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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
361/375

第355話 行方


 キッ… キッ… キリシマ・カミナぶっ殺ぉーーーぉぉぉす!!!!!!


 ~~ぉぉす……


 ~ぉす……



 最上層階を目指す俺の耳に遠くから勇者の怨嗟の叫びが聞こえた気がした……


「あぁ、コレコレ♪ これでこそ勇者だ」


 アイツと友情とか冗談じゃない、普通の友人関係ならまだいいよ、友達いないから普通がよく分からないけど…… さっきのアレは絶対普通じゃないよな?


 後々のことを考えると今ここで断ち切っておくのがベスト!

 元勇者はティマイオスに立入禁止の法律を作ろう、ついでにジークも追い出せる。

 そうしないと勇者が「ティマイオスに住む!」とか言い出しそうで……

 もちろん拒否する、当然だな。

 だがそれをするとアイツはヤンデレ化しそうで……

 女のヤンデレでも怖いのに、男のヤンデレとか滅多刺しにされるフラグにしか見えない。


 しかしこれでアイツも魔王との友情が成り立たないことを理解しただろう。

 これでいい、アイツはいつも元気に健気に殺す殺す言ってるのが一番お似合いだ。


 …………


 次にあった時は今までみたいにアイツを叩き潰してストレス解消のサンドバックにできる♪


「その為にもエネ・イヴェルトをどうにかしないといけないんだが……」


 奴の残していった厄介なトラップのせいで無駄に時間を使ってしまったが、そもそもエネ・イヴェルトの目的ってなんなんだろう?

 ずっとシニス世界の神星だと思ってた…… それは終末戦争の頃から変わってない……


 しかしさっき見たエネ・イヴェルトは神星を重要遺物と見ていないようだった……

 デクス世界とシニス世界の神星に価値の差があったとしてもあの態度はおかしい。

 こちらの神星を失ったら、向こうの神星を手に入れることが出来なくなる、にも関わらずまるで捨て駒のように語っていた……


 つまり神星より優先順位が高い獲物がある……と、いうことだ。

 それはやはり……


 『終焉の子 エネ・イヴ』


 ……だろうな。


 それなら「昔から変わらない」ってセリフとも符合する。


 だから連れて来たくなかったんだよっ!!

 ティマイオスかラグナロクに隠しておくべきだった!


 それなのにわざわざ敵地に連れてくるなんて!

 正にカモネギ!

 デブの部屋をピザ持参で尋ねるようなものだ、食べてくれと言ってるようなもの…… いや、必死に止めたって食われる!

 俺の部屋にスクール水着姿(旧型)の琉架を派遣するようなものだ、食べてくれと言ってるようなもの…… いや、必死に止められたって食べちゃう!


 エネ・イヴェルトとエネ・イヴ……


 互いにこの世界に残った最後の神族だ、もしかしたらエネ・イヴの身体を乗っ取るつもりなのかもしれない、アイツの魂が入り込める肉体は他に残ってないだろうし……

 そう考えれば終末戦争時よりもエネ・イヴに執着する理由も分かる。


 しかし解せないのはアイツがエネ・イヴの生存をいつ知ったのかだ。


 俺達の(バベル)潜入時に知ったのだとしたら、作戦変更がスムーズすぎる気がする……

 だいたいエネ・イヴは復活したばかりだ。

 あと可能性があるとすれば…… ラグナロクにスパイでも紛れ込ませていたか…… 可能性は低いか、魔王グリムや竜人族(ドラグニア)のヴァレリアが目を光らせてたんだ、祝福者が入り込む隙間など無かっただろう。

 まぁ祝福者に実感がなければ見つけることも出来ないかもな……


 今さらどうだって良いことなんだが、こちらの手の内を知られているのといないのとでは大きな差がある。

 俺が足止めをされた理由もよく分からない…… 確かに多くの魔王を倒してきた俺は「最強の魔王」と認識されても不思議じゃない、だが個人的に最強の魔王はやはり琉架だ、時間停止は俺でもどうしようもない。


 もしかして…… 俺の力を上手い具合に使えば、魂の状態のエネ・イヴェルトを倒す方法があるんじゃないか?

 だとすれば敢えて俺を遠ざけようとしたのも頷ける……


 いや、あくまでも可能性だ、この考えに固執するあまり視野が狭くならないよう気を付けよう。


「しかし……」


 もう5階層分は登ってきたのに、何もないな…… この塔からっぽだ。

 魔人がギッチリ詰め込まれてて先に進めない……なんて事もない。

 アイツはホントに俺を足止めする気があったのだろうか? まさか俺に勇者は殺せないと確信してたのか? だとしたらエネ・イヴェルトはただの馬鹿だ。


 大丈夫……だよな?

