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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
338/375

第332話 赤い雲・前編


「下手すれば自爆だな」

「自爆?」


 何げない呟きを拾われてしまった。


「いや、ちゃんと対策を立てなきゃ爆発に巻き込まれて死ぬ……かな? って話さ」


 だいたい神星がどんな形で顕在化するか分からないからな、もしかしたら顕在化した途端、地面のに落ちてくるかもしれない…… 海に沈むかもしれない…… そんな事になったら無闇に爆破解体なんかできない。

 そんな事になったら大陸が沈むか、大津波で沿岸部の街が幾つか消えるか……


 要するに今の状態では神星を破壊するって前提で話を進めるだけ無駄だ。

 むしろ(バベル)を起動させないようにするのが重要だ。


「そんなのダメ! 絶対ダメだからね! 自己犠牲とか神那っぽくない!」

「お……おぅ……」


 自分でも分かってはいたが、琉架にまでそう思われていたのか……

 俺って結構、自己犠牲で魔王と戦ってきたんだがなぁ…… 本質を見抜かれていたか。


 だが琉架がいてくれれば比較的安全に神星の破壊はできそうだな、俺と琉架のペアならどんなトラブルでも乗り越えられる!

 これはもう結婚するしかないな!


「それじゃ何はなくともデクス世界の状況を確認するか」

「え?」

「ん?」

「え~っと…… カミナ…… 手伝ってくれるの?」


 リリスが顔色を窺うように聞いてくる、初めからそのつもりだったクセに白々しい……

 まぁ大見得を切ったのに、その舌の根も乾かぬうちに救助要請など出来ないよな?

 だからと言ってイジワルして変にプライドを刺激すると「一人でやるから手出し無用!」とか言い出し、その結果被害が拡大しても困る。


「ま、デクス世界生まれの身としては放置しておけないからな」

「あ…… ありがとう……///」


 今の俺、イケメンだろ? 惚れてもいいぜ?


「それじゃ私も、デクス世界生まれだから神那と一緒に行きます」

「………… 白も」

「では私も……」

「あ、私も……」「我も我も♪」「ぁの……わた……っ」


 俺のイケメンっぷりに女の子たちが次々と参加表明、まったく♪ 可愛い子猫ちゃん達だぜ♪


「では俺も参加させてもらうか」

「…………」



 最後の最後で魔王に成り立ての新米筋肉魔王が滑り込んできた……

 そういえばコイツここに居たんだな…… 割と本気で忘れてた。


 ナシナシ! 俺のイケメンパワーが花を咲かせ、女の子たちを蝶のように引き寄せたつもりだったが、一匹蛾が混じってた気分だ。


「言っちゃあ何だが、ジークは無理しなくていいんだぜ? まだ左眼も開けられないだろ?」

「心配無用だ、いずれこの時が来るだろうと思い準備していたからな」


 するってーとナニかい? 元勇者様は魔王の力が継承されることを最初から予見していたのか?

 まったく、勇者の風上にも置けん奴め。

 まぁいい、例え魔王になり不老不死を失おうとも、お前の役割は前と変わらず肉壁な。


「さて…… 先に言っておくけど、伊吹は連れてけないからな?」

「またかよ! このドーテー野郎!」


 だからそれ止めろ! 花も恥じらう乙女がそんな言葉使うんじゃねー!


「行き先はデクス世界のアルスメリアだ、俺といたらお前までネット上でディスられるぞ?

 ただでさえ俺の妹なんだから」

「チッ! おにーちゃんの日頃の行いが悪いせいだ!」


 チッとか言うなよ、俺は日々真面目に魔王やってるだけだ、俺の評価が低いのは俺が悪いんじゃない! 世間が悪いんだ!


「せめて行き先は選ばせてやるよ、ティマイオスで留守番してるか、一度大和へ帰るか」

「はぁ…… 一度実家に帰るよ、暇つぶし何も持ってこなかったから、おにーちゃんのパソコンのフリーセル飽きた」


 暇つぶしくらい持ってこいよ、お前はずっとウィンリーを愛でて、琉架にベタベタしてるつもりだったのか?

 あわよくば白にまで手を出そうとしてただろ?

 みんな俺の嫁だからお前にはやらんぞ?


 但し今度暇な時に、このフリーセルマスター・カミナが直々にお前の相手をしてやろう! もし我に勝てたらマスターの称号を授けてやってもいいぞ?


「あの……」

「ん? ……あ」


 遠慮がちに声を掛けてきたのはエネ・イヴだった、そうだ、彼女をどうするか……

 普通に考えればこのままラグナロクで匿ってもらうのが一番安全だ、ティマイオスで引きこもってもらうのも悪くない。


 だが俺の考えていたコトと、彼女の考えていたコトは全く違っていた。


「私も…… あちらの世界へ連れて行って貰えませんでしょうか?」

「え? デクス世界へ?」


 そんなのリスクが増えるだけで得なことが一つもない。

 もしドコかでエネ・イヴの生存をエネ・イヴェルトに知られでもしたら、余計な争いの元だ。


 だが彼女はエネ・イヴェルト関係の出来事を解説・推理できる、これは例え旧世代魔王でも出来ないことだ。

 しかしだからといって一緒に連れて行くことのメリットにはならない、知りたいことがあったら戻ってきて聞けばいいだけだからな。


「分かりました! エネ・イヴ様のことはこの私が命に変えてもお守りします!」


 ……と、俺が最善策を考えてる隙にリリスが安請け合いをした……

 お前が命に変えてもすべき事はエネ・イヴェルトの抹殺だろ?


