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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第363話 黎明の子6 ~切り札~


「犯人はこの中にいます!」

「「「「「「!!?」」」」」」

「それは…… あなたです…… ジークさん!」

「「「「「「なっ!? なんだってぇぇぇーーーっ!!?」」」」」」


 …………


 とかやりたかったなぁ…… 名探偵ゴッコ。

 まぁそんな空気じゃないんだけどね?


 元勇者で現・不能王のジークが我々の中に紛れ込んでいたスパイだ。


 だから俺は初期からアイツを始末するべきだと声高に叫んでいたんだ! いや、口には出してなかったけど……

 やはり俺の第六感は正しかった!

 もっともあの筋肉は不死身だったから簡単に始末できなかったのも痛い。

 あの不死身性さえ無ければとっくの昔に崖から突き落としてたよ!


 今からでも遅くないから始末しちまうか? いや、もう完全に手遅れだけどさ…… 憂さ晴らしってコトで……


「それじゃ…… 私たちって裏切られてたの?」

「いいや、本人に自覚は無い、スパイになったのも偶々だ」


 もし自らの意志で情報を渡してたのならアイツの500年ぶりに帰ってきた息子をねじ切って再び不能にしてやる!


「神聖域にあった歴代勇者の墓、一人だけ足りなかったのはジークの墓だ。

 そして神聖域とは神の力を回収して封印する為の場所…… つまりジークの中の神の力は未だに未回収ってコトだ。

 さすがに龍人族(ドラグニア)たちもその力を使ってスパイされてるとは思ってなかっただろうな。

 だから負けるんだよ、戦いにおいて最も重要なのは総合的な火力よりも情報だ」


 レビィはバツが悪そうな顔をしている、お前たちがちゃんと勝っていたらこんな面倒事に巻き込まれずに済んだんだ、是非とも猛省して欲しいモノだ。


「そうか…… 俺の中に神族の力が残っていたのか…… 完全に失われていたものと思っていたが……」


 ジークが自分の手の平を見つめている……

 おい! 反省の弁は? 別にお前が悪いんじゃないことは判ってるけど、お前のせいでみんなが苦労したんだ。

 「ゴメンナサイ」の一言くらいあってもいいだろ?

 豆腐メンタルの奴なら海に身投げするシーンだぞ?

 俺はどこぞの名探偵じゃないから止めないがな、死にたいなら死ね!


「はっはっはっ、スマンな?」


 イラッ!


 こんな謝罪なら沈黙しててくれたほうがまだマシだった。

 なに笑ってんだテメェ! 切り落とすぞ!?


「つまりエネ・イヴェルトは何年も前から俺を使って準備していたというワケか」

「あぁそうだよ」


 なに他人事みたいに言ってるんだ?

 俺の血液変換、琉架の予知能力、白の神眼、ミラの神曲、ミカヅキの闘気法、これらの情報が敵に筒抜けになってたのも全部お前のせいだ!

 さらにお前がスパイだったということは、エネ・イヴェルトは何年も前からエネ・イヴの所在を掴んでいたって意味だぞ?

 それこそ俺達が女神像の正体に気付くずっと以前からだ!


 つまりこの最終決戦は起こるべくして起こったイベントと言える。

 エネ・イヴェルトがエネ・イヴを手に入れる為の戦いだ。


 まるでアイツの手の平の上で弄ばれてたみたいでムカつく!

 やはりこのクソ筋肉は早くに処理しておくべきだった!


『私の情報源に今更気づいた所で何もかも手遅れっであろう……?

 お前たちの手の内は全て把握している……

 それを効率的に封じるために神星を犠牲にしてお前たちの魔力を削ったのだからな……』


 そう、アイツは俺が『執行官断罪剣(エクスキューショナー)』を隠匿していることまで知っていた、その現場をジークが目撃してたんだからな…… そして俺を足止めすればそれを使うことも……

 まんまと奴の術中にハマってしまった。

 もっと早く気付いていれば他にやりようが幾らでもあったのに!


 フゥ…… コレは俺のミスだ。

 やはり勇者など無視するか誰かに押し付けるべきだった。


 ……だが!


「お前が何年も前から準備を進めてきたように、こちらも何年も前からこんな事態を想定していた」


 まぁ大嘘なんだけど……


『フッ…… つまらん負け惜しみだな……? お前はよくハッタリを使う…… これもそれなのだろう……? もしお前にまだ何か手が残されてるなら見せてみろ…… それが無いのなら次に死ぬのはお前になるだろう……』


 くそっ! マジで情報が筒抜けじゃねーか! ジーク死ね!

 だがまだまだ俺を理解しているとは言い難い、真の嘘つきは真実と嘘を絶妙な配分で混ぜるものだ!

