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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
350/375

第344話 勇者 vs 第3魔王3 ~本領発揮~


「うおおおおぉぉぉぉおぉぉぉぉおおぉぉっ!!!!」


 勇者は勢いよく甦り雄叫びを上げた。


 超ウルサイ……


「さあ決着をつけるぞキリシマ・カミナ!!」

「いや、勝手に話を進めるな、質問に答えろよ、なんで俺を敵視してたんだ?」

「そんなもん関係あるかっ!! 俺はお前が嫌い!! 理由はそれだけあれば十分だ!!!!」


 正当性の放棄…… ガキじゃないんだからもう少しマシな動機は無かったのか? そんなだから勇者は世界中で嫌われるんだよ。

 次の50代目勇者は可哀相だな、先代であるこのバカが負の遺産を何千倍にも膨らませてしまったから……

 きっと勇者に選ばれても名乗り出ることなく、ひっそりと人と関わらずに生きて行くのだろう…… 勇者の定年である25歳まで…… 俺ならそうする。


 いや…… もし今日エネ・イヴェルトを倒せれば次の勇者が任命される事は無いのか?

 つまりこのバカは最後の勇者として歴史に名を残す……ってコトか。

 最後かどうかは関係無く歴史に名が残りそうだな…… 良くない意味で。


「ふぅ…… 分かったよ、これ以上は何を言っても無駄みたいだな」

「ようやく観念したか!!」


 まるで俺が待たせてたみたいな言い方だな? お前が質問に答えないからだろ?


「今こそ…… 長年にわたる俺達の因縁に終止符を…… 正義の裁きを魔なる者へ!!」


 勇者は暗黒臭漂うセリフを吐くと、『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』を天高く掲げた!


「『我は勇者!! 生涯DTを貫く者なり!!』」



 ヒィィィィィィイイィィィイィイィィッ!!



 勇者の声に呼応するように、『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』は唸りを上げた!


「あ、ちょっとタンマ勇者、大事な事を伝え忘れていた」

「貴様!!? この期に及んで何を!!?」

「スマンスマン、でも結構大事なことなんだ、悪いんだがその剣の超振動、一回止めてくれないか? このままだと話し難い」

「イヤだ!! 次に発動させる時、邪魔する気だろ!?」

「そんな事しないって、ちゃんと発動を待つからさ、何だったら世界中に宣言したっていい、俺はお前の武器発動を邪魔しない、絶対に……」

「………… チッ! まぁイイだろう、特別だぞ?」


 ヒュイイィィィィィン…………


 『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』は停止し、また塔内に静寂が訪れた。


「伝えたい事があるなら早く言え」

「あぁ、実は伝えたい事ってのはその『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』についてなんだ」

「??」

「勇者は覚えてるか? 『愚か成り勇者よ(フーリッシュ・ブレイブ)』を?

 ほら、お前が魔王ジャバウォックに剣を折られた時に、丸腰になったからって仕方なく貸してやったナイフを?」

「うぐっ!? お……覚えてるよっ!!」

「あのナイフを作ったのって実は俺なんだ」

「は?」

「それで作者には命名権が与えられるんだ、それでその時の気分で『愚か成り勇者よ(フーリッシュ・ブレイブ)』って名付けたんだ。

 お前は『勇者の願い(ウィッシュ・ブレイブ)』と聞き間違えてたみたいだが、正確にはフーリッシュ・ブレイブだ、愚か成り勇者よって意味」

「んなっ!!?」

「それとその剣、『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』なんだが、それに関してもお前は同じ勘違いをしている、意味は『大いなる勇者』ではなく『くたばれ勇者』だから」

「っっっ!!!!///」


 うわっ! 真っ赤になった、羞恥心あったんだ?


「それともう一つ、非常に重要なコトなんだが……」

「まだあるのか!!?///」


 うん、まだあるの。

 大丈夫、これでトドメだから。


「『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』の起動用パスワードなんだけど…… 以前『DT』がどういう意味だか俺に聞いたよな?」

「それが…… どうした?///」

「確かあの時は…… 「穢れを知らぬ男」「生まれたままの純粋な男」「30で魔法使い」って教えたかな?」

「「30で魔導王」じゃなかったか?」

「そうだっけ? まぁ大した違いは無いしこれは嘘じゃない、ただもう一つ重要な意味があったんだ」

「もう一つの意味?///」

「うん、ハッキリ言うと『童貞』って意味なんだ、てかこの意味が最も一般的だ」


 一部地域(電網世界)でだけど……


「なぁっ!!? そ…それじゃ!!?」

「うん…… つまり勇者は世界中に向けて「死ぬまで童貞を貫きます」って宣言していたワケだ……

 ちょっとした遊び心のつもりだったんだけど…… こんな事になってゴメンね?」

「ぐぐぐぐぐぐっぐぐっ!!!!///」


 勇者は膝から崩れ落ちた…… おぉ、耳まで真っ赤だ。


「さて、伝えたかったことは全て伝えた、それじゃ再開しますか。

 さっきの約束通り、お前が『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』を再起動するのを邪魔せずに待ってるよ。

 それでは張り切ってどうぞ♪」

「くそぉっ!! くそぉっ!! くそぉっ!! この悪魔めぇぇぇ!!!!///」


 全世界同時生中継はそっちが手配したんだから俺は悪くない。


「そう言えばお前は出会った頃から俺のコトを悪魔呼ばわりしてたっけ? そんな奴に手心を加えてやるほど俺は聖人君子じゃない、つまりこれもお前の身から出た錆だ。

 大した理由も無く一方的に人を敵視するからそういう目に合う、人を呪わば穴二つって言うだろ?」


 俺の分の墓穴は浅いけど、お前の分の墓穴は随分深くなっちゃったな?

