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レヴオル・シオン  作者: 群青
第二部 「魔王の章」
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第59話 新魔王


 新たな魔王となった俺たちは、オリジン機関に赴くことにした。

 ホントは当然行きたくない。

 オリジン機関は対魔王戦力の開発・育成を行っている所だ。出身者だからよ~~~く知ってる。

 そんな場所に新人魔王たる俺達が自ら足を運ぶ…… それはさながら、全身にダイナマイトを巻きつけて警察に「すいません、落とし物拾ったんですけど?」と、堂々と正面から突入するようなものだ…… 狙撃されても文句は言えない……

 そんな訳で行きたくない…… しかし俺達は魔王であると同時に創世十二使の一員でもある…… 行かない訳にはいかない……


「魔物に気を付けて行くのじゃぞ? そしていつの日か家族に認めてもらえる日が来る事を願っておるぞ。

 頑張れ! 必ず最後に愛は勝つ!」

「はい! 色々お世話になりました! いつか必ず僕たちの愛を世界に認めさせてみせます!

 必ず最後に愛は勝つ!!」


「~~~ッ~~~///」


「「必ず最後に愛は勝ぁーーーつ!!」」


「も……もういいから!!///」


 ジーサンに別れを告げ山を下りる、向かう先は近くの小さな村だ。そこからバスに乗り麓の大きな町まで出る。そこでオリジン機関と連絡を取り迎えを寄越してもらう。

 幸か不幸かココはオリジン機関の本部からそう遠くない。俺たちの帰還を知ればすぐにヘリが来るだろう。


 未だ片目が塞がってる琉架の手を引き山道を歩く。

 近くの村まで徒歩で半日ほど掛かるのでその時間を使って今後の方針を話し合っておく。


「さっきジーサン変なこと言わなかったか?」

「変? あ……愛の事じゃ無くて?」

「いやいや、必ず最後に愛は勝つよ。それじゃなくて……「魔物に気を付けろ」って」

「え? あ! そうだった、ここシニス世界じゃないんだった…… どういうことだろう?」


 そもそもデクス世界には魔物が存在していない。極稀に一種一体の魔物が出現する事はあったが、それはシニス世界から迷い込んだ…… いわゆる魔物のトラベラーだ。当然目撃例も数十年に一度程度。

