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ウサ耳生活  作者: heavygear
6/19

ノーパン生活始めました

今回は微妙な説明会




 ウンコ臭い。

 しかも、匂いの発信源が自分。

 昨晩は意識を失う事が2~3回あったと思う。

 腹痛だけでなく、全身焼け付くような痛みに襲われた時は、死をも覚悟した。

 朝日を拝めた時は涙が零れたよ。

 助かったってね。

 正直言って運が良かった。

 うんだけに。


 上級回復魔法『スグ・ナオール』の存在を思い出せて本当に良かった。

 ライトボールは兎も角として、まさかゲーム内の魔法まで使えるようになっているとは正直思ってなかったからだ。


 俺個人の考えだが、魔法使いが魔法を発動させる時は呪文が必要なのでは?

 そんなイメージがあった訳だ。


 もしも、自分が魔法を使えるようになっていたら、当然の事ながら発動用の呪文なり印の切り方が頭に入っている筈。

 そう思い込んでいた所為で、呪文が頭に入っていないので、使えないと考えてしまった。


 結果はというと、死にそうになりヤケクソ気味に試したら成功である。

 正直笑えない。

 まあ、『ナ』が上手に発音出来ないというトラブルはあったが、今は命ある事に感謝するとしよう。


 こちらに飛ばされる前に、ゲームでラフーに装備させていた魔法は『スグ・ナオール』を含めて3つ。

 生存率高上の為、検証と練習は必須になるだろう。

 発音の練習もした方が良いよね。

 次に怪我した時に、やっぱり唱えられませんでしたでは、命がいくらあっても足りないからだ。


 しかし、洗濯と掃除が先だよなぁ。


 と、ラフー生活五目の朝は、泣きながらの起床である。


 嬉しいやら、悲しいやらで、穴があったら入りたいレベルだ。

 まったく、戦神ダレイトスは俺にとっての祟り神である。

 う~ん。

 壊れた石像を綺麗にしてお供え物を捧げたら、少しはこの辛い状況が改善されるのだろうか?

 いやいや、まずは自分の身の回りが優先だ。

 この年でお漏らしは泣ける!

 まずは、洗濯だ。




 自身の糞尿で水場を汚染してはいけない。

 炊事場跡でズボンと身体に付いた汚れを洗おうとして、ハッと気付いた。

 もしも、それに気付かず洗濯なんてした日には、また食中毒発生間違いなしである。

 そう思いついたのは、2度も腹を下した経験があるからの発想である。


 まあ、今日まで色々ポカミスが多いのはテンパッていたからだろうと思いたい。

 素人にサバイバル生活は難しいのです。

 

 結果、うんこ臭いまま洗濯が行えそうな水場の捜索となりました。


 この場所は、かつて聖職者達が暮らしていたであろう事から、廃墟のどこかにそういった水場がある筈。


 聖職者達が不潔な状態で宗教施設の維持はしないだろう事。

 炊事場跡の水道設備もしっかりしている事。


 ならば、どこかに身を清める場所や洗濯する場所が必ずある筈。


 そう考え探す事約1時間、無事洗い場跡を発見するのでした。

 空を飛んで探したら楽勝だったよ。

 今日の俺冴えてる。



 太陽が真上に来る頃、ようやく俺は人心地ついた。

 洗ったけど茶色い染みが残ったズボンを適当な枝に引っ掛ける。

 洗剤ないからこれは仕方が無い。

 後、身体も清めました。

 全身毛深い所為で未だにちょっと匂います。


 そして、ノーパン生活の開始だ。


 わははは、子供の身体だからちっとも恥ずかしくないぞぉ!

 誰も覗き見るヤツも居ないしなっ!

 お巡りさ~んっ、ここに全裸幼女が居ますよぉ~っ!

 誰かーっ!

 ふっ、誰も応えてはくれないな。


「にゃははは……みゅ、虚しい」


 あぁ、テンションが下がる。

 寝床に敷くものも作り直す必要があるし、ヤマリンゴ以外の食料も確保しないといけない。

 水っぽい食事しかしてないから、正直な所そろそろ塩分と油分が欲しいです。

 ついでに身体もまだ本調子じゃない。

 『スグ・ナオール』を再度試みたのだけど、完璧に体調が回復してないのだ。

 たぶん、食生活を改善しないとダメなんだろうなと思う。


「……狩りきゃぁ」


 悩む。

 魚釣りなら兎も角、俺は動物を狩った経験がないのだ。

 勿論、獲物を捌いた記憶もない。


 はたして、ヘタレの自分に出来るだろうか?

