第328話 相互認識
帰ってきましたティマイオスへ!
ゲートを使わない超長距離空間転移…… 所謂ル○ラの使用に成功した。
純粋魔力を併用したら簡単に成功した、直感的に上手くいく気がしたんだが、こんなに簡単にできるとは…… いやはや才能というやつは恐ろしいな……
フッ……
いや! 今はそんな事はどうでもいい!
禁域王宮の中には伊吹の他にもう一人分のオーラが見える、あれがエネ・イヴか?
てか…… なんだコレ? まるでオーラの塊みたいな…… こんな高密度のオーラは初めて見た……
いやいや! そんな事はどうだっていいんだよ! 問題なのは2人がリリスの部屋にいることだ!
なんで伊吹がリリスの部屋にいるんだ? 呪いが解けた時に物音でもしたのか?
マズイな…… 既に裸の女神様とファーストコンタクトを済ませている……
仕方ない…… 裸の事は「今はじめて知りました」って顔で接触しよう。
俺が裸の女神像を隠匿していたと伊吹に知られたら、アイツは絶対に俺を脅してくる。
間違いない! だって俺の妹だもん。
屋敷に入りリリスの部屋を目指して歩いていると、彼女の部屋のドアが僅かに開いているのが見えた……
? 二人とも倒れてるのか?
俺はエネ・イヴが平和的で安全な神族だと勝手に思い込んでいたが、もしかしたら好戦的な生物だったのかもしれない!
嫌な予感がする…… まさか…… まさかな?
「伊吹!!」
バン!! ガン!!
「フギャッ!!?」
勢い良くドアを開くと何かにぶつかり、ドアは勢い良く戻ってきた。
部屋の中には2人が倒れている、1人は俺が何十~何百時間とウォッチングしてきた女神エネ・イヴだ、見間違うハズもない、穴が開くほど全身くまなく見たからな…… ホントに復活したのか……
扉の近くに倒れているのは俺の妹伊吹だ、頭にはデカイたんこぶが出来ている……
チクショウ! 一体ドコのダレがこんな酷いことを!
……まぁ、このコブに関しては犯人は俺だろうけど……
この扉、なんで内開きなんだよ? おかげで伊吹が犠牲になった。
「ぅぅ…… ぁぅ……」
エネ・イヴは倒れたまま呻き声を上げている、2400年ぶりの空気だから呼吸の仕方を忘れたのか?
そしてコイツが何かやったのか? 俺の妹に手を出すとはナイス度胸だ…… 俺の中のシスコンの鬼が彼女を裁けと叫んでいる…… つまりイタズラしろってコトか?
それは止そう、後でリリスに殺される。
「伊吹! 大丈夫か!?」
「ぅぅ…… お……おにーちゃん?」
「そうだぞ、お前の愛するおにーちゃんだぞ? 大丈夫か?」
「ぅ…… どうせ助けられるなら年上でイケメンで頼れる感じのカッコイイ人が良かったな……」
「あぁ、良かったな? 俺はその条件をすべて満たしている」
「ゲスで友達がいないボッチ魔王のドコにそんな条件を満たす要素があるのよ?」
気がついてソッコー悪態をつくとは、心配し甲斐の無い奴め、しかし取りあえず大丈夫そうだな。
「大丈夫か伊吹、怪我は無いか?」
「っい! ったぁー! 頭が超イタイ…… おにーちゃんちょっと見て、血出てない?」
「大丈夫大丈夫、血は出てない」
『神血』で出血はこっそり止めてあるから。
「何が起こった?」
「ぅぅ…… わかんない、物音がしてこの部屋に入ったら、いつの間にかこのストリッパーがいて、彼女の眼を見たら頭の中で黒板引っ掻き音が大音量で響いてきたの…… そこで気を失ったんだと思う」
頭の中で黒板引っ掻き音が大音量? 中々キッツいなぁ……
もしかして精神感応か? 古代神族は原始神代言語でコミュニケーションを取っていた、それは精神感応を用いたモノだったという……
先輩魔王達を連れて来ないとまともにコンタクトを取れないかな?
「それでおにーちゃん、これ誰? どーせ知り合いなんでしょ?」
「あ~…… 終焉の子エネ・イヴらしい……」
「シュウエンノコえねいぶ? 誰だよ……」
伊吹には話してなかったっけ? まぁ細かい事情の説明は後回しだな。
「ぅぁ……?」
エネ・イヴが顔を上げこちらを見てきた、おぉ、綺麗な目をしてるな…… あ、俺にも引っ掻き音くるかな?
「ぁ…… ぁ…… ぉにぃ……ちゃん?」
「!?」
おにぃちゃん……だと!? エネ・イヴも妹属性なのか? バカな…… 俺にこんな美人の妹がいたとは…… 俺の妹は隣でタンコブを擦ってるアホの子だけだと思ってたのに!
ゴメンよ、おにぃちゃんはお前をオカズにしてしまった! 罪深いおにぃちゃんを赦しておくれ!
