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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
368/375

第362話 黎明の子5 ~ネタバレ~


(エーテル)(マイクロ)(ブラック)(ホール)!! 『強制転送(アスポート)』!!!!」


 生成した天体をエネ・イヴェルトの座標へ転送する、天体は中心に向かって圧縮し、そして重力半径を超えた所でブラックホールが発生、寿命はおよそ0.1秒。



 ガオンッ!!!!



 ブラックホール発生地点を中心に直径数メートルが飲み込まれた、当然『汚れた魂は(ウィル・オ)現世で燃ゆる(・ウィスプ)』諸共だ。

 空間自体が消滅したため宇宙が一瞬揺れたが、ここは高位次元、外の世界には(多分)影響はなかっただろう……


「ハァッ! ハァッ!」


 エネ・イヴェルトの姿が無い…… しかし一緒に飲み込まれたってコトは無いだろう、瞬間移動が使えるアイツなら脱出も可能だ。

 それだけじゃない、俺が疲弊したこのチャンスに攻撃をしてくるに違いない!

 俺だったらそこを狙う……


「弐拾四式血界術・弐拾壱式『血霧』」


 僅かに手元に残った魔人の血を霧状に変えて周辺広範囲にばら撒く。

 すると血霧の範囲外にエネ・イヴェルトが姿を現した。


『ちっ……』


 忌々しい奴め……って顔をしている気がする。

 エネ・イヴェルトが姿を現す直前、頭上から殺気を感じた…… 恐らく上から狙ってたんだろう。


 どんなモノにも変換できる血霧の結界の中にアイツが足を踏み入れることは無いと思った、この中ではまともに対策が取れないからな。


 因みにこの血霧、付与効果は一切ない、もう魔力がヤバいモノで…… つまりただのハッタリだ。

 しかし俺がアイツの攻撃をマイクロブラックホールで迎撃しなければいけなかった様に、アイツもこの結界に迂闊に足を踏み入れる事は出来ない。

 例えハッタリだと分かっていても……


「ッ!」


 ヤバイ、足がふらつく…… しかしココで倒れるワケにはいかない、意識を失ったらアイツは止めを刺しに来る、それでなくても魔力が限界だと知られるのはマズイ。


 ガシッ!


「神那…… 大丈夫?」


 あれ? なぜか琉架がすぐ近くにいて俺を後ろから支えてくれた。

 たぶん予知で俺が倒れるのを見たのだろう、まさに転ばぬ先の杖、倒れる前の琉架。

 不甲斐ない俺を支えてくれるとは…… この子は良い嫁になる!(俺の)


 そうか、(エーテル)(マイクロ)(ブラック)(ホール)を発生させる時、できるだけ距離を取ろうと転移したら無意識に女の子たちの側へ飛んでしまったのか。

 実に俺らしい理由だな、しかし…… あぁ…… 背中に素晴しい感触…… このままズルズルと下へ身体をずらし琉架の胸に後頭部を埋めたい衝動に駆られる!


 …………


 やっちまおうかな?

 今はアイツも手が出せないんだから…… いやいや! イチャつくなら全てが終わってからだ!


『どうやら…… ようやく一番厄介な魔王を無力化できそうだな……』


 エネ・イヴェルトが遠~くから話し掛けてきた…… 声が聞き取り難いからもっと踏み込んで来いよ、このチキンの神様め!


『キリシマ・カミナとリリス・リスティスを無力化してしまえば後の魔王の能力は全て対策済み……

 これで王手だな……』

「………… ふん、急に饒舌に喋り出したな?」

『強がっていても限界が近いことは見れば分かる…… この薄っぺらい霧が晴れた時がお前の死ぬ時だ……』

「…………」


 確かに…… この霧を維持している間はアイツの攻撃に対して即座に反撃可能だが、それが出来なくなったらお終いだ。

 今すぐ解除したからと言って反撃する余裕はもうないんだが……


「神那の死ぬ時?」

「? 琉架?」

「そんなコト…… 私が絶対させない……」


 あぁ…… そうか…… そうだったな、まだ手はあるんだ。


『フッ……』


 アンニャロウ! 今、琉架のコトを馬鹿にした様に笑いやがった!! ゼッテー殺す!! 俺がこの手でぶっ殺してやる!! 琉架は手を出すな!!


 …………


 って、言いたいのは山々なんだけど、今の俺にはそんな力は残されていない……

 悔しいが……


「琉架…… 頼んでいいか?」

「うん、任せて! 絶対に神那の事もみんなの事も守ってみせるから!」


 あぁ、俺もそのつもりでみんなの前に立ったんだけど…… 結果はこのザマだ、我ながら情けない!


「そんなに気張らなくても大丈夫だよ、アイツを倒す手立ては既に見つけてあるから」

「おぉ~♪ さすが神那♪」


 琉架には極力キケンな事はさせたくなかったんだが、そもそも前提が間違ってたな。

 なんと言っても琉架は八大魔王同盟最強なんだから。


『私を倒す手立て……? 興味深いことを言う…… アリスガワ・ルカにお前やリリス・リスティスの様な戦い方は出来ないだろう……?』

「琉架には俺達みたいな小賢しい戦略は元々必要ないんだよ」

「うっ……!」

「??」


 近くで聞いていたリリスは視線をそらし、琉架は意味がわからずキョトンとしている、その表情可愛いなぁ。


「それじゃ手早くネタバレするか、アイツを倒す方法を……」

「う……うん、聞かせて?」


「まずアイツの身体…… あの鎧の中身は空っぽだ」

「はぇ? え~と…… どう言うコト? だって……」

『フッ……』


 エネ・イヴェルトに鼻で笑われた…… うっさいぞ外野!


