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おバカな彼は異世界にいることに気付けない!

作者: RIN

□■で視点が変わります。

 俺は昔からあまり、頭はよくなかった。

 でも、昔から、取り乱すってことが少なくって、いつも「冷静だ」とか「大人びている」とか言われてきた。実際は、脳内はパニックに陥っていたりするんだけど、誰もそれに気づいてくれない。


 そう、俺は『ひと』はともかく、『おのれ』は充分認めるくらいのおバカだ。



 そして、そんな俺は、自宅にて、某有名な未来型の青いロボットタヌキが出てくるアニメを見つつ、ふと思ったわけだ。


 机の引き出しは…本当にどこかにつながっているのでは…?



 な?20歳を超えたいい大人が、バカだろう?自分でも途中で…(引き出しに入ろうと片足をかけた時かな?)俺は何をしているんだろう?とか冷静に振り返ったさ。当然、机の中のモノのせいで、入れるわけもなかった。


 机の引き出しをぶち抜くわけにもいかないし、諦めて、足を下ろそうとしたら……。


 急に引き出しの中が、真っ黒い異空間に?!


「おぉ!俺の机の引き出しが!タイムマシンの登場か?!」


 そのまま、引き出しを開けた机の前で体育座りで青ダヌキが出てくるのを待ってみた。二時間ほど…。


 まぁ、出てくるわけもないか、と諦めたのが、二時間後だったわけだ。もっと早く気付けばよかった。その間、異空間はそのままの状態でずっと机の引き出しに存在していた。


 取りあえず、引き出しに手を入れてみると、肘から先が消えた!!


「おぉ!未知の空間だな!」


 手を引き出して、スマホで「異空間の対処法」を検索してみる。出てこない…。

 次に「タイムマシンの活用法」。出てこない…。

 「引き出しの異空間」。出てこない…。


 どうしたものかと、考えてしまう。使用説明書はないんだろうか?青ダヌキの乗っていたマシンにだって、使用説明書と保証書はついていたはずだ!これは、何もついていない。ついでに言うと、マシンも見えないので、本当に真っ黒い空間があるだけだ。


「底はあるのかな?」


 暗いのは底が見えないからか?光が届かないからか?


 懐中電灯に紐をつけて、するすると引き出しに降ろしてみる。ん?引き出しに入った瞬間に紐の先が消えた!付けたはずの光も見えない。


 底がないのか~?


「はっ!俺の黒歴史的日記帳はどこに行った?!」


 引き出しに入れていたはずの!!俺の恥ずかしいポエムとか赤裸々ないろいろとか…!!厨二的何かなあの…!!捨てるのもできなくて、つい残していた!!しまった!早く捨ててしまえばよかった!!


 もう一度言おう!


 俺は、自分で認めるくらいには、おバカなんだよ…。





 そして、俺はここにいる。焦って、つい、引き出しに飛び込んでしまった。後悔は先には立たないんだよ。あっ!って思った時には、底がないらしい真っ黒い穴に落ちていた。


 黒い空間を落ちて、落ちて、落ちて…。


 そう言えば、こんな絵本あったよな?不思議の国のなんちゃらっていう…。別にウサギは追いかけてないんだけど…。とかいらないことを考えていたら、草の上にぼてっと落ちたってわけだ。尻が痛い…!


 落ちた場所を確認していると、どうやら割とふかふかの草の上だった。よかった。固い地面の上だったら、骨折くらいしていたかもしれない。痛いことは痛いけど!


 しばらく、辺りを見回していると、俺より少し大きな乳白色の楕円形の物体が近くにふたつ。なんだこりゃ?触ってみるけど、よくわからない。ちょっと暖かいような?


「はっ!日記!日記帳はどこだ?!」


 そのあたりを探してみたが何も見つからない!むしろ、その楕円の物体2つ以外は何もない!よくよく周りを見てみると、俺と楕円の物体がいるところは他の場所の草よりも窪んでいるようだ。円形にぐるっと窪んでいる。そのせいで、窪んでいないところの草より向うが見えない。それで、気付いた。


 これ……巣じゃね??


 大型の何かの…。ってことは、あれは…たまご?