 エネ・イヴェルトは俺の手の内を知ってるフシがあったが、全てではない。


 だからきっと……









---



---有栖川琉架 視点---


 数十分前―――

 (バベル)最上階層―――



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 『執行官断罪剣(エクスキューショナー)』の発射は成功した……と思う。

 空一面、煙が覆っていてどうなったのか目視確認できない。

 距離がありすぎるせいかな? 緋色眼(ヴァーミリオン)でも見通せない。


 魔王6人による共同作業で破壊できなかったら、もうどうしようもない……


「ぷはぁーーー!! 疲れたんじゃ~!!」

「あぁ…… 1200年振りに倒れそうなくらい働かされた…… 割に合わない」


 ウィンリーちゃんとアーリィさんがその場に座り込んだ、だいぶ消耗したらしい。


「はぁ…… ふぅ……」

「ん…… ここまで魔力を消費したのは魔王になって初めてです」


 続いて白ちゃんとミラさんも……


 あれ? 私は?

 そんなに消耗した気がしない…… 残り魔力の残量とか正確には分からないけど、立ってられない程の消耗じゃない……

 私とミラさんの能力値はそんなに離れてなかったと思うけど…… う~ん……


 私は周辺警戒していたせいであまり集中してなかった気がする…… そのせいで消費量に差がついちゃったのかな?

 だとしたらみんなに悪いコトしちゃった。


 私もみんなに倣って地べたに座り込んじゃおうかな?

 神那が言ってた! こういう事が「空気を読む』ってコトなんだよね?


 え~と、一応ハンカチを敷いてその上に……


「うっ……!」

「うん?」


 フラ……


 私達の先頭に立っていたリリスさんが蹌踉めくと、後ろに倒れ始めた……

 あ、あぶない。


 ガシッ


 あ…… 受け止めちゃった……

 まぁ仕方ないよね? 放っておけないし。


「大丈夫ですか?」

「あ……ありがとう…… ルカ……」


 リリスさんの顔色が悪い、一番負担が大きかったんだ。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……



 空を覆う煙が少しずつ晴れてきて、その先が薄っすらと見えてきた……

 あれ……? 何か一瞬丸いモノが…… 失敗かな?



 サァァァ―――



「おぉ~~~♪」

「や……った」

「すごい……」

「八割くらいは吹き飛ばせたでしょうか?」


 煙が晴れるとそこには…… まるで三日月の様な形に大半をえぐり取られた神星が姿を現した。

 あ、ミカヅキさんとは関係ないです。


「エネ・イヴ様! どう……ですか?」

「はい、アレならば神星の機能の殆どを破壊できたと思います、恐らく次元連結機能も」

「ッ! …………ハァ、なんとか世界崩壊の危機は脱せたわね……」


 終わり? 終わったの?

 そう言えば神星に浮かんでいた映像はノイズが酷くて見えなくなっちゃったけど下はどうなったんだろう?

 すぐに神那の元へ…… と、言いたいトコロだけど、みんなお疲れの様だ、直ぐにってワケにもいかなそう……

 私だけ先に行く……ってのもムリかな? なんか裏切り者っぽくて。

 は~れむ協定に違反した者には血の制裁が待っている…… 私は協定を結んだ記憶が無いけど、極力ルール違反は避けるべきだよね? 協定の話をしてる時のみんなの目ってチョット怖かったから……


「お嬢様……」

「ひぅっ!? あ…… ミカヅキさん?」

「どうかされましたか?」

「な……なんでもないですじょ! それよりそっちは?」

「はい、終わりました」

「終わりました……って」


 遠くの方ではジークさんがまだ悪戦苦闘している…… 終わったのは自分の担当範囲だけなんだ……

 まぁジークさんの方ももうじき終わりそうだからイイのかな? 男の人だからプライド傷つけちゃうかもだしね、うん。


「とにかくこれで世界の崩壊が…… あれ?」

「どうされました?」

「うん…… 床の下…… 地上に白い塊みたいなのがポツポツと見えるけど…… アレって次元トンネルなんだよね?」

「!?」

「えっ!?」


 みんなで一斉に半透明の床の下を覗き見る、白いポツポツは消えることなく未だに広がっているようにも見える。


「そんな…… なんで……?」


 どうやらエネ・イヴ様にも理由は分からないらしい、つまりまだ終わっていない……


「エネ・イヴ様……」

「考えられる可能性は一つだけです…… 次元連結装置を神星から持ち出したんです」


 そんな…… それじゃ捜索範囲はデクス世界全体? あと1~2時間でそれを見つけるなんて……




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