「厳密に言うと空っぽじゃないんだが…… アイツには肉体が無い、鎧の中身は仮想体だ」

「仮想……体…… それってつまり魔人みたいなモノ?」

「そう、アイツの身体は今は恐らく頭しか残ってないんだ」

「それじゃ…… 頭を潰さないと倒せない……のかな?」


 琉架にそんなグロい事をさせるワケにはいかない、最終的にその作業が必要ならば俺が代わりにやろう、それともリリスがやるべきかな?


「いや、俺の予想ではその作業は必要にならない」

「そうなんだ…… ほ……」

「ただしアイツが用意した特別なエンジンを破壊する必要がある」

「エンジン?」

「仮想体を動かす為に絶対必要なエンジン…… 心臓だよ、魔王カオスの心臓」

「!?」

『なっ!? 貴様…… 何故っ!?』


 お、エネ・イヴェルトが焦ったぞ? バカなヤツだ、俺の説の正しさを証明してくれるとは……

 よろしい! お礼に俺が何故その結論に至ったか教えてやろう。


「何故も何も最初からどこかで使ってくると予想していた、確信したのはお前が俺の『赤い棘(ティール・ソーン)』を消滅させた時だ」

『なに……?』

「俺は最初、お前が『魔王殺し(ホワイトアウト)』を使って能力の無効化をしているのかと思ってた。

 だが勇者が使った時とは明らかに違っていた……

 勇者が使った時は硬質化した血液が解除され液体に戻った。

 だがお前は消滅させてみせた…… アレはカオスの『絶対無敵(インヴィクティア)』だ」

『!!?』


 一瞬だが焦りの感情が漏れ出した、どうやら正解らしい、答え合わせに付き合ってくれてどーも。


「あっ……! アイツの身体の中にカオスの心臓が!!?」


 カオスの心臓という言葉に一番食い付いたのはレビィだった。

 取りあえず無視しておこう、下手に会話に巻き込むと片腕を失った状態にも拘らず「ここは私が!」とか言い出しそうな雰囲気だ…… エネ・イヴ、そいつちゃんと抑えてろ。


「だがお前に『絶対無敵(インヴィクティア)』を完璧に使いこなす事は出来ない、お前は神族であって超越者では無い。

 恐らく身体の一部に短時間だけ纏わせている……ってトコロだろ?」

『……っ』


 全身を覆えるなら強固な鎧など必要ないからな。


「つまりその鎧の中にはカオスの心臓が設置されている、それを破壊されたらお前はあらゆる能力を失う、多分その身体を動かすコトも出来なくなる…… そうだろ?」

『…………』


 沈黙は是なり……だな。


 わざわざ言わないけどこの説にはもう一つ根拠がある、それはエネ・イヴェルトが初代から49代目まで全ての勇者を人族(ヒウマ)から選出しているからだ。

 もっと序列が上の種族から選出した方が打倒魔王も達成し易かったハズ、何故それをしなかったのか?

 答えは出来なかったから。


 人族(ヒウマ)以外には『魔王殺し(ホワイトアウト)』を発現させる事ができなかったからだ。


 その理由は不明だし、あくまでも推測でしかないが、そうでなければ連戦連敗の人族(ヒウマ)に自分の魂の一部でもある祝福を与えたりしないだろ?

 俺ならもっと早い段階で見切りをつけて他種族へ乗り換える…… それをしないという事は人族(ヒウマ)しか使えない力、つまり神族には使えないってコトだ。



「神那、神那ぁ、つまり鎧の真ん中を撃ち抜けばいいの?」

「あぁ、できるか?」

「うん多分……」


 まぁウォーリアスの時にもやってるからな、心臓剥き出しじゃ無ければ問題無いだろう。

 琉架のグロ耐性が低いって情報まで向こうに渡って無ければ良いんだが……

 もっとも、アイツの心臓の位置が魔人と同じという保証はない、妖魔族(ミスティカ)の“(コア)”みたいに体の中を自由に動かせるかもしれない。

 流石に体の外に置いてきた……って事は無いだろう。


『フッ…… フッフッフッ…… 大したモノだな……? たったこれだけの時間でそこまで見抜かれてしまうとは…… やはりお前を一番警戒していてよかった……』


 うわぁ…… 認めちゃったよ…… それともヤケクソか?


『だが遅すぎたな……? 今のお前にそれを実行するだけの力は残されていない……

 他の魔王達ではそれが出来ない事は既に証明済みだ……』

「それがお前の最大のミスなんだよ」

『なに……?』


「お前はいつの日か俺達と戦うことを想定してスパイを放っていた、そうでなければあれ程完璧な対策など立てられない」

『フッ…… 褒め言葉として受け取っておこう……』


 褒めてねーよ、だがいつも行き当たりバッタリなどっかの誰かさんに見習わせたい用意周到さだ、そこだけは評価してやる。


「スパイ…… 私たちの側にスパイがいたの?」

「あぁ、ずっと前からな」

「そんな…… 一体誰…… あ」


 琉架も気付いたな、そんな可能性がある奴はたった一人だ。


「そう、非常に単純な話だ、スパイは元勇者のジークだ」




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