ないがそれでも失敗し続ける自分への嫌悪感が苦しかった。


「……お兄さん、どうしたの?」


「……ごめん、少し考え事をしちゃった。

 もう大丈夫だ―――」


 リウンに自分の不甲斐なさが原因によって生まれた自己嫌悪を悟らせまいとして咄嗟に嘘を吐こうとした。

 ただのその場しのぎの嘘なのは分かっているが、これ以上、他人に甘える様な真似はしたくないのだ。


「……リウン。リナ。

 少しばかり、リザを看てて欲しい」


「―――ウェニア?」


「え?」


「どうしたの?」


「……ユウキ、とっとと来い」


「えっ!?

 うわぁ!?」


 二人の返事を待つよりも先にはウェニアは僕の腕を掴んで、そのまま家の外へと連れ出した。


「うぇ、ウェニア?

 どうした―――?」


 いきなりのウェニアの行動に戸惑ってしまいながらも彼女の心意を訊ねた。


「いい加減にせぬか。

 この臆病者が」


「―――え」


 怒りを滲ませた声で彼女は初めて僕を罵倒した。

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