 一説にはクレムリンの地下のゲートを抜けて来たのではないかと言われている。


「もしかして、魔王レイドが送り込んだのかな?」

「送るにしても魔族か使途だろ? 魔物なんか送り込んでも意味が無い……

 いや、意味が無くてもやりそうだったな…… アイツは……」


「もし魔物がいても私達なら大丈夫だよね?」

「そうだな、仮にも魔王だし」

「あぅ…… 魔王……だもんね」


 琉架はまだ吹っ切れてないか…… 少々酷だが今は現実を見てもらおう。


「オリジン機関での俺たちの方針…… その大前提だけど、魔王の力を継承したことは隠す方向でいこう」

「え…… 隠せるかな? 私たちの左眼、緋色眼(ヴァーミリオン)になっちゃったよ?」


「それは大丈夫だろ、創世十二使である俺たちですら魔王の緋色眼(ヴァーミリオン)をウィンリーから聞くまで知らなかったんだ、こっちの世界じゃ誰も知らないよ」

「あ…… それもそうだね」

「この朱い眼は別の何かと戦った時の後遺症ということにしよう、そうだな…… 龍人族(ドラグニア)のじーさんと戦った事にしよう。

 シニス世界でも殆んど誰も見た事のない最上位種族、龍人族(ドラグニア)だ。何をされても不思議じゃない」

「そうかな? うんん、そうだね、魔王だってバレて解剖とかされたらヤダし」


 そんな事になったら琉架を連れて逃げるね。その場合この世界を征服しなきゃいけなくなるかもな……

 できればそんな事はしたくない。


 脳裏に…… 俺の作り上げた魔王城の前で両親と妹が拡声器で俺を説得してる姿が浮かんだ……


『この親不孝者がー! お前のせいで会社クビになったんだぞー! まだローンが25年も残ってるのに!』

『アンタのせいでイタズラ電話が鳴りやまないのよ! このバカ息子ー!』

『おにーちゃんのせいで学校でイジメられた! 今から殴りに行くからそこで待ってろ!』

『ミャ~~~ゴ!』


 ………… なんだコレ? こんな赤っ恥を世界に晒すのは真っ平だ。


「でも…… たとえ上手くごまかせても、いずれはバレちゃうよね。1年もすれば……」

「ん?」

「だって私たち、きっともう成長しないよ? 14歳の姿のままじゃ……」


 そうだった…… 俺たち成長期の真っただ中で半不老不死になったんだった……

 何ということだ! これから琉架が美しく成長していく様子を見る事が出来ない! ゴリラじゃないけどちょっとショックだ……

 いや、まてよ? 以前ミラの話を聞いた時に建てた仮説…… 「魔王」とは魔王の力により肉体が変化した生き物であり、「魔王」とは魔王の力そのものを指す…… もしこの仮説が正しければ……


「…………」

「どうしたの? 神那?」

「ん~~~…… 琉架、ちょっと実験して欲しいんだけど」

「実験? どんな?」


「『両用時流(リバーシブル)』を使ってくれ、早送り……いや、巻き戻しで」

「あ、そうか! もし上手くいけば私たちの体を成長させる事が出来る! …… でも巻き戻しでイイの?」

「あぁ、説を検証したいんだ。頼む」

「うん、やってみる」


 琉架が『両用時流(リバーシブル)』を使用する。体がわずかに発光し、みるみる小さくなって行く、まるで魔法のキャンディーでも食べたみたいだ。成功だ。

 幼女…… というほど巻き戻らなかった。10歳位だろうか? 服はずり落ちてないから安心だ。

 若返る事が出来るならその逆もまた然り。後は3年くらい順調に年を重ねたらそこで成長は終わりにしよう。あれだ、永遠の17歳ってやつだ。


「これでバレずに済むかな?」

「琉架、少しめくるぞ?」


 スカートでは無い、10歳位に戻った琉架の眼帯をめくる。そこにあったのは……


「やはり緋色眼(ヴァーミリオン)のままか……」

「え? そんな…… ウソ!? 4年分は撒き戻ってるのに? 何で?」


 やはり俺たちには魔王の力が宿っているだけで、魔王という生物に変わった訳では無い。もしかしたら魔王の力を手放す方法も本当にあるかも知れない。もっともただの可能性だ、今はまだ伏せておこう。


「説明が難しいんだが、少しだけ魔王のメカニズムの解明に近づいた」

「う~ん、よく分からないけど、まだ仮説だから話せないって事だよね?」

「そうだな…… ゴメン」

「イイよ、神那のコト信頼してるから」


 琉架は微笑みながら元の姿に戻る。

 別に話せない訳じゃないんだ、ただ分かりやすく説明できる自信が無い。俺の能力不足だ。


「それと…… 重要なのは魔王の能力だ」

「ん? 魔王の能力?」

「ちょっと見てて」


 俺は琉架の手を離し、一歩分距離を取ると…… その場で消えて見せた。


 フッ―――


「え? え? か…神那? ど…どこ!?」

「後ろだよ」

「え? あ! え?」


 琉架が俺の顔をペタペタ触って確かめる。いや、見れば分かるでしょ?


「な…なに? 今の…… まるで…… まるで……」

「そう…… 『跳躍衣装(ジャンパー)』だ」


 呆然としている琉架に説明する。


「魔王の力の継承とはその能力(ギフト)も含まれるんだ。ウォーリアスが言っていた、「お前の能力はお前を殺した後にじっくり調べさせてもらう」……と」

「むぅ……」


 以前の話なのに「お前を殺した後」に反応してムッとする琉架…… あぁ……琉架の深い愛を感じる。俺はなんて幸せ者なんだ!


「あの時は、何言ってんだコイツ…… とも思ったもんだが、ウォーリアスの言う事に偽りは無かった」

「あの…… それじゃ…… もしかして私も?」


「あぁ、琉架も『星の御力(アステル)』を継承してる」

「私にも……」


 そう…… 『星の御力(アステル)』だ。あのブサイク大魔王にはなんて似合わない能力名だと思ったが、所持者が琉架ならこれ以上お似合いの能力名は無い!

