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ウサ耳生活  作者: heavygear
17/19

お手伝いします

だんだんダメになってくる




 ラフー生活278日目、おまけのブライと一緒にサギさん一行に御厄介になる。


 昨日はエーコおばさんに抱き枕にされ、今日はケーコさんとウッソくんの抱き枕にされました。

 で、ウッソくんのオネショにより早朝目覚める事と相成りました。

 うえーい。

 まあ、ウッソくんまだ10歳(人間だと5歳児相当)だからしょうがない。

 んだけどぉ、ウッソくんが抱き枕にしたの俺の尻尾なんだよ。

 おおぅ、なんという事でしょう。

 俺、泣いてもいいよね?




 朝っぱらから強烈な洗礼を受けたが、まあお子様相手に怒ってもしょうがないので許す。

 噴水の水は今日も冷たく、尻尾を洗うのがちょっと大変でした。


 昨日はサギお爺さんとのお話しや皆の治療なんかで忙しかったので、今日からキチンと恩返しをしたいと思います。

 と、いっても身体は幼女だし、ドワーフ語は喋れないので、エーコおばさんの近くで簡単なお手伝いぐらいだね。

 気分は海外にホームステイした留学生な感じ。

 エーコおばさんが優しい方なので、ほっこりします。


 さてさて、まずは何をお手伝いしましょうかと尋ねたら、ウッソくんと適当に遊んでくれでした。

 言葉は通じないけど子供同士ならフィーリングでなんとかなるんじゃねってヤツですね。


 どう遊べば良いんだ?

 さっぱり解らん。

 う~ん、俺がこのぐらいの頃はどうしてたかなぁ?

 公園で遊んでいたような気がするけど、こっちじゃ滑り台とかジャングルジムなんてないよなぁ。

 どうしようか?

 ウッソくん、さっきから俺の事キラキラした目で見るのでプレッシャーがががが……。


「ラフー! モッフモフーッ!」

「にゃっ!?」


 俺が悩んでいると、ウッソくんは自慢の尻尾にダイレクトアタックを仕掛けてきた。

 つまり、俺の尻尾をモフりにきたのだ。

 むむ、君の気持ちはよく解る。

 大きくてフサフサした尻尾が近くにあったら触ってみたくなるよね。

 触ってもいいけど、鼻水とかつけないでくれるとありがたい。

 いや、つけないで下さい。

 お願いします。


 適当に尻尾をフリフリしたりすると、ウッソくんは『おー』とか『わーい』な感じで戯れてます。

 よしっ!

 掴みはOKだね。

 って、俺芸人じゃないんだけどぉ……。


 まあ、ウッソくんが喜んでくれるなら、それでも良いか。

 ブライが近くで、仲間に入れて欲しそうな目で立っていたが、無視する事にした。

 なんだ、その目は?

 ついでに手をワキワキ動かすな!

 変態かお前は?

 角と水晶返してやったんだから、さっさと換金して武者修行に戻れよ。


 しばらくブライを無視していたら、なんかショボーンとしてた。




 朝と昼の間ぐらいになると、テントの裏手からキンカンキンカンと金属を叩く音が聞こえだした。

 エーコおばさんに尋ねる。


「あれはねぇ。鋳掛けの仕事やぁ」

「へ~」


 おいおい、途端にファンタジー物にありがちなドワーフさん登場ですか?

 鋳掛けって事は、鍛冶仕事ですよね?

 優秀な鍛冶師イコール、ドワーフ。

 ファンタジー物での鉄板設定来ました。

 なんだかワクワクしてきたぞ。

 是非、見学したいです!


「ええよぉ」


 ってな訳で、尻尾にウッソくんを抱きつかせたままお仕事見学。

 なめし皮のエプロンと厚手の皮手袋を身につけたマッチョマンが、鍋の修理を汗だくになってやっておられる場を見る事に。

 うーむ、小型の炉と金床を外に出してやってるのか。

 てっきりテントの中でしてると思ったらそうでもない。


「エスタ(テントの事)でやったら火事になるんえ」


 あぁ、なるほど。

 確かにあのウールと毛皮で作られたテント内で、火の粉が飛ぶ作業したら火事になりますね。

 エスタの構造もそうだが、ドワーフさん達の文化や技術は、大変興味深い。


 武器とか防具とかも、あの狭い一角で作るのかな?


「うふふ、そんな大そうな仕事せぇへんよぉ。簡単な修理だけやねぇ」


 エーコおばさんは超能力者か!?

