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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
340/375

第334話 起動


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「?」


 アレ? なんか揺れてる?

 震度1以下…… 無視してOKなヤツだ。


 …………


 ホントに無視していいのか? このタイミングで地震って、嫌な予感しかしない。

 しかもなんか長い、いつになっても止まらないぞ? まるで新しいスタンド使いが登場した時みたいに、いつまでもゴゴゴゴいってる……


 まさか世界崩壊のカウントダウンが始まったんじゃないだろうな?

 口には出さない…… 現実になりそうだから。


「揺れてる……よね?」

「地震? 神那クン、今度は何したの?」


 当たり前の様に俺の所為にされている…… 先輩は俺のコトを一体なんだと思っているのだろう? 魔王だと思われるのは仕方ない、事実だし…… だがいくらなんでも天変地異を起こすような力は俺には無い。


「この世のトラブルが全部俺の仕業だと思わないで下さい」

「ホントに? 今アルスメリアで起こってる事件も辿って行けば神那クンに原因があるんじゃないの?」

「…………」


 いくら俺の日頃の行いが悪くても、2400年前の事件まで俺の所為にするな。

 もしこの事件の原因がエネ・イヴ復活に関する事だったら、俺にも少なからず原因があるかも知れないが……


「この地震もアルスメリアの事件と関係がある……とか?」

「地球の裏側で起こった地震が大和で観測されるワケないでしょ? もしそうなら今頃アルスメリアは沈んでるよ」

「…………」


 今アルスメリアには俺の嫁達が居るんだ、そんな事になってたまるか!

 とにかく伊吹を先輩に預けて、俺はとっととアルスメリアへ…… あれ? さっきから伊吹がやけに静かだが……?


「…………」


 伊吹は遠くを見たまま固まっている、なんだ? 俺レベルのイケメンでも見つけたのか?


「伊吹?」

「おにーちゃん…… アレ…… 何だと思う?」

「アレ?」


 伊吹の見つめる方向…… そこには薄っすらと塔のようなモノが見えた。


 え? ナニアレ? 俺が界外逃亡している間にあんなモノが建てられていたのか?

 しかし古代様式の石造りの塔に見える…… 奴隷を用いて数百年掛けて作るような感じの…… 最近の建築技術はスゴイな、数ヵ月であんな巨大建築物を作り上げるとは……!


 んなワケねーだろ! だってさっきまで無かったもん!

 あの塔は突然現れたんだ! 塔の天辺は雲にぶっ刺さってる、あれ相当デカいぞ?


「もしかしてアレが(バベル)? なんで? アルスメリアにあるんじゃなかったの? なんで大和に現れるの?」

「落ち着け、もしアレが本当に(バベル)なら神星と同じく高位次元に隠されていたんだろう、理屈としてはシニス世界の幻の塔と同じだ」


 たぶん……


「幻の塔…… それじゃあの塔もこの世界のどこからでも見えるってコト?」

「確証は無いけどな」


 そうでなければ唐突に現れた説明ができない。


「あの…… 神那クン、伊吹ちゃん、二人だけで会話しないで? (バベル)って何の話? 私も混ぜて……

 ……って!!? ちょっ!? ふ…二人とも! 上! 上見て!!」

「何ですか先輩? 上?」


 空を見上げてみる、いつの間にか雲の切れ間から青空が覗いている…… !?

 今一瞬何か見えた…… 何だ……? 何かある…… 雲邪魔だな! ウィンリーが居れば簡単に払えるのに!


「ちっ!」


 神魔制剣(テオフィルス)を取り出し構える。


「おにーちゃんナニする気? 魔術で雲を払うの?」

「まぁ見てな。

 第4階位級 風域魔術『風爆』エアロバースト 純粋魔力(ハーティリー)増強(ブースト)


 風玉を上空に向けて放つ、それが雲に消えた所で解放してやると……



 ブワアアァァァァ!!



 空を覆っていた雲は全て吹き飛ばされ、視界内には雲一つない空が広がっていた。


「うぉお! 何だこの威力!? お姉様の『増魔(チャージ)』みたい!」


 まさにそれだ、魔力を上乗せするか、純粋魔力を上乗せするかの違いはあるが、メカニズムは同じだ。

 これはいよいよ名実ともに最強の魔術師を名乗ってもいい頃かな? いや違うな…… おれを呼ぶなら大魔道士とでも呼んでくれっ!!! (※ただし神魔制剣(テオフィルス)装備中に限ります)


 そして雲一つなくなった空には……


「ナニアレ……??」


 空には形容しがたいモノが浮かんでいた…… 巨大な玉だ。

 表面は虹色で常に色が変わっている…… 無理矢理言葉にして説明するなら中身がぎっしり詰まったシャボン玉……っていうところか。

 かなり巨大だ、輪郭がぼやけていて距離感が掴み辛い…… どれ程上空に浮かんでいるのか分からないな、雲の上に在った事を考慮しても直径数百kmはくだらないだろう。


「まさか…… アレが神星……なのか?」


 突如現れた幻の塔が(バベル)だとすれば、あの球体が神星である可能性はかなり高い。

 それはつまり……


「あ、ダメだなコレは、世界終わったわ」

「ちょっ!! 神那クン!? 何いきなり諦めのコメント出してるの!?」


「シニス世界とデクス世界が衝突して世界が崩壊するなら逃げ場は無い…… いや…… 異次元空間であるスカイキングダムに逃げ込めばもしかしたら助かるかも知れない!