 昆虫食?

 そっちはあんまりしたくないなぁ。

 エグイ味のバッタモドキで懲りました。


「んみゅ?」


 そういえば……。


 今の獣人化した俺って、動物の肉食っても大丈夫なのだろうか?

 ウサギやネコ、イヌやキツネ、羊や山羊を食べたら共食い扱いされる?

 動物さんみたいに、人間は食べても平気な食物が危険な場合とかあったらどーするんだ?

 どーしよう……。


 うわぁ、貰った冒険手引書に書かれてある事も大丈夫なのか不安になってきた。


 ぐふ、謎と困難が増えるばかりである。


グゥ~ッ


 ……しかし、いくら考えても空腹には勝てないよ、グスン。


「と、とにゅかく、食べりゃれりゅもにょを探しょぅ」


 斧を片手にフラフラ飛んで捜索開始。

 あぁ、お腹空いた。


 ノーパンで空飛ぶと、股下に風がピューッと流れて、言いようのない凄い開放感があったよっ!

 全身に毛の生えたケモッ娘でなかったら、きっと痴女で速攻捕まるね!

 うはははっ、空元気出して今日を乗り切ろうZE!




パチパチパチッ


 あっという間に夕方です。

 火を熾して、食事の準備をする。

 夕陽の赤と燃える薪が発てる炎の赤が幻想的だ。


「……うぅ、これが晩飯きゃぁ」


 目の前の炎に焼かれるはマッシュルームとムカデ!

 後、イモムシとクモね!

 ふっ、幻想的じゃなくて原始的だね。

 動物さん達を狩るにはスキルが足りませんでしたよ。

 日も暮れてきたので、結局昆虫食さっ!

 笑いたくば笑え!

 笑うがいいさ!

 うははっ!


 ……見た目は悪いけど、焼ける匂いはギリギリ許容範囲内かな?

 うぅっ、見た目かなりグロイです。

 一応冒険手引書に書かれていた『食べられる昆虫』達なので、大丈夫だと思うが。

 今日は何度も確認したから下痢&腹痛はないと信じたい。


 キノコ類は兎も角、取りあえず食べてみますかぁー……はぁ、泣ける。


 ……。


「うっ……中からドロッとしたにょが」


「うひぃ、歯に……ムキャデの足が引っかかりゅ……ペッ」


「……うみゅ!? 意外に……食えりゅ??」


「っ!? こにょ味は……エビっ!!?」


 ブツブツ文句を言いつつ完食。

 クモが意外に美味しかったであります。

 ムカデさんは、次回足捥いでから焼こう。

 味がそこそこのイモムシは外見が論外。

 やっぱ料理は見た目も重要ですね。


 マッシュルームさんは塩さえあれば美味しかっただろうねです。

 デザートの焼きヤマリンゴ、大変美味しゅう御座いました。


 ポロリッと涙が一粒。

 あはは、煙が目に染みるなぁ……。

 寝よ。

 股下をくぐらせて抱いた尻尾はちょっぴり臭かったです。

 明日はもう少し頑張ろう。

 ちゃんとしたお肉が食べたいです。

 グーッ。




ザーッ……

ザーッ……


「……雨?」


 翌朝、目覚めれば雨。

 ふふふ、外に干していたズボンがズブ濡れじゃあありませんか。

 ノーパン生活二日目始まりましたっ!


 朝食として昨夜作った焼きヤマリンゴをモソモソ食べている間に雨足は強まり、本格的な土砂降りになっていた。

 ただでさえ朝は靄だか霧が出て湿気っぽいのに、さらに豪雨と来た。

 吐く息が少し白く見える程空気は冷え、外は白く霞んでおり、出歩くのにかなりの勇気が必要っぽい。

 今日の探索は中止した方が良さそうです。

 水分吸って重くなったズボンを回収し、絞って部屋干しにする。

 回収時に身体が雨に濡れてちと寒い。

 動物みたいに身体をブルブルッと振り水分を飛ばす。

 あ?

 部屋の中が湿気っちゃった。


「ふみゅぅ~っ……風邪引かにゃいよう火でも熾すきゃ」


 身体に残った水分を手拭いで拭き取り、ため息を零す。

 冒険手引書の記載道理に作った火熾し道具で、残った焚き木に火を着けようとする。

 木の板上で木の棒をゴシゴシします。

 これ下手したら2時間仕事なんだよなぁ、はぁ~っ。


 ……。


 ?