 聞こうとする前に答えるなんて……。


「巫女様はお顔に出てん。何聞きたいかよー解るよぉ」

「にゃ」


 なんと、顔に出ていたか。

 そういや、ずっと1人だったもんなぁ。

 人付き合いゼロだったから、考えが顔に出易くなっちゃったのかなぁ。

 今後は気をつけよう。


「*%ΦΧΨ∇ヵΣΤ?」


 おっと、鍛冶仕事のお邪魔になっただろうか。

 エプロン姿のマッチョマンが、手を休めてこちらの方に来てしまった。

 お髭の顔をよく見たらこのドワーフさん、昨日俺が火傷の治療した人だ。


「ヵ≫≒Κ、@ΥΨЙ+≦℃дгб?」

「@ΥΨЙ+……ΣΤΦ∇ヵΧ」


 エーコおばさんとなんか話してるけど、さっぱり解らない。

 通訳プリーズ。


「こん人なぁ、トギいうんよ。ウチん隊商に参加してなぁ、商売の勉強しとるんよぉ」

「ドーモ、巫女様。トギいいます。昨日はえろー世話んなりーした」


 うはっ、顔は渋格好良いのに口調が軽くて色々台無しだ。

 見た目ジジイだけど、若手の人なんだね。


「剣とか槍も打てっけども、設備と道具がショボかーじゃけー。鋳掛けるぐりゃーなもんですけにぃ」

「にゃんと」

「ゴーダにおる師匠っとこやったら、揃っとりますけん。腕ばぁあんま見せられんとー」

「にゃふう」


 トギさんの口調なんか面白いな。


「言葉の勉強もしとりますけに。こんも店ぇー持つための修行ですけー」


 へー。

 しっかりした人だなぁ。

 早く自分のお店持てるといいですね。


「ぎゃんばっれくらしゃい」

「ドーモですぅ」


 応援したら、山賊みたいな顔でニッコリ微笑まれた。

 ここでトギさんの見学終了。

 ウッソくんと一緒に手を振って、テントへ戻った。

 ブライ?

 俺の後ろ側にさっきまで居たが、今はトギさんとなにか相談中。

 大方、鎖帷子の修理でも頼んでいるんじゃないかな?




 お昼も近付いてきたので、調理のお手伝いでもしようかな?

 え?

 お手々の毛が入ったら困るからしなくていい?

 ショボーン。

 どんな調味料とか使ってるのか見学したかったのになぁ。

 残念。


 仕方ないので、ウッソくんと遊ぶ事にする。

 勝手に出歩く訳にはいかないので、アッチ向いてホイでもしよう。

 ジャンケンっぽい遊びの文化があるのは、エーコおばさんに確認済みです。

 その間も、ウッソくんは俺の尻尾をずっとギュッて抱いたままだったけどなー。

 ぬいぐるみじゃないんだよ、俺の尻尾は……。




 お昼を済ませた後はお昼寝。

 ウッソくんが、だよ。

 俺はウッソくんが寝ているベッドにチョコンと座って食休みです。

 余程気に入ったのか、ウッソくんは尻尾を抱いたまま寝ちゃってんだな、これが。

 動けません。

 感覚的に説明すると、3番目の脚に抱きつかれたような感覚だね。

 ベッドから移動出来ないので、テントの出入り口から外の様子をボケ~ッと眺めて過ごします。

 途中、ケーコさんが様子を見に来るぐらいで、凄く暇っ!


 平和だなぁ~。


 よくよく考えてみたら、ヨシィサに辿り着くまでずっとサバイバル生活だったからねぇ。

 こんなにのんびり落ち着いた時間は久しぶり過ぎて、ちょっと落ち着かない。

 本でも読みたいところだけど、ここじゃあ手引書を広げる訳にいかないからなあ。


 話し相手になれそうな自称護衛のブライも来ない。

 まだトギさんと交渉でもしてるのかね?


 ぼんやりしてると、トンテンカンと金属を打つ音が響くように聞こえるだけ。

 ウッソくん、よく寝れるね?

 慣れてるのかな?


 後は街の喧騒がBGMになっていた。

 商売繁盛するといいね。


 のんびりするのも悪くない。


 寝ているウッソくんの頭を俺はそっと撫でた。

 外で伸び伸び遊びたいだろうに。

 立派な商人になれよ。




 お昼寝が終ったウッソくんが、編み紐で出来た輪を見せてくれた。

 3色に染めた紐を1本に編んで作ったものだ。

 ミサンガにしては輪の径が大きい。


「アトリー」

「あちょりー?」


 輪の名前かな?


「ΦΧΨ……アトリー!」


 ウッソくんは輪を両手に持って、指に絡ませ始める。

 まさかこれはっ!?

 アヤトリ?


「*ΛΦ♯っ!」


 おぉっ!

 アヤトリだ、これ。

 ウッソくんの手には箒っぽい形になった輪の姿があった。


「しゅごい」

「ρヮゐг」


 何言ってるか解らないけど、楽しそうなのでOK。

 でも、これって1人アヤだよね。

 複数でやるのもあるのかな?


 取り合えず輪を借りて俺も挑戦。

 え~と、確かこうやって……。


 おうふ、『川』までしか1人アヤ出来ない。


「Ψ≫≒ΥЙっ!」


 なんか喜んでる。

 これで正解?


 しばらくの間、ウッソくんとアヤトリをして遊んだ。


 ドワーフの文化にアヤトリがある事にビックリしたけど、一緒に遊べるものがあって良かった。

 もしかすると、ドワーフ達に器用な者が多いのは、こういった遊びを幼少時代にするからであろうかと考察してみる。

 まっ、考察は兎も角として、ウッソくんが楽しんでくれればどうでもいいや。




 夕方近くになると、街の活気も鳴りを潜めだした。

 後片付けを始める人、買い物帰りの客の声、色んな人達の声が寂しく響く。

 あぁ、一日の終わりって感じだ。

 俺も日本の商店街に夕方赴いたら、こんな気分を味わってたのかなぁ。

 ノスタルジーってヤツ?


