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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
364/375

第358話 階段


---霧島神那 視点---


「だぁあああー!! イライラする!!」


 現在(バベル)第8階層、行く手を阻むのは魔人の群れ……

 右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても魔人! 魔人!! 魔人!!! 魔人だらけ!!!!

 因みに上からも魔人が降ってくる始末…… 足元から湧いてこないだけまだマシか。


「第3階位級 氷雪魔術『白冷神楽』ハクレイカグラ」


 一定範囲内の魔人の心臓を凍りつかせる。

 しかし範囲外の凍結を間逃れた魔人達は無視して突っ込んでくる、アイツら寒さを感じる感覚がない…… チッ!


 この圧倒的な物量…… 明らかに消耗戦を挑んできている、よほど俺の体力と魔力を削りたいらしい。


 一匹一匹は大した敵じゃない、『神血(ディヴァイレッド)』を使えば視界内にいる魔人の心臓を一斉に破壊することも出来る。

 しかし360度、あらゆる方向から殺到する魔人を一度に視界に収めるのは難しい……てか、不可能だ。

 俺にマリア=ルージュのようなカメレオン以上の視界と、猛禽類以上の超視力があれば塔内の魔人を一撃で葬れたかもしれない。

 しかし無い物ねだりをしても意味がない。

 いっその事、第1階位級魔術を身体に纏わせて突破するか? 純粋魔力を併用すれば長時間展開も可能だろう。


 だがこのプランは無しだ。

 俺の純粋魔力量は多分相当多い、しかし通常魔力量は魔王としては少なめだ。

 純粋魔力は増強剤だ、それ単体で使っても意味はない、古代魔術や禁断魔術なんかには純粋魔力のみを使用する魔術も在ったのかもしれない。

 しかしリリスが体系化した魔導魔術には純粋魔力オンリーの魔術など存在しない、だから通常魔力に混ぜて威力を増強して使ってる。


 つまりだ……

 通常魔力が切れてしまったら、たとえ純粋魔力が大量に残っていても使い道がない……

 まぁ門を開きし者(ゲートキーパー)だけは使えるから緊急脱出には使えるかもな。


「第4階位級 風域魔術『風爆』エアロバースト × 第4階位級 火炎魔術『皇炎』ラヴィス・レイム

 合成魔術『大爆発』エクスプロージョン」


 今度は効果範囲外の敵まで爆風でふっ飛ばすことが出来た、コッチのほうが効率は良いな。

 ただし消費魔力が上がった、合成魔術は燃費が悪い。


 ここに来るまでにもだいぶ魔力を削られた、コレ以上は節約したいところなんだが…… 仕方ない。


「『神血(ディヴァイレッド)』血刀・深淵真紅」


 周囲に群がる魔人の心臓から血液を調達して深淵真紅を作り出す。

 数は2本、二刀流だ。

 かつて師匠からダメ出し食らった二刀流だが、あの時とは決定的に違っていることがある。

 それは手にした剣が「血液」で出来ていることだ。

 それはつまり『神血(ディヴァイレッド)』で補助できるということ、これで俺は忍者を上回る戦闘技術を得られるハズだ!

 ズルじゃない、自分の能力を使ったんだから、全部ひっくるめて俺の実力だ。


 これで魔力をケチりながら進む、血液操作はあくまで補助だから魔力消費は少なくて済む、少なくとも高位魔術をぶっ放すよりは遥かにエコだ。

 エネ・イヴェルトの思惑になど乗ってやるものか!



---


--


-



 失敗した…… 腕が超疲れる!


 確かに魔力は節約できるが体力がガンガン削られていく。

 深淵真紅は同サイズの剣に比べてかなり軽く作られているが、それでも100匹200匹と狩っていれば負担も掛かる。

 俺はもともと完全魔術師タイプだ、師匠のスパルタのせいで近接戦闘も出来るけど体力はカスだ、短期決戦型の近・中距離戦を最も得意としている。

 持久戦とか無理!

 腕立て伏せ20回でギブアップするレベルだ、30分立ち読みをすれば腕がダルくなるレベルだ。


 明日は筋肉痛だな。




 迫りくる魔人軍団を二刀流で倒しながらなんとか第9階層へ到達した。


 結局殆どの魔人を皆殺しにしてきてしまった、もし今回の魔人が実体を持っていたら屍の山ができていただろう…… まぁ、今の時点でも俺の歩いた道は心臓を破壊して出た血液により血の海になってるが。

 この状況が世界に中継されてたらマズイな、恐怖の魔王のイメージが定着すること間違いなしだ。


「ハァ……」


 だいたいこの塔何階あるんだ? 10000階とかだったら帰って寝たい。


 周囲を見渡す、ここまでのフロアとは違い魔人は階段付近に集中している……

 今までならご主人様の帰宅を喜ぶ小型犬並みに尻尾を振りながら群がって来た魔人たちが完全に防衛の構えを取っている。

 もしかして次が最上階か? 琉架達の昇るスピードと神星が破壊された時間を考えるとその可能性は高いと思う……

 それは朗報だ。


 だがその前に大きな難関が立ち塞がっている……

 上のフロアに通じる階段上部…… そこには魔人がギッチリ詰まってる…… つーか巨兵型魔人もいる。


 …………


 普段の俺ならやる気をなくして誰かに押し付けるか、諦めて帰るかしてるトコロだ。

 だが今は違う! 俺の登場を嫁達が待っているんだ! それだけでモチベーションがうなぎ登りだ!


