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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
333/375

第327話 復活


 何か肝心なことを忘れている気がする…… はて?


 そうだ、スサノオが死んだということはジークに掛けられた『不老不死の呪い』も解かれたということ……

 ソレは即ちジークを500年もの間悩ませ続けた例の病の完治を意味する。


 心の底からオメデトウと思うのだが、それよりも危機感が募る、500年溜め込んだヤツの性欲が爆発するんじゃないか?


 ウチのコたちは美少女揃いだ、今までは性欲が沸かない世界一安全な賢者だったが、その枷から解き放たれたらなにが起こると思う? 歴史の教科書に載るレベルの性獣が爆誕するんじゃないか?

 もし俺がジークの立場だったら確実に暴走して女の子たちに襲いかかる、そして白濁の海に溺れさせるだろう……


 危険だ。


 取りあえずジークはラグナロクに捨てて行こう。

 ゴミは持ち帰れって? ……うん、ゴメン、無理。

 小動物の檻に野獣を放つことなど出来ない、みんな(性的な意味で)食べられちゃったらどうするんだよ?

 そんなことになったら俺は憂さ晴らしに世界を滅ぼすぞ!



「マスター」

「ん?」


 ミカヅキが小声で話しかけてきた。


「あのクソ筋に…… ジーク様が本当に魔王になったのなら、もう不死身じゃ無くなったってコトですよね?」

「あ~…… アイツの言うことが正しかったら、半不老不死になったってコトだな」

「なるほど、では真偽を確かめるために致命傷を負わせてみましょう。

 もし本当に魔王だったら死に、間違っていたら生き残ります!」


 確かに一番手っ取り早い確認手段だな。

 ミカヅキは自分に殺らせてくれと目を輝かせている。

 邪魔者の始末も出来るし一石二鳥の良いアイディアなんだが…… さすがに今すぐ殺るワケにはいかないよな。


「むぅ…… 片眼だと歩きにくいな……」

「あぁジーク! わ…私がアナタを支えます!」


 ネフィリムはここぞとばかりにジークの杖になると主張する。

 このままだとウチにまでついて来そうな勢いだ…… 冗談だろ?


 ジークは今のところ平静を装っているが、頭の中ではネフィリムのあの堅そうなオッパイを覗き込んで鼻息を荒くしてるに違いない!

 いっそのことネフィリムをあの大性獣への生贄に捧げようかとも思っていたが、乙女のネフィリムはきっと経験が無い、そんなトコロに暴走状態のジークをけし掛けたらトンデモナイ事になる、下手したら外交問題だ。

 確実にバットエンドだ、それは二人の為にも回避すべきだな……


「ネフィリム、アナタはまだ服役期間が……」

「ヴァレリア! ジークはもう重要人物です! そして身体の大きなジークを介助できるのは私だけです!」


 グウの音も出ないほどの正論だ。

 筋肉の化身たるジークを介助できるのは世界広しと言えどネフィリムだけだろう※(ノーマル巨人を除く)。

 それ以前にジークの介助をしたがるのがネフィリム以外にいない。


 だが前提が間違ってる、ジークは歩き難いだけで歩けないワケじゃ無い、最初から介助など必要ないのだ。

 ヴァレリアさんは見た目と違って甘いから、言い包められそうだなぁ……

 その結果、訪れるであろう未来の光景が目を閉じれば浮かんでくる……


 500年物の欲望を遠慮なくぶつけられたネフィリムは為す術も無く蹂躙されるのだろう…… 下手したら1週間くらい続くかもしれない。

 そして性なる嵐の後に残されたのはベッドの上でレイプ目になっているネフィリム…… おぇ、想像しちゃった。


 誰も幸せになれない…… そんな未来は回避すべきだ。

 ちょっと助け舟出すか。


「ヴァレリアさん、一つ頼みたいことがあるんだが」

「? どういった用件でしょう?」


 ネフィリムが目を輝かせて俺を見てる、どうやら援護射撃してくれると勝手に勘違いしているらしい……

 ちょっと心苦しいが…… ま、いいか。


「魔王スサノオが本当に死んだのか、直接確認して欲しいんだ、もし誤報だった場合のためにも正規ルートで入国して調べてきて欲しい」

「確かに……確認しておいたほうが良いでしょう、そうなるとルートを知っていて実際に行った経験がある……」


 ジ~~~……


 ヴァレリアさんの視線を受けて嬉しそうな顔をしているネフィリム…… ちょっと可哀相だな。


「ではネフィリムにヘルムガルドへ行って貰いましょう、嫌とは言わせません」

「はい! ……?? え? え? ヘルムガルド?」


 ネフィリムのヘルムガルド一人旅決定。

 きっと俺は恨まれるだろう、しかし分かって欲しい、これはジークとネフィリムの未来の為に必要なお使いイベントなんだ。

 あ、あと全速力で行って帰ってくると、前回の旅で手を抜いたことがバレるからダラダラ行くことを進める、ま、身から出た錆だ。

 いってらっしゃい。



---



 事態は急変したが、相手の出方を待つという基本方針は変わらない。

 俺達は夢の自宅待機で待たせてもらう……


 しかしジークの処理をどうしようか? マジでラグナロクで引き取って貰えないだろうか? それとも面倒だからジーク自身にもう一度『不老不死の呪い』を掛けてもらうか?