 改めて乳白色の物体を見てみる。こんなに大きな卵を産む生き物が地球上にいるとは、びっくりだよな~。

 そんなことを考えていると、天気が良かったのに、日が陰った。振り返ると、そこには…。


 大きな青いトカゲ!見上げるくらいに大きい!!が、じっとこちらを見つめている。大きなぎょろっとした眼だ。顔だけで俺よりも大きい。


「うわ!こんな生き物が?!」


 はたと気づく。これは、どこかで見た覚えのあるような生き物だ!顔はトカゲのようで、身体は硬そうな鱗に覆われている。小学生の時、好きだった図鑑に載っていた!詳しくはないから、なにザウルスかは分からないけど…。


 そうか!ここは太古の世界なんだな?!タイムマシンに乗って(乗り物に乗った記憶はないけど)、太古の恐竜の世界に来てしまったのか?恐竜の巣に落ちるなんて、貴重な体験だ!


 タイムマシンの出口は…?辺りを見回すが見当たらない。

 はっ!落ちてきたんだから、上か?…見当たらない。


 これは、どうしたらいいんだ?どうしたものか…。


 ん?


 目の前に大きな口がぱっくりと開いている。しまった!肉食恐竜だったのか?!


 喰われる??!




 べろりん!!

 

 べっちゃりと唾液が身体につく。あれ?

 べろんべろんと唾液攻撃が続く。何この嫌がらせ。


「ちょ…ちょっと待った」


 お!止まってくれた。大きな瞳がきゅるんと見開かれる。何この恐竜、かわいい!尖った耳がぴくぴくと動いている。恐竜にこんな大きな耳がある種類もいるんだねー。


 ちょっと…触ってみてもいいんだろうか?


 そっと手を伸ばしてみる。途中で、最近見たある番組が思い起こされる。たしか~…、むやみに手とか出しちゃったら、かぶりつかれるとか何とか…あれはサメだっけ?ワニだっけ?

 一時停止した俺を不思議そうに見つめる恐竜。すると、俺の伸ばした手にすりっと鼻先を擦り付けてきた。


 …なにこの恐竜!!かわいい!!


 そうか!きっといきなり巣に現れた俺を子どもと勘違いしているんだな?


「俺はお前の子どもじゃないんだよ?」


 そう言うと、大きな首を傾げて、くる!と喉の奥から甘えたような声が聞こえてくる。


 ああ、小さかったらペットに連れて帰りたい!

 でも、そんなことしたら、時空警察みたいな人に捕まっちゃうのかな~。そもそも、飼える場所がないよな~。アパートはペット禁止だし。


 むくりと恐竜が立ち上がる。でかっ!でかい!!ビルか?!

 よく見ると、ちょっとアンバランスな体型をしている。お腹はぼってりしているし、前足は短い…。後ろ足もそれほど長くないから、短足な感じだ。ティラノサウルスも前足は短めだけど、後ろ足は長かったような…。

 あ!しかもよく見ると、背中に折りたたまれた翼みたいなのがある!!空飛べるのか?!

 変わった種類だな~?昔見た図鑑でも、こんな種類はいなかった!と、思う!


 立ち上がった恐竜を見上げていると、恐竜は俺を見下ろしてくる。大きすぎて首が…!


 まてよ!「恐竜」「恐竜」って呼ぶのはかわいくないよな~。でも、俺に名付けの才能があるとはどうしても思えないけど。


 ちらっと見上げる。


「なぁ、俺が名前をつけてもいいかなぁ?」


 恐竜に聞くと、大きな眼を見開いて、きらきらとさせている。

 

 すげぇ!!かしこいな!!俺が言ってることを理解しているのか?!

 だけど、名前か…。


 恐竜と言えば、ティラノサウルスかトリケラトプスかプテラノドンしか知らない。姿かたちを知っているのはティラノだけだ。じゃあ…。


「ティラとか?」


 そう言った瞬間。恐竜が白い光を放ち始めた!全身が光っている!!


「え?…なに?」


 恐竜って光る生き物だったのか?!驚愕の事実だな!!歴史的発見??

 発光する生き物ってクラゲとかにもいるし、不思議じゃないのかな?


 光が収まって来た。恐りゅ…ティラはきらきらした眼で俺を見下ろして、身体を屈ませる。鼻先で乳白色のたまご?を俺の方に押してくる。


 なんだ?温めろってわけじゃないよな?取りあえず、大きな卵1つに抱き付いてみる。あったかい!もうじき生まれるんじゃないか?!ティラを見上げると、眼を細めて、くるくると喉で鳴いている。


 そうか!


