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レヴオル・シオン  作者: 群青
第一部 「異世界の章」
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 閑話 暗躍


 閑話第二弾

 今回は短いのでオマケ扱いです。


 魔王討伐作戦の概要が決まった。


 我々『D.E.M.』の担当は、増援を排除し魔王を撃つこと。


 要するにクレムリンの裏から入って、魔族や使途を倒す。魔王の援護をする敵を先に片付ける仕事だ。

 自分の担当区域が終わったら魔王がいると思われる中央区画に乗り込んで、きっと苦戦しているであろう仲間たちを助けて、ヒーローの様に美味しいトコ取りで魔王を倒すポジションだ。


 これは信頼度が低いが故のサポート的立場だが、こちらとしては非常にありがたい布陣だ。


 アーサーは俺たちを第一攻撃部隊に進めたが、周りのギルド代表が認めなかった。

 第一攻撃部隊は各上位ギルドから数名の精鋭を集め、露払いの先発攻撃部隊のすぐ後ろに控える魔王討伐の本命だ。

 精鋭なんか集めるから無駄にプライドが高い連中ばかりだ、昔のエルリアみたいな感じだな。


 俺は知っている…… こういう奴らは噛ませになると……


 そんな部隊に組み込まれなくてホッとした。一瞬俺と女の子たちを精鋭とし、ジークを一人だけ露払い部隊に提供しようかとも思ったが、女の子を守る肉壁が無くなるのも困るので却下だ。

 あのむさ苦しい筋肉の存在理由は美少女を危機から守るための身代わりだ。

 ジークを前衛壁役に据えて、後方から白の目口物言で魔王を観察するのが『D.E.M.』の作戦だ。



 魔王討伐作戦決行日が決まってから、明らかに琉架が緊張している。

 常にそわそわして、物腰に落ち着きが無い。今からこの状態じゃ体が持たない。


 ここはアレ(・・)の出番だな……



「今回は山奥の温泉街にある老舗高級温泉旅館を貸し切りました」



 俺と美少女達の憩いの時間、息抜きだ。


 今回の旅行には女子組の提案により、我がギルドの専属オペレーターのリルリットさんが招待されることになった。

 耳長族(エルフ)特有の線の細いラインでありながら、立派な胸を持っているリルリットさんか…… 女子組には“いいね!”を送っておこう。



 ちなみに俺と琉架は先日誕生日を迎え、めでたく14歳になりました。しかしその事はメンバーには内緒にして、お互いにちょっとしたプレゼント交換をしただけだ。

 もともとこの世界では誕生日を祝う習慣が無い、なんでも誕生日は親に感謝する日らしい。

 我がギルドメンバーはすぐに親に会いにいける人は一人も居ない……

 ミラだけは会おうと思えばすぐに会えるだろうが、命の保証はない。


 と、いう訳で、今回の温泉旅行は二人だけの秘密のお祝いでもある。



---



 ホープでの空中移動中、リルリットさんに根掘り葉掘り聞かれた。

 その中で「エクリプスの神撃」の話題が出た。まぁ、この人になら話しても問題無いだろう。

 ただし、琉架の正体がバレることがないよう念を押しておく。


 もし俺の女神がエクリプス教会に攫われたら、教会関係者を皆殺しにしてやるね!

 我が宗教の唯一神を攫うなど…… 正に神をも恐れぬ大罪!


 教皇以外の幹部を皆殺しにして、教会に関係の深い場所や奇跡を虱潰しにして教会の神意を徹底的に潰してやる。そうやって恐怖を与えた後、最後に教皇を血祭りに上げる……

 その頃には13番目の魔王が現れたと話題になるかもしれないな。


 ………… いかんいかん、いくら妄想とは言えやり過ぎた…… これじゃまるで琉架が魔神みたいじゃないか。

 まぁ、バレなければいいんだ。



---



 異科位(イカイ)温泉郷に到着するも雪が深すぎる。

 せっかく温泉に来たのに雪の中でビバークするなんてまっぴらだ。

 新雪を踏み固めるのは少し難しいが、合成魔術で道を作る。


 余談だが、この合成魔術『圧殺息吹(ゴッドブレス)』を使うと妹を思い出す。どうでもいいことだけど……


 すぐに白がくっ付いて来てくれた。呼ばずともやって来る冬の暖房器具(ペット)のようだ。可愛いなぁ、心まで一緒に温まる。

 その後、繋いだ手を一緒に俺のコートのポケットに入れ、少々歩き温泉街へ至る。


 話には聞いていたが本当に大和風の街並みだ、昔 家族旅行で行ったボロい癖に味がって宿代がそこそこする温泉街そのものだ……

 射的がある…… レトロゲームオンリーのゲームセンターがある……

 今回俺が貸切ったのは高級老舗旅館だ…… さすがに卓球は無いだろう。どうでもいいことだが少し残念だ。


 っ! ちょ……ちょっと待て! もしかしたらこの世界には伝説の秘宝館が存在するかもしれない!


 かつて温泉旅行に来た大人たちが面白半分で入って楽しんでいた伝説の施設……

 デクス世界では滅んで久しいと聞く秘宝館…… これは調査してみないと……! 



---



 宿に到着。とうとう恐れていた自体が発生した。


 宿全体を貸切、男は別々の部屋を取っていたにもかかわらず、隣同士の部屋で仕切りは襖だけだった。

 何だコレ! これがこの世界の常識なのか!? 


 たのしい温泉旅行のハズが暗雲が立ち込めてきた…… 嫌な予感がする……

 この牢獄のような部屋は俺の未来を暗示しているのではないだろうか?