 まぁそんなに落ち込むなよ? 命に拘わるようなトラップじゃないだろ?

 ちょっと世界中に生中継されてるライブで生涯童貞宣言するだけだ。


「許さん…… 貴様だけは絶対に許さんぞぉぉぉ!!!!」

「何を今更…… 散々殺す殺す言ってきたじゃないか」


「『我は勇者!! ……っく/// しょ…生涯DTを貫く者なりぃぃぃ!!///』」


 勇者は恥を凌ぎ、恐らくは生涯最後の『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』起動を行なった。

 しかし……


 シーン…………


「あぁ~…… パスワードの最中に突っ掛ったり、どもったりしたからエラーが出たな、ハッキリと大きな声で正確に発音しないと承認されないぞ?」

「くそおおぉぉぉぉっ!!!! 『我は勇者!! 生涯DTを貫く者なり!!///』」



 ヒィィィィィィイイィィィイィイィィッ!!



 勇者の覚悟に呼応するように、『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』は再び唸りを上げた!


「キリシマ・カミナぶっ殺す!!」


 勇者は涙を流しながら、勇者に相応しく無いセリフをのたまった。

 さて…… 勇者イジリはココまでか…… ここからは真面目にやらないと命に関わる。


「死ねぇぇぇぇーーーーッ!!!!」


 勇者は躊躇や迷いを一切感じさせない斬撃を放ってきた。

 中継手配したのソッチだよね? 完全に忘れてるじゃないか……



 ギィィィン!!



 塔の外で調達した血液を元に、俺の黒歴史『血刀・深淵真紅』を創り出し迎え撃つ。


「チィッ!! 『封魔剣技・改!! 光速剣・乱舞』!!!!」



 ギギギギギギギィィィン!!!!



 おぉっ!? 自分で受けてみると結構すごいなコレ!? 勇者1200年の研鑽か…… もしかしてジークの所為か? もし怪我したらアイツに仕返ししてやる!



 ギャイイィィン!!



 最後の大振りの一撃をぶつけ合い、その反動でお互いに後方へと飛ぶ。


「ぐぐぐ…… なんでだッ!!?」

「あん?」

「なんで『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』でお前の剣は圧し折れない!!?」

「はぁ…… さっきも言っただろ? その『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』は俺が作ったんだ、当然振動数なんかも熟知している、だからこっちも同等の振動を剣に与えて威力を相殺したんだ」

「貴様卑怯だぞ!!」

「他人に剣貰っといて何て言い草……」


 さすがの俺も勇者とガチバトルするとは思って無かったさ。


「だったらコレならどうだ!! 光輝魔法『光神剣(プラズマ・ソード)』!!!!」


 勇者の掲げた『くたばれ勇者(ダイ・ブレイブ)』が眩い光を纏う!!

 超振動と魔法剣の併用か……


「勇者最強の一撃!! 一撃必殺の究極奥義!! その一撃は山をも砕き!! その一撃は海をも割る!!

 歴代勇者たちの研鑽と! 怒り、悲しみ、無念、そして……」


 口上が長い……


「第7階位級 火炎魔術『炎弾』ファイア・ブリッド」

「今!!!! 全ての決着をこの瞬か……うおおぉぉぉおぉぉ!!??」


 勇者は俺の放った炎弾を大袈裟に避けた…… 避けた?

 さっきから気になってたんだが、なぜ覚醒顕現しない? すれば魔王の魔力由来の攻撃は全て無効化できるハズ……


「貴様っ!! このタイミングでの攻撃は最大のタブーだぞ!!」


 なぜお前がデクス世界の変身ヒーロー物のタブーを知ってる? シニス世界にはそんなアホみたいなルールがあったのか? 少なくとも俺の知る限りではそんなアホはいないハズ……


「お前…… 今までそれを使った時、相手は待ってくれたのか?」

「ジャ…… ジャバウォックは待ってくれた」

「アイツは『狂った魔王』だぞ? その経験を他の奴にまで求めるな」

「ぐっ……!!」


 やはりどう考えてもおかしい…… 覚醒顕現する気配が無い、そりゃしないでくれるならこんな楽な仕事は無い、いつもの様に勇者を雑に扱っていれば勝手に泣いて逃げるに決まってる。


 確かに第1魔王vs第2魔王の戦いに割って入った勇者はいつもの勇者っぽくなかった……

 もしかして…… コイツは自力で覚醒する事ができないのだろうか? ならば……


「戦闘中に考え事とは余裕だな!? だが!! 隙ありぃぃぃ!!!! 死ねぇぇぇ!!!!

 封魔剣技・終の一撃!!!! 超光輝分断剣(プラズマ・ブレイザー)!!!!」


 俺が考え事をしている隙に勇者が襲いかかってきた、やれば出来るじゃないか。

 ただし…… やっぱり攻撃前のセリフが長すぎる。


 『神血(ディヴァイレッド)



 ビシッ!!!!



「なっ!!??」


 俺は『神血(ディヴァイレッド)』で勇者の血液を止め空中に縫い付けた。

 やはり能力が効くか……


「『弐拾四式血界術・捌式『蓮華・鎧通し』』」



 ズドオオオォォォォッン!!!!



「グブォオオッオオォォオ!!!!」


 勇者の腹を鎧越しに殴りつける、すると勇者は派手に嘔吐した……



 まさかこれで終わりじゃないよね?




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