 お前みたいな視野の狭い奴に、リアルでハーレムを目指すという偉業に挑む男の崇高な精神が簡単に理解できると思うなよ!


「確かに…… お前の言う通り、俺は強敵と闘う機会が多かった、奥の手は常に残しておきたいタイプなんだが出し惜しみしてたら生き残れなかった」

『だろうな……』

「だから一番強い人物に実力を隠しておいてもらった」

『なに……?』

「お前は俺が魔王同盟で一番強いと思い込んでいただろ? それこそが最大の罠で、それを見抜けなかったお前の負けだ」

『………… 世迷言を……』


 ふん! 勝手にそう思ってろ。


「琉架」

「はい? …………え? わ……私のコト!?

 か…神那より強くなんて無いよ!?」


 そんな事は無い、もし俺と琉架が夫婦喧嘩をしたら俺なんか簡単にハーレムパレスから素っ裸で叩き出されるだろう。

 他の子達なら『神血(ディヴァイレッド)』を持つ今の俺なら何とかできるだろうけど、琉架にだけは勝てるヴィジョンが全く浮かばない。


「琉架、本気出してイイよ」

「! …………ホントに? イイの?」

『本気……だと……? 今まで本気を出した事が無かったとでも言うつもりか……?』


 無視無視、俺は琉架と話してるんだ、入ってくんな!


「今は正に世界滅亡の崖っぷちだ、今やらなければ世界は滅び俺も琉架もみんな死ぬ。

 それを止められるのはもう琉架しかいない」

「私…… しか……」


 これは琉架のご家族からの指示を真っ向から破る行為だ、たとえ信頼できる人しかいなかったとしても、真実を知る者が多ければどこかから情報は漏れ出る可能性が増える。

 でもまぁ大丈夫か、ココには魔王と龍人族(ドラグニア)と神族しかいないんだから。


「うん、分かった…… 私がやります、絶対に神那を死なせたりしない!」


 うむ、家族愛よりも俺への愛が上回ったな! ヒャッホゥ♪


『フッ…… アリスガワ・ルカ……か、確かに予知能力は厄介な力だ…… しかし魔力も尽き掛けたたった一人の少女に何が出来るのだ……?』


 だからその認識が甘いんだよ、なぜ琉架の魔力が尽き掛けてると決め付ける?

 お前の常識で計ろうとするから足元をすくわれるんだ、目の前にいる少女は “女神” の二つ名を持ってるんだぞ?



 スッ―――



 琉架が俺達の前に出て、エネ・イヴェルトと正面から対峙する。

 まるで俺達を守ってるみたいだ…… 夫としては情けない構図なんだけどなぁ……


「すぅ…… はぁ~……」


 琉架は大きく深呼吸をする…… そして……



「『限界突破(オーバードライブ)』……」



 ブワァァッ!!!!


 琉架の魔力が膨れ上がり、周囲に吹き荒れる……

 てか、俺とか勇者の時とは規模が違い過ぎる! 身体の力を抜いたら吹っ飛ばされそうだ!


 !! 今一瞬、琉架のスカートがめくれてパンツが丸見えになったぞ!

 こんな最終決戦の只中でも思わずそちらに目が行ってしまう…… これも男のサガだな…… きっと俺だけじゃ無いハズだ!



---



「うひゃあぁぁぁ~……あははははは~~~……」

「あぁっ! ウィンリーが飛ばされた! あの子なにやってるのよ!」

「ルカの…… 限界突破(オーバードライブ)……!」

「これ…… お母様の時と全然違う……」

「お嬢様……」

「エネ・イヴ様、私の後ろへ……」

「レビィは私のことより自分のことを心配して下さい」


 琉架の膨大な量の魔力放出により、周辺の空気が一緒に巻き上げられる。

 その勢いはまるで竜巻のようだ……

 そんな光景を見ながらリリスが呟く。


「ルカ…… 限界突破(オーバードライブ) 使えたんだ……」

「もちろんじゃ! 余がれくちゃ~したんじゃからな!」


 背後からウィンリーの声がする、振り向くと……

 先ほど彼方へ飛ばされたウィンリーが『世界樹女帝(ユグドラ・シル)』で回収され戻ってきたトコロだった…… ハッキリ言って木の枝に引っ掛かってるようにしか見えない……


「ウィンリー…… アナタの仕業?

 でもそうか…… カミナも使えたんだからルカが使えても不思議はないわね……」


 でも…… 人族(ヒウマ)出身者の魔王が使う『限界突破(オーバードライブ)』は……

 私も遥か昔に実験で使った事がある、それにカミナのケースもある……


「いよいよ最後の賭け……ね」

「なるべく使うなと言っておいたんじゃが……のぅ」




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