 女は感情の生き物…… なんて言葉を聞いたことがあるが、コイツの場合はただの行き当たりばったりだ、たまに理性的になることもあるが……


「ありがとうリリス、よろしくお願い致しますね?」


 既に話は纏まってしまった……


「はぁ…… 仕方ない、一旦二手に別れよう、俺は伊吹を連れて一度大和へ戻る、リリスはみんなを連れてアルスメリアのセーフハウスへ行ってくれ」

「セーフハウス? 私達が1週間二人っきりで過ごしたヒミツの場所?」


 おい、その言い方止めろ、なんかイケナイコトしてたみたいじゃないか。


「あそこならアルスメリアの情報を得るにも、身を隠すにもうってつけだ。

 俺も伊吹を送り届けたらすぐに向かう」


 女の子たちの視線に耐えかね、伊吹を連れてすぐさまその場を離脱する……

 ただ…… 女の子たちの視線は俺ではなくリリスに向けられていた気がする。

 自業自得だな…… 変な言い方するから、俺は悪くない。



---


--


-



 数カ月ぶりに自宅に戻ってきた、わざわざ自室にマーキングを残していつでも帰ってこれたのに、今日まで一回も帰ってこなかったなぁ……

 一人暮らしを始めた大学生が、リアルが充実しすぎていて実家に戻りたがらないのと同じ感覚だろうか?

 確かに…… 可愛い女の子たちに囲まれて生活している俺のリアルは超充実している。

 以前の生活とは比べ物にならない、実の兄をドーテー野郎と罵る妹や、寝ているとネコパンチ入れてくる野獣が暮らす家と、禁域王宮では比べるのも烏滸がましい。


 そんなワケで自宅の自室…… 久しぶりに戻ってきたからだろうか? 以前とは随分変わったような気がする。

 ドコが変わったって? そうだな、俺の部屋から街が一望できる、シティービューってやつだな……

 春の爽やかな風が頬を撫でる……

 以前は東向きの小さな窓しか無かったのに、随分と間口が広くなった。

 そして部屋の床には壁の破片が散らばっている……


 そろそろ現実逃避も限界だな。


 そうだよ、俺の部屋が破壊されてるんだよ!



 壁の穴から外へ飛び出した。



「ちょっ! おにーちゃん! 急に飛び降りないでよ!」


 身体に接触したままだった伊吹も一緒に飛び降りさせてしまったが、そんな呑気なことを行ってる場合じゃないだろ?


 家の状況を確認すると……


「うわ~…… ヒド~イ、まだローンが23年も残ってるのに」


 伊吹が惨状を見て感想を述べる…… その認識で間違ってはいないのだが、他に言うコト無いのか?

 俺の部屋はガッツリ破壊されていた……


「あ、壊れてるのおにーちゃんの部屋だけみたいだね、私の部屋は無事だ、ふぅ~…… 不幸中の幸い」


 伊吹にとっては不幸中の幸いかも知れないが、俺にとってはそのものズバリのアンラッキーストライクだ!


「ふっ…… ふふっ…… ふふふ♪」

「な…!? なにおにーちゃん急に笑ってるの? 今は笑う場面じゃないでしょ? ちょっとキモいよ?」


「そういう事か…… おまいらだな? おまいらの仕業だな? ネット上のおまいらの仕業だな!!?」

「おにーちゃん落ち着け、おまいらって誰だよ?」


「つまりアレだな? マリア=ルージュ教 教徒の犯行だな?

 女神マリア=ルージュをぶっ殺した俺に対する報復ってワケだな?

 いいだろう! 宗教戦争だ! マリア=ルージュ教の教徒共を皆殺しにして真の女神である琉架を讃える真・女神教を興し、世界宗教にして、真・女神教信者率100%の神の世界を作り上げてやる!!」


「………… おぉぅ…… 魔王が言うと冗談に聞こえないから困る。

 とにかく落ち着いておにーちゃん、犯人は別にいるって、ネットの人たちはココまで行動力無いから、せいぜいネット上での殺害予告程度が限界だから」

「ハァァアァァアアァ~~~……

 例え我が妹であろうとも、邪魔する者は容赦せぬぞ? 地獄に叩き落として永遠に賽の河原で石積みさせてやろうか?」

「ハァ…… 魔王ゴッコはもういいから、てか口から紫色の煙を吐くな、それどうやってるの?」


 ゴッコとは失礼な、真・女神教の件は割と本気だぞ?


「つーか犯人はアッチでしょ?」

「やっぱりそうだよな……」


 兄妹仲良く空を見上げる…… 一面曇り空だが、雲の所々が不気味な赤色に染まっていた、もちろん夕焼けって感じじゃ無い。

 赤いオーロラがようやく消えたと思ったのに、今度は赤い雲か…… またレッドウッドの仕業じゃねーだろーな?


「アレナニ? あ、ナニか出てきた?」

「! アレは……」


 赤い雲から僅かに光る何かが落ちてくる…… 緋色眼(ヴァーミリオン)で見るとよく理解る、オーラの塊だ。


「もしかして…… 魔人……かな?」

「えぇ~…… デルフィラだけの話じゃ無かったの?」


 俺もそう思ってた、しかし次元トンネルが大量に開いている現状では、トンネル同士が干渉しあってドコに出口が出来るか分からない…… なんて可能性もある。


 もしかして…… 今世界中でこんな事が起こっているのだろうか?




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