 なんか着きが悪いような気が……。


「っ!? ……にゃ、にゃははっ……湿気って火ぃつきゃない」


 ガックリきた。

 しかも、燃やせるものも少ないとガックリのダブルパンチである。

 流石に土砂降りの中へ飛び込んでの焚き木拾いは勘弁したい。

 風邪引くわっ!


「……あきゃるいうちに手引書でも読みゅきゃ」


 部屋の奥に張り付くようにして引っ込み、手引書を床に広げて読む。

 俺の身体が小さい事と手引書が大き過ぎる所為で、両手に持って読み事が出来ないからなぁ。


 今日は生き残るための勉強をしっかりしよう。

 決してやる事が無くて暇過ぎるからではないと一応記す。

 本当だよ。




 冒険手引書を最初からキチンと読む事にする。


 こちらの世界の名前、信仰される神々について等が書かれていた。


 テイルバーグラン。


 これが、俺が今居る世界の名前だ。


『偉大なるグレート・ワンと呼ばれる想像神によって生み出された世界。

 偉大なる者は大地と空、そして海を造った。

 世界を広げてゆくと、数々の問題が起こり始める。

 問題とは命だ。

 世界が成長すると共に、新しい命あるものが生まれ始めたのだった。

 草木が生まれ、鳥獣が生まれ、人が生まれる。

 世界は賑やかになった。

 様々な種が芽生え、そして様々な問題を起こした。

 偉大なる者一柱でも片付けられるが、いかんせん数が多い。

 問題を解決している間は、世界が広げられない。

 このままでは増える命に対し、世界が狭くなってしまう。

 そこで偉大なる者は、多くの神々を生み、それぞれに仕事を与え、世界を管理させた。

 これによって、テイルバーグランは大いに栄えた。

 偉大なる者は世界を広げる事に集中し、そして神々の前から姿を消した。

 テイルバーグランを完成させ、どこかで休んでおられるのだろう。

 世界は神々の手に預けられたのである。

 神々の導きによって、世界は守護される事となった。

 更なる繁栄を。

 テイルバーグランに光あれ。


 しかし、歯車が狂った。


 どの神が言ったかは定かでないが、こんな事を言った。


「誰が偉大なる者の後を継ぐ?」


 偉大なる者の帰還なく数千数万の時が流れていたため、どの神も神々の主導者を求めていたのだろう。

 次代の主導者は自分であると、複数の神々が名乗り上げた。

 しかし、主導者を決める話し合いは進まない。

 どの神も主導者足る力があるからである。

 そして、とうとう神々は2つの陣営に別れ、争う事となった。


 神々による千年戦争の始まりである。


 天は裂け、地は割れ、海は荒れた。


 多くの命が巻き込まれ死んだ。

 それは神々も例外ではない。

 多くの神々も死んだのである。


 最後に残った神々は、勝利と引き換えに肉体を失った。


 最早、神々がテイルバーグランに直接力を振るう事はない。

 生き残った命が、己の力でテイルバーグランを守護するのだ。


 神々は天界にてお言葉を我ら命に与えん。

 生きよ。

 テイルバーグランに光あれ!』




「……にゃにこれ?」


 創世記のようなものだろうか?

 要は一番偉いヤツが居なくなったので、後継争いしたら身体を失いました、だ。

 随分とまあ人間臭い神様だな。

 俺をこんな目に合わせているのもその内の一柱だと考えると、一応納得は出来るか。

 俺は納得してないがなっ!


「ふみゅう。次……」


 テイルバーグランに多く信仰されている神々が載っていた。

 六星神と表されており、六柱居ると解る。


 公正さと秩序の守護者にして、神々の指導者である天秤の女神セレスティア。

 この女神が六柱のリーダーらしい。

 女神が主神とは珍しいな。


 偉大なる者の生みし最も古き神、大地母神ガラティア。

 また女神か。

 テイルバーグランは女尊男卑か?


 無限に届く槍と全てを貫く槍を持つ、戦う者の守護者である戦神ダレイトス。

 俺にとっての疫病神。


 知識の探究者にして、魔術を生み出せし偉大なる魔術神オーグリフ。

 おぉっ、魔術の神だってさ。

 ファンタジーだね。


 技術の導き手にして、六本の腕持つ職人神バルガ。

 六本腕って、阿修羅様かよ。


 盗賊と旅人の守護者にして、神々の伝令役、風神ヘルヴァリ。

 え?