 あそこならティマイオスごと逃げ込むことが出来るだけの広さがある! スカイキングダムの支配者とも同盟を結んでるし試してみる価値はある!

 そうと決まればさっそく嫁達を回収して避難だ! 新・第4魔王は適当な理由を付けて置き去りにしよう!」


「おぉい! 霧島神那!! 何いきなり具体的な脱出プラン立ててるんだよ! その前にするべき事があるだろ!」

「分かってますって先輩、俺と先輩の仲だ、特別に脱出プランに乗せて上げますよ?」

「現実逃避もいい加減にしろ!!」


 ビシッ!!


「いでっ!」


 チョップされた、ナニを言ってるんだろうねこの先輩は? 今地球上で俺以上に現実と向き合ってる奴が他にいるだろうか?

 とは言え、ボケるのも大概にしておくか。


「神那クン…… とうとう刻が来たんだよ、今こそ立ち上がる刻だ!」

「え? ナニ言ってるんですか先輩? もしかして例の病を発症したんですか? 気をしっかり持って下さい」

「やかましい! 全魔王の半数を倒してきたキミなら、諦めるよりも先に出来るコトがあるでしょ!」


 先輩が無駄に熱い、人ごとだと思って簡単に言ってくれる……

 確かに俺の名前はカミナだけど、某ロボットアニメのアニキキャラみたいな熱さを俺に求めるのは間違っている。

 それぐらい付き合いの長い先輩なら分かってるだろ? 俺をミクロ単位まで分解しても“熱血”なんて成分は0.01mgだって含まれていない事を……


 だがまぁ言いたい事は分かる。

 過剰な期待をされるのは嫌なんだが、全てを諦める前に出来る事をするべきだ。


「分かってますよ先輩、俺だって世界が滅びるのを指をくわえて見ているつもりはありません」


 そんな事をしたら女の子たちからの評価が下がる、やれる事を全てやるフリ(・・)くらいはしないとな。


「今ならまだ間に合うかも知れない、ただし俺が無理だと確信した時はさっきの脱出プランを実行するかもしれませんよ?」

「キミが確信したのならきっと間違いは無いんだろうね、神那クンはアホの子だけど正しい判断ができると思ってるから」


 先輩にアホの子だと思われてたのか…… なにげにショック。

 それに俺の判断をそこまで信用されても困る、俺だってたくさん失敗してきたからな。


 しかし直径1000kmの天体か…… どれだけ反物質が必要になるか…… 血液の予備弾倉代わりに魔物でも連れて行きたいトコロだがそこら辺に居ないかな? 最悪ジークの血を使っちまうか?



 プルルルルル♪



「ん?」

「アレ? 電話? 知らない番号だ…… どうしよう……」


 伊吹の携帯に着信だ…… バカな! 携帯電話って相手から掛かって来る事があるのか!? 俺の携帯は大体発信専用なのに!


「出てみろよ伊吹、誰からか見当は付くけど……」

「??」


 ピッ


「もしもし? ………… あぁリリスさん、はい、居ますけど…… ちょっと待って! すぐに代わりますから!

 おにーちゃん電話! リリスさんから!」


 やはりか……


「もしもし?」

『カミナァ~~~ア! はやく来てぇ~!』


 いきなりの涙声…… 「手出し無用!」とか言ってたイケメンリリスはもう死んだのか。


『大変な事が起こってるのぉ~! はやく来てぇ~!』

「分かってる、こっちでも(バベル)の起動と神星の顕在化は確認した」

『? そっちでも?』

「多分シニス世界の幻の塔と同じ理屈だ、世界中どこに居ても見えるみたいだ。

 それで? まだ間に合うのか?」

『え……えぇ、エネ・イヴ様が言うには、完全に実体化するまではまだしばらく猶予があるそうよ、それまでに神星を破壊できれば……』


 神星の破壊……か、簡単に言ってくれるがそれはかなり困難な作業になる。

 エネ・イヴェルトだって黙って見てるハズ無い、それに確実にアイツ(・・・)が待ち構えている……


「分かった、とにかく直ぐに向かう」

『頼むわよ? 直ぐに来て! 10秒以内ね!』


 プッ ツーッ ツーッ


 ………… 何かリリスが幼稚化してた気がする……

 取りあえず10秒は無理、もう5秒経っちゃったし。


「俺はコレからアルスメリアへ向かいます、先輩は伊吹のコト宜しくお願いします。

 まだその辺に魔人がうろついてると思うけど、気を付けてくださいね?」

「大丈夫よ、伊吹ちゃんのコトは任せて、神那クンも頑張ってね」


 やはり女の子に送り出してもらうのはイイなぁ…… 例え相手が先輩でもモチベが上がる。


「それともしダメだと確信したらすぐに私たちを迎えに来てね? 一か八かの脱出プラン、私も乗るから!」

「…………はい…………」


 ちゃっかりしてるなぁ…… まぁそれでこそサクラ先輩だ。




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