 星の御力(アステル)…… まさに女神に相応しい!


 ただ欲を言わせてもらえば、俺と琉架の受け継いだギフトは逆の方が良かったと思う。主に能力値の問題で。

 まぁ、琉架は『時由時在』で瞬間移動の真似事ができるし、宝の持ち腐れになったかもしれないな。これで良かったのか。

 もし俺が何らかの理由で死に掛けたら、止めは琉架に刺して欲しい。そうすれば『跳躍衣装(ジャンパー)』と『血液変数(バリアブラッド)』が琉架に継承されるから……

 もっともこの事は口には出せない。ずっと一緒にいるって約束したばかりだからな。俺だって死にたくない。


「どんな能力だったっけ星の御力(アステル)って?」

「引力・斥力制御だ。アイツは専ら重力を強める使い方ばかりだったがな」


「う~~~ 重くなるのはちょっと…… 他にはどんな使い方ができるの?」

「遠くの物を引き寄せたり、逆に跳ね返したりもできる。攻防に使えるかなり便利な万能能力だ」

「ちょっと…… 試してみるね!」


 琉架は数メートル先の小石に対してギフトを使う…… すると……


 ボゴォォォ!!


 地面に埋まってた直径5メートルはありそうな巨大な岩が猛スピードで飛んできた。


「ぅわわわわっ!?」


 ズドォォォォン!!!!


 俺は瞬時に琉架を後ろから抱きしめ『跳躍衣装(ジャンパー)』を使用、跳躍し事無きを得る。役得だ。


「あ……あぁ…… 危ない能力……だね?」

「便利な能力なんだけどな、琉架は緋色眼(ヴァーミリオン)の制御訓練が完了したら、星の御力(アステル)の訓練だな」

「あぅぅ…… 神那ぁ……」

「大丈夫、俺も付き合うから。てか、俺がいない所では使わないでくれ、琉架なら大丈夫だろうけど危ないから」

「はい…… よろしくお願いします……」


 しょんぼりする琉架は可愛いなぁ…… しかし今の引力制御は幾らなんでも雑すぎた気がする。

 もしかして能力値も上がってたりするのだろうか? 俺としては願ったり叶ったりだが、ただでさえ莫大な能力値を誇る琉架には邪魔なだけかもしれないな。


 その後山の中を歩きながら情報のすり合わせを行なう。最も重要な部分だけを隠し、他は正直に話す。嘘は少ない方がイイ、琉架は俺と違って素直だから。



---



 どうにか日が暮れる前に小さな村に到着。

 本当に小さな村だ、宿も無い。ジーサンに紹介してもらったお宅へ向かう。気分はさながら田舎へ泊ろうだ。

 この家にはジーサンに負けず劣らずの人の良い老夫婦が住んでいた、そして俺たちの駆け落ちを応援するとのお言葉を頂いた。

 いつの日かゴリラを倒し、俺と琉架の結婚を認めさせるとここに誓う!


 翌日昼過ぎにバスで村を出る。

 目的地の街へは24時間も掛かるらしい…… この狭くて揺れるバスにそんな長時間乗るのか? なんちゅー僻地なんだ。酔わないか心配だ。




― 帰還17日目 ―


 ようやく大きな町へとたどり着いた。

 ここからならオリジン機関と直接連絡が取れるが、24時間耐久バスの旅で疲労が蓄積している。連絡を取ればすぐに迎えが来るだろう、そうすれば休む暇など貰えないのは間違いない。


 魔王だって疲れるモノは疲れる。


 ので、ここで一日休ませてもらう。その為にわざわざ一泊分の金額をジーサンの所で稼がせてもらったんだ。


「うっ……うぅ~~~! 疲れたね~体がギシギシ言ってる気がするよ」

「あぁ、あのバス揺れ過ぎだよ…… 乗り心地最悪だったな……」


 駆け落ち設定の俺たちは当たり前のように相部屋だ。金がギリギリだったのも理由の一つではあるが。

 体中のコリをほぐしていると、琉架がマッサージしてくれると言ってきた。ヒャッホゥ! ここはお言葉に甘えさせて貰おう!