「俺が名前をつけていいのか?」


 ティラはまた、眼を輝かせる。

 しかし、名前…。トリケラトプス…トリ…ケラ…トプス…。…どこで切ってもイマイチだな。トリケ…ラト…プス。

 よし!


「リケラ…は?」


 はっ!今度は、卵が発光?!淡く光っている。だから、何が光るんだ?!…いや、いいです!生物学的なんちゃらを聞かされても、理解できないから!!


 光が収まると、今度は、もう一つの卵を鼻先で押し付けてくる。


「なぁ、親が名前を付けた方がいいんじゃないか?」


 そう聞いてみたが、ティラは譲らない。ぐいぐいと押し付けてくる。


「わかったよ」


 こうなったら、俺が名付け親だ!どんと来い!

 …プテラノドン…これはもう。


「プテラだ!」


 やっぱり、卵は光った。さすがに慣れたさ。恐竜は発光するってこと!


「いつ生まれるのかな~?」


 卵を撫でつつ、ティラに話しかける。ティラは、俺と卵を身体と長いしっぽで囲むように寝そべっている。


「楽しみだな~。生まれるの。俺、恐竜の赤ちゃん見るの初めて」


 って、絶滅したはずだから、見たことある奴はいないか。俺、人類初なんじゃないか?


 ん?さっき、ティラが卵を動かした、その下に、四角い黒い穴が…。


「あっ!」


 これ、もしかして!!タイムマシンの出入り口?こんなところに!!


「ティラ、俺、帰らなきゃ!」


 急に立ち上がった俺にティラは顔を上げる。悲しそうな瞳で、くるくる!と鳴く。

 ごめん!でも、思い出しちゃったんだよ!!俺、青ダヌキのために、来る前に風呂にお湯を入れてたんだった!!止めないと、溢れる!!


「ごめん!ティラ!絶対また来るからさ!今度来たら、赤ちゃん見せてよ」


 手を振って、穴に入ろうとすると、ティラが俺の服の端をくわえた。

 ん?ティラが鼻先を俺に擦り付けてくる。なに?


 あ!そっか!


「ティラ、俺、一斗イットって言うんだ。覚えておいてよ!絶対また来るから!」


 ティラは俺の名前を聞いて、嬉しそうに鳴いた。


 笑顔で手を振って、穴の中へ!!




 で、また、落ちている。行きも落ちてたから、帰りは上るのかと思っていた。


 ぼすんと柔らかいものの上に落ちる。


 俺の部屋のベットの上だった。風呂は溢れてなかったので、ほっとした。





■□■



 ヴィザン大陸には、9の国が存在している。それぞれの国で信じている神は違うが、彼らの唯一にして共通の信仰の対象がいる。


 それが、創造神フェルメテと竜――…ドラゴンである。


 世界を創った創造神。その創造神フェルメテがまるで我が子のように可愛がっていたのが、蒼き竜であった。創造神がこの世界を去り、竜はこの世界に残された。フェルメテの代わりに世界を支えた9柱の神々は悲しみに暮れる竜のために世界の中心に竜たちの国を作ったと言われている。


 昔も現在も世界の中心であるメロウテインは竜たちの住まう神聖な場所として、各国で特別な許可証がなければ入ることも許されない聖地となっている。


 そして、9つの宗教より選ばれた者が協力して、聖地メロウテインと竜を守り続けているのだ。

 そんなメロウテインを守る者たちは【メティ】と呼ばれている。



 聖地メロウテインに隣接する地に【メティ】たちの住まう教会がある。その大きな建物は白く輝き、荘厳な佇まいだ。そんな教会の廊下を早足を超えた速度で歩く人物がいた。そして、ある部屋の前に来ると、なんの合図もせずにドアに手をかける。