 ウッソくんと一緒にテント周辺のお掃除をします。

 あぁ、ちゃんとした箒があるのって素晴らしい。


 エーコおばさんとケーコさんが夕食の仕度をするBGMを聞きながら掃き掃除。

 うん、なんか良いね。

 サギさん率いる男衆達は、屋台や作業台のお片付け。

 トギさんは炉の火を落として、周辺の掃除をしていた。

 ん?

 ブライ、どこよ?


……カンッ! ……カンッ! ……カンッ!


 あれ?

 何かを打ち付けてる音がするぞ。

 トギさん以外に鍛冶師が居るのかな?


 後片付けや掃除が終っても、まだカンカン聞こえる。

 はて?

 ウッソくんと一緒に、音がする場所へ向かう。


 そこにブライが座って何かして居た。

 なんだ?


 丸太を切って作ったような簡素な小さい台の上に鎖帷子を置いて何かしてる。

 右手に小振りのハンマー、左手には先が尖ってない釘みたいなものを持っていた。


チャラ……カンッ!


 釘を一回だけ打つ動作をしてから、帷子の表面を弄り、また釘を一回だけ打つ動作をした。

 手元をそっと覗いてみると、どうやら鎖帷子の修理を自分でしているようだ。


 へぇ~、鎖帷子の修理ってこうやるのか。


 小さな金属のリングはC字をしていた。

 そのC字の端は、よく見ると小さな穴が空いている。

 その穴に、リベットを打ち込んでO字のリングにしているようだ。

 リング1つ1つにそれを施しながら、互い違いにあわせて鎖帷子にしてゆく。


 結構手間暇掛かるんだなぁ。


 うむ、邪魔しないよう放置しとこう。

 一応夕食が出来たら呼ぶからね。

 頑張れブライ。




 夕食が終ったら、日はすっかり暮れて夜になっていた。

 俺、あんまり手伝いしてないや。


「巫女様? ちょい手伝って」

「にゃ」


 こんな時間になんだろう?

 ウッソくんとアヤトリしてたら、エーコおばさんに呼ばれてテントの外へ。

 あれ?

 あれあれー?

 テントが1つ増えてるぞー。


「お風呂の準備よぉ」

「おふりょ!」


 素晴らしいっ!

 お風呂に入れるとは。

 よーし、いっぱいお手伝いしちゃいますよー。




 うむ、準備はあまり面白くもなかったな。

 だって、サウナ風呂の準備なんだもん。


 石のテーブルを準備して、下から火を焚いて熱するだけ。

 後は、焼けた石に水をかけての蒸気浴です。


 あぁ、湯船が恋しい。


 だがしかし、せっかくのサウナ風呂である。

 楽しまなくてどうする?


 え?

 男衆から先?

 そうですか、そうですね。


 しばし待つ事に。

 よし、ウッソくんとアヤトリしよう。




 サウナ風呂用のテントに入ると、ムワッとした熱い空気に襲われた。

 おぉ、これがサウナか。


 エーコおばさんと一緒に入ります。


 桶に入れた水を柄杓ですくって、焼けた石の台へ。


ジュワ~~ッ!


 蒸気がブワッとあがります。

 むむっ、結構熱いぞ。


「大丈夫かい?」

「へーきれしゅ」


 汗がダラダラ出てくる。

 よくよく考えたら、裸になっても天然毛皮装備だったわ。

 にゃはは。

 熱い。


 ベンチに2人並んで腰掛けて、汗をかきます。

 だんだん尻尾が水分を吸収してきて重くなってきた。

 うわー、サウナって結構クるものがあるな。


ジュワ~~ッ!


 なん……だと?

 さらに蒸気を発てるだと?

 ええいっ、エーコおばさんは化け物かっ?


「……にゃふぅ~っ」

「あらあら」


 蒸し暑くてクラッときた。

 そうか、ドワーフがタフな原因はこれかっ!

 サウナで鍛えてたんだな!


「ふにゃぁ~」


 す、すごい……ぞ、ドワー……フ。





「にゃっ!?」


 気が付いたらベッドの上。

 どうやらのぼせてしまったらしい。

 うわぁん、恥ずかしいっ!


「大丈夫かい?」

「にゃ?」


 すぐ側に、エーコおばさんがいた。

 全然気付かなかったよ。

 うあ、まだ頭がクラクラする。


「大丈夫れしゅ」

「駄目よぉ。子供が無理しちゃ」

「ごめんにゃしゃい」

「次は気ぃつけましょうねぇ」

「ひゃい」


 頭をワシワシ撫でられた。

 あぁ、暖かい。


 俺は目を細めて、それをただ受け止めた。




 あっ!?


 俺、ほとんど手伝いしてないや。


 すいません。

 明日から頑張ります。





精神がどんどん子供よりに……

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