---

--

-


 琉架のマッサージは強烈だった…… まるで拷問だ……

 なんでもそつなくこなす女神にも苦手な分野がある事を初めて知った……



---



 自室で食事を摂りながらテレビを見る。久しぶりのテレビだ。

 ガイアにもケーブルテレビがあったが見た事は無い。美少女達とのお喋りの方が何百倍も有意義だったからだ。今も琉架と二人なのだから本来ならテレビなど見ないのだが、情報は仕入れておきたい、特に帰還者の情報だ。


 しかし映し出された映像は想像していたモノとは違っていた。


 どこのチャンネルも突如現れた敵性生物の話題一色だった。どこか一局ぐらいアニメやってないのかよ? まったく心に余裕のない連中ばかりだ。


 この突如現れた生物は『攻撃性異形変異生物群(テリブル)』と呼ばれ、最初に現れたのが僅か17日前……

 17日前…… 俺達がこの世界に帰還した日だ…… まるで俺たちの帰りに呼応したかのようだ…… え? これ俺達の所為じゃ無いよね?


 ジーサンが言ってた魔物とはコイツ等の事だったのか…… そういえばジーサンは週一で物資の配達をしてもらってたな。その中に新聞も含まれてたのか…… だったら見せてくれても良かったのに……


 大慌てで宿の古新聞を回収して情報を集める。


「どうやら大和は大丈夫なようだな」


 この攻撃性異形変異生物群(テリブル)と呼ばれる生物は、魔科学兵器やB級魔術師でも対処できる程度らしい。ただし小型種に限られる……

 大型種…… 17日前、初めて現れた日に世界の別々の場所に計5匹の大型種が現れ、かなりの被害が出た。そいつらは現在世界に7人しかいないS級魔術師が対処したらしい。


「何なんだろう…… 私たちと何か関係あるのかな?」


 テレビではこの生物がどこからやって来たのか推測する特番がやっていた。


『巷ではシニス世界の魔王がこっちの世界に送り込んだ生物兵器と噂されてるらしい。まったく流石は魔王だ、とんだクソッタレだ!!』


 コメンテーターがテレビに相応しくない言葉を発する。気持ちは分かるがそりゃ八つ当たりだ。証拠は何処にも無いだろ?

 しかしその後もコメンテーターは魔王に対して言いたい放題。無関係なのにいたたまれない気持ちになる……

 この国には放送禁止用語は存在しないのか? 誰かアイツをつまみ出せよ!


 ………… しかし何というコトだ…… 魔王の風評被害が大変な事になってる。もし俺たちの正体がバレたら公開処刑でもされかねん勢いだぞ?

 魔王にも色んな奴がいるんだが…… 確かに大半がクソッタレだな。擁護できん。


 これでは反魔王の気運が高まるのは確実だ!

 改めて俺たちは今微妙な立ち位置にいる事を理解させられた。


「やっぱり…… 魔王は人間の敵なんだね…… 思い知らされちゃった……」

「そうだな…… 改めて言うまでもないが……」

「分かってる、二人だけの秘密だね。こんなコト家族にも話せないよ……」


 あの日…… 魔王を倒した日から俺達というより、世界中が変わった気がする……

 本当に嫌な予感がしてきた……



---



 翌朝…… 爆発音で起こされる。

 壁の時計を見ると時刻は朝の6時…… 見なかった事にしよう。


 外からする音を無視して二度寝に興ずる。誰にも邪魔されてなるモノか!


「うぅ~~~ん……うるしゃい…… 空圧(コンプレス)…… え~と……50倍……」


 琉架が魔術で外の音をシャットアウトして眠りにつく、よく今ので魔術が発動したな…… そんな事を思いながら俺の意識も闇に落ちて行った……




 次に目が覚めた時には、時計は9時30分を差していた。チェックアウトの時間もあるので三度寝は断念する。琉架を起こして身支度を整えフロントへ向かうと…… お祭り騒ぎだった。


「なんだ? 今日は祭りでもあるのか?」

「そういえば、明け方に花火の音みたいなのが聞こえた気が……」


「アンタら何悠長な事を言ってるんだ!? まさかこの騒ぎの中今まで寝てたのか!?」


 確かに外が騒がしい、遠くから爆発音も聞こえてくる。花火じゃないのか?

