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序章「魔王の最期」

 ああ……我は死ぬのか……


 甥である宿敵の剣のもとに我は倒された。


 あと少しで……世界はすべて我の下に一つになったのにな……


 消えゆく己が生命の中、我はあと少しで魔族も人間すらも世界のすべてが我が物になろうとしたのにも関わらず我が野望はここで潰えることになった。


 だが……不思議だな……我が胸には虚しさは訪れぬ……


 野望半ばに倒れたというのにも関わらず、我はどこか満足気であった。

 いや、確かに悔しさはある。

 だが、それでも我にはこの世への恨めしさがなかった。


 ああ……そうか……我は嗤っているのだな……


 我の最期がここまで清々しいのはきっと「魔王」と言う役割をこなすことができたことへの達成感とこれから始まるであろう秩序なき混沌の到来に対する高鳴り、喜び、嘆き、憎しみ、憤りを既に感じているからなのだろう。


 ククク……そうか、そうか……我は本当に心の底から「魔王」なのだな……


 我は人生の最後にて己の本質に辿りつきようやく己の存在に納得がいった。

 我にとっては喜怒哀楽すべてが我が愉悦なのだ。

 思えば、我が生まれた時から世界は美しく我は醜かった。

 ゆえに我は世界を欲した。

 自分にないものを欲するのは自明の理だ。


「ククク……勇者よ、よく聞け……」


 我は負け犬の遠吠えとして、最後に我が片割れの聖女である妹の息子であり、我が宿敵の勇者である甥に対して、せめてもの伯母としての遺言を残そうとした。

 ああ、忌々しいほどにあの優しい妹に似ている。

 唯一、我に優しくしてくれたあの妹に。

 きっと、あの子だけは私のことを最後まで救おうとしているだろう。

 この甥もまた、そうなのだろう。


「仮令、魔王なくともこの世に平和は来ない。なぜならば、我ら亡き後にも今度は人と人が争うからだ」


 我は魔王として「恐怖」で魔族を従え、侵略した人間も「秩序」を以て支配した。

 我にとっては人も魔族も関係ない。

 なぜならば、我もまた人間なのだから。

 「魔王」と「聖女」の双子の姉妹のうち、「魔王」として生まれた我は実の両親からも村人からも迫害を受け続けた。

 そして、奴隷として売られた。

 そこで学んだよ。人間も魔族も変わらない善悪双方の心を持つものだと。

 いつまでも二元論を続ける人々の無知蒙昧さに我は悲しみと怒りを覚えた。

 だからこそ、我が「魔王」になって世界を支配しようと考えた。

 悲しみと怒りを知る我ならば、「秩序なき混沌」を世界にばらまかないですむと思ったからだ。

 それに実の両親や周囲から「魔王」と罵られたのだ。だったら、最期まで「魔王」として憎まれることこそ、我の存在意義ではないか。

 少なくとも、母からは「憎しみ」と言う感情を向けてもらえる。


「さらばだ……我が宿敵よ……」


 最期に私はこの優しき甥が魔族にすら劣らぬ人間の愚劣さの中で輝きを失わいでいてくれることを祈りながら目を閉じた。


 本当に楽しい世界であった……

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