「アルゴ卿!どういうことなのです?」


 バンとドアを開けながら、その人物は叫ぶ。


「ノックをしなさい。落ち着け。何の話だ?」


「ご存じないわけがないでしょう?!」


 詰め寄られたが、アルゴには彼――ビスクが何を憤慨しているのかが分からなかった。


「だから、何の話だ?私は先ほど母国から帰還して、長旅で疲れているのだ」


 ため息を吐きつつ言うと、ビスクは眉間に皺を寄せる。


「…本当にご存じない?」


「だから、何を?」


 ビスクが何が言いたいのか分からないアルゴは、首を傾げる。


 たしか今年の彼は、竜名祭の担当だったな。今年は、竜の子どもも生まれたから、いつになく人も集まるだろう。


 竜名祭とは、その名の通り、メロウテインの竜に名を付けるための祭りだ。しかし、竜は数があまり多くはない。そんな中で、竜は自分の半身たる者を選び、その身に名を付けさせてくれることが稀にある。何年かに数人、竜に名を付ける栄誉を賜る者がおり、その栄誉を得た者は国から優遇される。そのため、何万人もの各国の人間がこの時期にこの教会付近に集まってくるのだ。この時期だけは、教会の周りはまるで祭りのような様相となる。とは言え、竜たちは上空から人間を見下ろし、選定するだけなので、一瞬で終わると言えば終わる。竜帝から、今年の竜の数が教えられ、その数の竜が上空を旋回すれば、祭りは終わる。


 今年は、全部で19頭。


 落ち着かない様子のビスクを見ながら、ぼんやりとそんなことを考えていたアルゴは、首を傾げるしかない。


 ビスクは23歳と若いながらに有能だ。出身は南の砂漠と水の神を崇める国アシャルダ。黒い肌に金の髪に整った顔立ちをしている。職務にも忠実だし、他の【メティ】を立てることができる、よくできた人物と言える。そんな彼が、これほどまでに慌てているのも珍しい。


「なにかあったのかね?」


 ぎゅっと唇を噛むビスク。


「先刻、竜名祭の代表である私に、竜帝から使者が参りました。今、教会は混乱の最中にあります」


 竜名祭は明日からだ。だから、アルゴは前日にここに戻って来た。そんな、時に竜帝から使者?今までは、竜の数を知らせる時と終了を知らせる時のみに使者を送って来たのに?今の時期に?


「緊急事態か?」


 ビスクは頷く。



「…今年の祭りは中止だとのことです。降った神より名を賜った竜が3頭おり、他の竜が人間に名を付けさせるのを拒否したそうです」


 その言葉を聞いて、アルゴは驚愕する。


 神は、滅多なことがなければ人の世界に降りてこない。それは、創造神フェルメテも現在存在している9柱の神も同様だ。最も最近、降臨したのは、メロウテインを作った時とさえ言われている。


 他はすべてが巫女を通じてのみ、ほぼ一方的ではあるが疎通が為されてきた。


「神が…降った?だが…国の巫女からは…なんの知らせも…。どの神が降ったのだ?」


 ビスクは躊躇いがちに口を開く。


「…どの神も…9柱の神ではありません。現に各国の代表者が国に確認をしたようですが、神からの御言葉を賜った巫女はおりませんでした。だから、不在だったアルゴ卿の国かと思い…」


 それで、冒頭の責めるような言い回しだったのかと、アルゴは納得する。確かに、なんの知らせもなく他国の神が降ったなどと全く違う方向から予兆なく聞かされれば、あの反応も理解できる。


「9柱では…ない?」


 ビスクが頷く。

 9柱以外の神…?それは…たった1柱しかいない…!


「…創造神…フェルメテ…?」


 それは、神話の時代を彷彿とさせる事件だった。




□■□



 俺の友人はおバカだ。いや、天然?


 とにかく、頭は悪くないくせにいろいろ残念すぎる。そんな奴だ。

 そんな、残念すぎる頭なのに、周りの評価は「クールだ」とか「冷静だ」とか…幼稚園からかれこれ15年以上の幼なじみの俺は分かる。絶対にそんな評価は間違っている。断言できる!でも、他の人には信じてもらえないんだ。


 だから、残念すぎる友人の評価が異様に高いのが、俺は不満だ。



「俺、この間、タイムマシンに乗ったんだよ」



 急にそんなことを言い出した友人に一時停止してしまった俺は、きっと悪くない。また始まったよと思った。


 友人はそういう体質なのか、巡りあわせなのか、なんだか理解不能な体験をしょっちゅうしている。中でも、この世界で今までで割と印象に残っているのは…。


 ダッシュババアならぬ、ダッシュ小学生だ。


 こいつが中学三年生の時だ。普段は通らない踏切。その真ん中にうずくまる小学生がいたそうだ。そのままじゃ電車に轢かれると思い、声をかけた。すると、小学生はすごい形相で走って追いかけてきた。こいつは怖くなって逃げた。


 そこまでなら、通常な反応だ。全力で漕いでいるチャリに追いつく勢いで走って追ってくる小学生。ホラーだ。怖くて逃げるのは当たり前だ。だけど、こいつはその次の日の通学路もその道を選んだ。なぜだ?!遠回りだろう?!