 何が悲しくてこの筋肉の塊のような男と二人っきりで過ごさなければならないんだ!? ウチのギルドには美少女が沢山いたのにもかかわらず……


 コンコン!


「神那ぁ、遊びに来たよ」


 女神降臨!!


「琉架ぁ!! よくぞ……よくぞ来てくれた!!」


 俺が涙を流して出迎えたら、琉架に少し引かれた…… しかしコレは俺の素直な心情だ!



---



 午後は自由時間、いつの間にかメンバー全員が男性部屋に集まっていた。これで筋肉ダルマがいなければ完璧なパラダイスだったのに……

 ちょっとした憂さ晴らしに、ジークの名前で秘宝館についてのリサーチを行う。

 するとあっさり秘宝館の目撃証言が得られる!

 同じ町に住んでるんだから知ってて当然か……


 俺が小声でつぶやいた「秘宝館」と言うワードに先輩が反応した。

 性に関して興味津々なお年頃の先輩は凄まじい地獄耳だ。


 先輩を連れて行くのは少々躊躇したが、秘宝館の存在を知られたからには置いて行く訳にはいかない。コレをネタに脅されかねないからな……

 しかたなく先輩と二人でピンク色のアンダーグラウンド秘宝館へいざ!


---

--

-


 何と言うか…… 想像以上で想像以下だった……


 まず規模が小さい、あんなモノなのかもしれないが、一言でいうとショボイ。

 夢見がちなDTには気持ち悪いだけだった。もっとこう……もっと…… ねぇ?

 これも大人になる為の経験値と捉えておこう。



 そして宴会後の入浴タイムだ。


 俺が手をまわして内風呂を使用できない様にしてもらったのだ! もちろんジークの名前を騙って!

 冬の夜、極寒の地での作戦は命に係わる可能性がある高難易度ミッションだ。

 だが、命を掛ける価値が有る! 全ての花たちが一同に会するチャンス。もちろん人が増えれば発見されるリスクも高まる。しかし一回のミッションで全ての目標を得られるなら全神経を集中させる事が出来る。

 完全武装でいざ往かんパライゾへ!!





 糞筋肉に拘束された…… やはりもっと早くに始末しておくべきだった……





『主様は性欲が強いのぅ、しかし女の裸を遠くから眺めるのが何がそんなに楽しいんだ?』


 うるさい! 覗きとは器物には分からん10代男子の夢なんだよ!

 確かに冷静に考えればアルテナの言う事はもっともだ、犯罪行為をするほどの対価は得られない気がする。


 だが考えてもみろ、人が金を払ってまで美術館に足を運ぶ理由は何だ? 美しいモノを見るためだ!

 写真やテレビでいくらでも見れるのに、わざわざ現地まで訪れる理由は何だ? その空気を感じるためだ!


 ここから数百メートル離れた所では、今まさに百花繚乱の真冬の花祭りが開かれている。


 俺の様なDTが花たちに吸い寄せられるのは当然の事だろう、磁石のS極とN極が惹かれあうようなモノ、もはや理屈ではない…… 真理だ!


『そんなに女の裸が見たいなら、我が見せてやろうか? なんなら我が処理してやってもよいぞ?』


 え! マジで!? アルテナは小っちゃいけど確かに美少女体だ。手の平サイズの女の子にエロいコトする薄い本もきっとある筈だ…… では早速、俺の溜まりに溜まった欲望でこの小さな精霊を溺れさせてやる……


 ………………


 出来るワケねーだろ、目の前に不能筋肉がいるんだぞ?

 俺の様な繊細な心を持つ少年にはハードルが高すぎる…… 棒無し棒高跳びレベルだ。


 それにもし、この賢王が女に反応しないだけで男に反応したらどうするんだ?

 なにせ500年の禁欲だ。そんなモノをぶつけられたら壊れちゃう! 具体的にどこが壊れるかは言わないが……


「うん、ありがとうアルテナ…… その気持ちだけで十分だ……」

『そうか? 溜まったら言えよ? 我はいつでもウェルカムだ』


 人の事を性欲が強いとか言ってた癖に、とうの魔導書(グリモワール)もなかなかの性欲の強さだ。




 その後、琉架が風呂でのぼせて、女子部屋に運び込まれたらしい。

 きっと今頃、浴衣一枚のだらしない恰好でグテッてるに違いない…… 心配だな、うちわを扇ぎに行きたい。


「なぁ、アルテナ」

『なんじゃ?』

「女の子になる性転換魔法って無いかな?」

『無いな。大昔には異性に転生するおまじない、なんてものも流行ったが実証はされとらん』

「そうか~…… ないのか~…… 残念だ」

『うむ、諦めて今の性を受け入れろ』


 いや…… 別に今の性に不満があるわけじゃない…… 俺にTS願望は無い。

 ただ単純に、女の花園に入りたいだけだ。



 その後、朝まで露天風呂で過ごす……

 理由は二つ。


 一つは……

 不能不死者と朝まで同室で過ごすのが嫌だから。


 もう一つは……

 深夜に女の子が入ってこないかな? と期待したからだ。マンガなんかでよくあるシチュエーションだ。

 結果は惨敗、所詮フィクションはフィクションだった。


 色々苦労したのに、得る物の少ない戦いだった。

 確かにジークの言う通り時期が悪かったのかもしれない。


 ならば次は戦勝記念だ。

 魔王を倒した後、もう一度温泉へ!

 今度は小細工を労せずそのまま突撃して「ゴメン間違えた!」で行こう。


 俺の野望は果てしない! まだまだ終わりじゃないさ!!




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