「うおおおおぉぉぉぉ!!」


 俺らしくもなく雄叫びなんか上げながら、文字通り血路を開くべく魔人の群れに飛び込んだ!



 ズドッ!! ズバッ!! ドスッ!!



 手前から一匹ずつ片付けていく、敵の密度が濃いからなかなか前に進まないが、少しずつでも確実に進んでいる……

 コレだけ敵が密集してるなら第3階位級魔術でも一気に吹き飛ばせたかもしれないな……

 ただ上の状況がわからないから迂闊には使えない、もし女の子たちを傷つけようモノならまた咎を背負うことになる。



 ユラ……



「ん?」


 半透明の身体の魔人の向こう側に、何か一瞬見えた気がした……

 ハッキリとは見えなかったが、ナニかがこの先に待ち受けている。

 フロアボスか? それとも門番的な奴か?

 もちろん敵とは限らない、しかしかなりデカそうだったし嫁ではない。

 だったら敵以外にはあり得ないだろう、先手必勝! 次に姿が見えたら心臓を一突きにしてやる。



 ユラ……



 きたっ!! ……ん?


 影は何かを構えるようなポーズを取っている、居合い斬りだろうか?

 まだだいぶ距離があるが……



 ボッ!!



 巨大な影が剣を抜き放った!

 俺達の間にいる魔人を切り裂きながら切っ先が俺の顔面へ猛スピードで迫ってくる!


「うおおぉぉぉお!!?」


 電脳世界の超人並みのブリッジで間一髪で躱す!

 ぐあぁ…… 階段でやったから腰が…… 腕が…… 肩が……


「む? カミナよ、何を珍妙なポーズを取ってる?」

「あ?」


 そこに居たのは筋肉魔王のジークだった……


「テメェ! この不能王!! 危うく死ぬトコロだったぞ!!」


 この野郎! 今さら勇者の使命に目覚めて俺を殺しに来やがったのか?

 だったら後輩勇者のブレイド同様、お前を返り討ちにしてお揃いの第三の乳首を作ってやろうか!?


「おい止めろ、不能王とか言うな、それが俺の二つ名になったらどうする?」


 はい決定!

 お前は今日から新・第4魔王 “不能王” ジークフリート・レーヴェンガルトだ!!

 リリスのコネクションを使ってこの名を世界に広めてやる!

 もちろん本当の二つ名を見れる白にも口裏を合わせてもらう!


「ところでカミナよ、勇者は……どうなった?」

「あんな奴のコトなんかどうでもいいだろ」

「むぅ…… まぁ…… な」


 ジークは不服そうな顔をしてる、しかし本当にあんな奴のことなどどうでもいい。


「それよりジーク、こっちにエネ・イヴェルトが来なかったか?」

「いや、俺は見ての通り魔人の処理にあたっていたからな……」


「マスター!!」


 お?


「分身体での出迎えで失礼致します」


 ジークの背後からミカヅキが現れた、スカートの両端をちょっと摘まんでお辞儀をする貴族風の挨拶で出迎えてくれた。

 これだよ…… 禁域王の出迎えはやはり女の子でないと…… むさ苦しい筋肉の塊とか誰得だよ?


「ミカヅキ無事か? 怪我は無いか?」

「はい、私は無事ですが……」


 無事ですが……か、やはり……


「エネ・イヴェルトが現れたのか?」

「はい、現在リリス様がお1人で相手をされてます」

「1人で?」

「はい…… 残念ながら我々の攻撃は何一つ通じないのです、その上 敵の攻撃力が高すぎて下手に近づけません、フォローはしてるのですが……」


 …………ん?


「ちょっと待った、エネ・イヴェルトは魂の状態じゃないのか?」

「? いえ、全身に鎧を纏ってます…… そう言えば顔はエネ・イヴェルトの妹であるエネ・イシュタのモノだと言ってましたか……」


 エネ・イシュタ? アイツの言ってた人形の事だろうか?

 つーか動けるのか? いや、動けて当然か、魂だけで神星の操作は出来ないだろ…… しかし……


「マスター! お急ぎください! このままではリリス様が……!」


 そうだった! こんな所でじっくり考えてるヒマは無い!

 断片的な情報で攻略法を考えるより、直接目で見た方が手っ取り早い!




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