 それから卒業まで、こいつと悪霊小学生の死闘(?)は続いた。俺には、こいつがチャリで爆走しているようにしか見えなかったが、何人かのそういうモノが見えるヤツが、目撃していたらしい。こいつは至って冷静な顔をしていた。


 意味が解らない。何がしたくて、毎日恐怖の小学生に追い回される道を選ぶんだか…。


 そう思って、聞いてみたが、トンチンカンとしか言えない答えが返って来た。


『あんなに必死に追いかけてくるってことは、顔見知りだと思ったんだけど、3か月顔を見たけど、結局分からなかったなぁ。あれ誰だったの?』


 …あれが誰なのかなんて、知らねぇよ…。こういうところが冷静だって言うなら、間違っている!こいつは絶対に冷静とかいうのではなくて、抜けてるんだよ!間違いない!


「…タイムマシン?どこにあったんだ?」


「俺の部屋の机の引き出し。アニメを見てたら、引き出しに入れる気がして、足を引っかけたんだよ。そしたら、引き出しが底なし空間になっちゃって」


 ………。こいつの褒められるべき点。そうこいつ…どんなに意味不明、理解不能なことを言っても…それが絶対に嘘じゃないんだ。こいつの頭は、嘘をつけるようにできていない。つまり、これは…事実ってことだ。


「…ド○えもんは出てきたか?」


「う~ん、それがさ、引き出しの前で2時間も待ったのに出てこなかったんだ。俺、風呂まで入れて、お出迎えの準備万端だったのに…」


 …待つなよ。絶対出てこないの分かるだろ?


「俺もさ、まさか、机の引き出しが不思議空間につながるとは思ってなくて…」


 …よかった。こいつでもそこは分かってたか…。しかし、なんの話なんだ?結局、また何かに巻き込まれているのか?


「俺の恥ずかしい日記が落ちたと思って、慌てて飛び込んじゃった」


 ……は?引き出しに?


「で、たどり着いたのが、太古の恐竜時代だったってわけ!」


「…うん?」


「そこで、恐竜のお母さんと恐竜の卵に会ってさ…。そのお母さんがおっきい眼でじっと見てきて…めちゃくちゃかわいかったぞ。俺が名前、付けていいか聞いたら、嬉しそうにしててさ」


 ……お~い!なんで恐竜に人語が通じてるんだ―――??!おかしいだろ、そこ―――!!


「せっかくなので、まだ生まれてないけど、卵にも名前を付けてきた。知ってるか?恐竜って発光するみたいだぞ。急にきらきら光り出してびっくりした~」


 …発光?恐竜が?


「お前、恐竜の種類とか詳しい?俺もネットで調べたんだけど、ティラみたいな種類の恐竜が見つけられなくてさ」


 ティラってのは恐竜の名前か?安直すぎるだろ?


「トカゲみたいな顔をしてて、手足が短くて、腹がちょっとぼてってしてて、背中に蝙蝠の羽みたいなのがついてる…」


 …ん?恐竜?それ、恐竜?!プテラノドンじゃなくて?


「トリみたいな形じゃないのか?」


「トリじゃないよ~。どっちかっていうとゴジ○みたいな?」


「…ゴ○ラ?」


「そう、そんな体型」


 それに羽?……なんとなく、こいつが会ったっていうモノが分かった。それは恐竜じゃない!!似ているけど、たぶん違う!!それは、きっと……。


「…一斗イット。それ、多分…」


「あ!バイトの時間だ!ごめんね!政宗」


 急ぎ足でファミレスを出ていく一斗イットの背中を見送りながら、ため息。


 何かに巻き込まれるのも、自分から引き寄せるものも多い友人。事後報告が多い中で、今回は割と早く話してきたな。




「…今度は異世界トリップか?」




 さて、今度はどんな世界に行ったのやら…。


読んでいただき、ありがとうございました!

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