…………
んなワケねーじゃん、この子2400歳以上だよ? 考えられるのは俺の前世が古代神族だったか、この子のおにぃちゃんに似てるか……か。
「おにーちゃん? どこでこんな妹こさえてきたの?」ジト……
アラアラ、伊吹ちゃんったらもしかして嫉妬? 妹ポジションが危ういから? 可愛いトコあるじゃん。
しかし俺には擬似妹は作れても、義妹は作れない。
ローンを23年も残してるウチのオヤジが頑張ったとも思えない。
まてよ? 今普通に言葉をしゃべったな…… 原始神代言語じゃなく、世界統一言語だ…… 2400年も封印されていた神族が何故しゃべれる?
単純に伊吹のマネをしただけだろうか? もしかして伊吹と精神感応をして言語を習得したのか?
もしそうならとんでもない学習能力だ、これが神族のポテンシャルなのか……
リリスが罪を背負ってまでコイツ等を絶滅させてくれてよかった、現行人類とは性能に差がありすぎる。
「とにかくこのままにしては置けないな、伊吹、何でもいいから服を持ってきてくれ」
「うん、分かった…… って、チョット待て!」
「どうした?」
「おにーちゃんが行け! この人のそばに居るのはちょっと怖いけど、裸の美女と禁域王を同じ部屋に残していけるか!」
ちっ! さすが俺の妹、俺の企みを見事に看破しやがった!
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自分の部屋からシャツを持ってきて着せる……
美女が全裸に男物のシャツだけを着用…… スバラシイ。
今にもボタンが飛びそうなくらいパッツンパッツンなのもイイ……
ちょっと転んだふりして下から覗き込んでみるか? ……と、思ったが、いつの間にかパンツだけは履いていた。
シャツの隙間から黒い下着がチラリズム…… どうやら伊吹がリリスのクローゼットを物色して与えたらしい。
余計な事を…… まぁいい、あの布っきれの下は網膜に焼き付くレベルでガッツリ鑑賞済みだからな。
「…………」
さて…… どうするか?
取りあえず最大の目標であった服は着せることに成功した、これでなんとかバレずに済むかな?
しかしさっきからエネ・イヴは俺達と目を合わせようとはしない、警戒されちゃったかな?
顔見知りであるリリスが戻るのを待つべきか……
「…………///」
ん? 心なしかエネ・イヴの頬は赤らんでいるようにも見える……
警戒されてるというより…… 照れてる?
裸を見られて照れる…… 案外普通の子なのかも……
「こめん……なさい……」
「!」
向こうから話し掛けてきた、声は消え入りそうに小さいが、しっかりと統一言語で謝罪してきた。
「なんの謝罪だ?」
「そちらの…… イブキさんを精神感応で苦しめてしまいました……」
おぉ、とても常識的だ、どこぞの黎明の子とは比べ物にならない。
ま、黎明の子のことよく知らないけど……
「だってさ伊吹?」
「ふ…ふん! べ……別に気にしてなんかいないけど……っ!」
伊吹は事を荒立てること無く許してやった、ナゼかツンデレ口調で。
「しかしナンでいきなり精神感応を?」
「言語が通じないことに気づかなかった事、それ故にほとんど無意識だったんです。
それと今なにが起こっているのか知りたかったからです。
その結果、貴方のことをおにぃちゃんと認識してしまいました…… ゴメンナサイ」
伊吹の頭の中を覗いたら、口癖が伝染ったみたいな感じか……
ある意味不幸中の幸いだったな、一番最初に接触したのが伊吹で…… 俺の頭の中を覗かれてたら大変なことになってた。
もちろん俺は魔王だから簡単には感応できなかったと思うけど……
魔王は神族に匹敵、或いは上回る存在のハズだ。
まして俺は兼任魔王、俺が彼女の裸をオカズに数々のソロプレーを披露した秘密は決して暴かれることはない。
ふぅ…… 一安心。
「うっ……///」
しかし普通に話せるようになったのに、未だに俺と目を合わそうとしない…… 人族の男と視線を合わせると魂を吸われる! みたいな言い伝えでもあったのだろうか?
「おにーちゃん、あの人に何かしたの? 超モジモジしてるんですけど?」
「さぁ、心当たりはないな、だいたい彼女は2400年ぶりに復活したんだぞ?」
まさか俺に惚れた? ふっ…… まいったな、俺のハーレム特性は神にすら有効なのか。
「ぁ……」
ふと目が合った、するとエネ・イヴはいよいよ顔を真っ赤にしてうつむいてしまう……
確定だな、なんて罪づくりな男なんだろう、俺って……
「ご……ごめんなさい、私は2400年の間、その殆どを暗闇の中で過ごしてきました///」
ん?
「その暗闇を見続けるだけの無為な時間の中に、突如として想像もできないような刺激的な世界を垣間見る機会がありました///」
oh…… ヤバい…… まさかとは思ったが封印中も外のコトを認識してたのかよ!
「に……2400年もの間、自分の周囲の出来事を知覚してたのか?」
「……はい///」
つまり俺はこの美しい神族の少女の目の前でG行為を見せつけてしまったのか…… それはそれで興奮するな。
「おにーちゃん一体ナニしでかしたの? 刺激的ってなに?」
エネ・イヴが刺激的って言葉を使ってくれて助かった、コレならなんとかごまかせる。
もし背徳的とか言われてたら、ごまかしの難易度が跳ね上がっていたトコロだ。