 旅人は解るけど、盗賊の守護者って何?


 なんか一癖も二癖もありそうな神々だ事。

 それに、ページの下にある空いたスペースにはとんでもない事が書いてある。

 これってたぶん戦神ダレイトスのコメントだろうな。

 読んでみる……。


 天秤の女神セレスティア。

 棚ぼた女神。

 お前、元は経理担当神だろ。


 大地母神ガラティア。

 逆らうな。

 六柱最強のオカン。


 戦神ダレイトス。

 守護するぞ。

 信仰せよ。


 魔術神オーグリフ。

 研究馬鹿。

 サイコパス。


 職人神バルガ。

 引き篭もり。

 オタク。


 風神ヘルヴァリ。

 うざい。

 しかも、覗き癖持ちのストーカー。




「……え?」


 これ、かなり不味い事書いてるんじゃなかろうか?

 この先、もし他人に出会う事があっても絶対この手引書は秘密にしよう。

 うん、そうしよう。

 俺は何も見なかった、うん。


「えっと、次、次っと……」


 さっさとページをめくる。


「……おっ?」


 この世界に住む人型の住人についてだった。

 イラスト付きでありがたい。


 ナーベル族。

 この世界に広く分布する様々な才能を秘めた種族。

 ぶっちゃけると普通の人間。


 エルフ族。

 尖った耳と美しい容姿が特徴のファンタジー世界に絶対必要な種族。

 自然崇拝の者が多く、森に集落を築く事が多い。

 ……この近くに、もし居るなら保護してくれないかなあ。


 ドワーフ族。

 力が強くタフな小人族。

 傭兵や鍛冶師で有名な者を多く輩出しているらしい。


 ビスタ族。

 四足獣から派生した獣人族。

 今の俺は、このビスタ族のようだ。


 メロウ族。

 水棲の人型種族。

 姿は人魚というより半漁人より。


 この5つの種族が、比較的温厚な種族らしい。


 次の人型の住人は危険な存在。


 オーク族。

 直立歩行する猪みたいな種族。

 死ぬまで闘い続ける戦闘狂が多く、破壊と殺戮、略奪を好む。

 お近づきになりたくない人型の住人。


 オーグル族。

 巨人のなりそこないな人喰い鬼。

 絶対にお近づきになりたくない人型の住人。


「……ファンタジーにゃ」


 他に、小鬼系のゴブリン等も記載されていたが割愛。

 魔獣や幻獣の類等も載っていたので、そちら優先に読む。


「ドリャゴンときゃも……居るにょね」


 最悪である。

 ドラゴン、ワイバーン、ヒュドラ等の竜種もこのテイルバーグランの住人らしい。

 人里離れた場所に生息と載っているのは良い。

 が、俺の現在地、明らかに人里離れてるんですけど……。

 ひえええっ。


「ふみゅう」


 有名どころは一通り居そうで、テイルバーグランって怖いです。

 子供サイズになったからこそ解る。

 サイズの大きい生き物、マジ怖いです。

 山猫なんて、今の俺からしたら豹か虎レベルですよ。

 狼や野犬だってライオンサイズに感じちゃう。

 普通の動物でさえ脅威なのに、人喰い鬼やドラゴンに遭遇する可能性があるとか、無理ゲー。

 シャイニング・レーザー?

 怖くて使えるかっ!!

 下手すりゃチャージ中に一撃貰うわっ!


 世界を救うよりも前に俺を先に救ってくれと言いたい。

 勇者なんて一般ピーポーのおっさんには無理です。

 グスン。


 と、まあグダグダ悩んでこの日は終った。


 明日は晴れると良いな。

 ヤマリンゴも残り少ないし、薪も予備を含めて集めておきたい。

 物資不足が元で早死にだけは勘弁だからだ。


 あぁ、下半身がスースーする。

 パンツ穿いてない所為か、昨日以上に不安を感じるよ。

 無駄に開放感はあるのにねっ!


 神様仏様、どうか俺を救って下さい。

 ついでに戦神ダレイトス様、これ以上の苦難はいらないので、元の生活に戻して下さい。

 うぅ。

 今夜は寒いよう。


ラフーは基本ヘタレw

毎日泣いてばかりでおま

いつか泣かない日が来るといいねw

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