 よく見れば奥の食堂に包帯を巻いている人や血まみれの人もいるようだ。


「はぐれ攻撃性異形変異生物群(テリブル)が街の近くで見つかったんだ!!

 この街の魔術師じゃ足止めが精一杯だ!! アンタらも早く非難しろ!!」


「避難って…… 足止めが精一杯なんだろ? どうするんだ?」

「もうじきA級魔術師の援軍が到着するはずだ! それまでに死にたくなければ逃げろ!!

 もう防衛線はすぐそこまで下がって来てる!!」


 A級魔術師か…… 正直俺たちで片付けてもイイんだが……


「どうしようか神那? 私たちは勝手に何かしない方がイイかな?」

「そうだな…… これ以上被害が出ない程度に防衛協力しとくか」


 正直少し興味がある。緋色眼(ヴァーミリオン)で見ておきたい。



---



 防衛線ギリギリの位置にある民家の屋根の上に陣取る。

 遠くに見えるのが攻撃性異形変異生物群(テリブル)の小型種か?


 現在確認されてる小型種が3種類、「装甲種」「突撃種」「砲撃種」。他にもまだいる様だが、何せ出現から半月程度、分からない事だらけだ。

 今この街に迫っているのは「装甲種」と「砲撃種」、面倒な組み合わせだ。

 「装甲種」が前面で盾となり、その隙間から「砲撃種」が遠距離攻撃。

 理に適ってる。アイツら知能が有るのだろうか?


 数はそれ程多くない、全部合わせても30程度。距離もあるしこんな奴ら5秒で殲滅できるんだが…… まあいい。

 飛んでくる弾は魔力弾だ。反魔術(アンチマジック)で一つずつ消していく。

 コレで遠距離戦でのこちらの被害をゼロにできる。


 そんな時だった……



 ゴォォォォォォ……



「ウルサ…… なんだ?」

「爆撃機かな? ずいぶん低い所をゆっくり飛んでるけど」


 爆撃機ってまさか街を焼き払うつもりじゃあるまい…… って、なんか投下したぞ? マジで爆弾?


「なんだろ…… 爆弾一個ってまさか核爆弾じゃないよね?」

「いや…… あれは人だ」


 もしかして援軍のA級魔術師か? なんとも派手な登場だ…… まるで映画だ。



「ハッハッハッハッハーーーーー!!」


 女の笑い声があたりに響く……

 なんだろうこの馬鹿みたいな高笑いは、聞いていると不安になる……

 こんな笑い方する奴、知り合いにいるぞ?


(うら)神滅(しんめつ)! 疾鬼迅魔天外剣(しっきじんまてんがいけん)零式(ぜろしき)ーーーーー!!!!」


 ズドン!! ピシュン!!


 イタタタタ!! アイターーー!!

 近くで見ているだけで鳥肌が立つ、心の古傷をエグられるような技だ。

 そんな痛い必殺技を恥も外聞もなく使えるとは、心臓が鉄で出来てるんじゃないか?


 しかしそんな痛々しい技でも威力は抜群だ。どういう原理か分からないが一撃で全ての敵を切り裂いていた。

 そして痛い女が少し遅れて着地する…… 何か見覚えがある気がする…… 嫌な予感が現実になった!


「よし! 事態は終息した、朝飯でも食いに行こうぜ! 一刻も早く!」

「え? でも……神那、あの人って……」


 関わってはいけない! アレは暗黒の世界の住人だ! 俺もかつてそこに生息していたから理解る!



 ドン!



 女が大ジャンプしてこちらに飛んでくる、100メートル以上あるのにたった一回の跳躍で俺たちの前に辿り着いた。俺の知る限りこんな事が出来るのは一人しかいない!


「お前達…… 神那と琉架か? 本物?」


 俺達の前に現れた女…… その名を「シルヴィア・グランデ」という。俺達との関係は……


「お……お久しぶりです…… 師匠……」


 そう…… この痛い女は俺達の師匠だ。




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