 今度こそ死ぬまで解けないだろうけど、俺はカケラほども困らないからな~……


 …………


 やはり何か忘れてないか俺? ジークの処遇とかどうでもいい程のナニかを……

 帰ってからゆっくり考えればイイか……


 …………

 ………………

 ……………………!


 そうだ! 忘れてた!

 呪いといえばジーク、ジークといえば呪いって思ってたからなかなか出てこなかったが、ジークの他にも解除不能の呪いを受けたヒトがいたじゃないか!


 かつて俺の宝物だった『終焉の子』エネ・イヴが!!


 えっと、本当にスサノオが死んだのなら、今頃ティマイオスでは……

 あ~…… ティマイオスでは伊吹が一人で留守番中……


 ヤバい!!!!


「スッ…スマン!! 急用を思い出した!!

 すぐ戻ってくるからみんな少し待っててくれ!!」

「え? ちょっ… 神那……」


 シュンッ!


 周囲の問いに答える余裕もなく、アッという間にティマイオスへ転移した―――


「…………今、神那…… ゲート開かなかったよね? ドコに行ったんだろ?」







---霧島伊吹 視点---



 空中庭園ティマイオス…… 新世代魔王の城である。

 新世代魔王の城にも関わらず、今は魔王様は一人もいない、ゲス魔王の妹が一人で留守番してる……


「暇だ……」


 ココにいれば春休み中ずっとウィンリーちゃんかお姉さまを愛でられると思ってたのに、できれば白ちゃんとの距離も縮めたかったのに…… まだモフらせてくれないんだよなぁ……

 私一人を残してみんないなくなってしまった。


 それもこれもあのゲス魔王のせいだ!


「暇すぎてフリーセルの達人になれそうだよ……

 こんな事なら暇つぶし用のゲームでも持ってくればよかった……」


 元々そんなモノを使う予定はなかった、ずっと誰かを愛でて過ごすつもりだった。

 くそぅ! やっぱりおにーちゃんのせいだ!


「はぁ…… 早く誰か帰ってこないかなぁ?」



 パリィィィーーーン!!



 !?


「な…… なに? 今の音…… 何かが割れるような音が……」


 誰か帰ってきた? それならすぐに分かるはず……

 だったらドロボウ? この空中庭園に?

 あり得ないよね、有翼族(ウィンディア)の泥棒でもいれば話は別だけど、魔王以外にはティマイオスを見つけることも、立ち入ることも不可能なハズ……


 だったら…… オバケ?

 確かに曰く有りげな洋館だけど…… まさかね?

 音がしたのは…… リリスさんの部屋? リリスさんが一人で帰って来たのかな?

 ドアに耳をつけて中の様子を窺う……



 パキッ パリン!



 中に誰かいる…… 間違いなく。

 古今東西、魔王の城にこっそり訪ねてくるのは勇者と相場が決まっている。

 つまり侵入者の正体は勇者ブレイド@マークさん? 魔王が不在の魔王城に乗り込んでくるって、いかにもあのヒトっぽいけど…… さすがにソレは無いと思う。


 確認…… しないといけないよね?


 コンコン


 取りあえずノックしてみて中の反応を待つ。

 …………

 …………

 …………無反応?


 ホントに泥棒とかじゃ無いでしょうね?

 念の為もう一度……


 コンコン


 耳を澄ましてみる…… すると……


『ぅぅ…… ぁぅぅ……』


 微かな呻き声が聞こえた! それも女の人の声だ! 取りあえず勇者の可能性は消えた!

 ここがおにーちゃんの部屋なら、いつの間にか愛人と言う名の使途を作ってこっそり飼ってたって可能性もあったけど、ここはリリスさんの部屋だ。

 ひょっとして何かトラブルに巻き込まれてケガをし、緊急避難的に一人で逃げかえって来たのかも知れない!

 とにかく確認しなきゃ!


「開けます!」


 バンッ!


 一応断ってから扉を開ける、そこにいたのは……


「ぅ…… ぁ……?」


 床に倒れていた一人の女性……

 身長より長いんじゃないか?って感じの白色に近い金髪…… プラチナブロンドって言うんだっけ?

 髪の毛に隠れて顔はよく見えない、うぉっ!? チチデケー!? ミカヅキさんレベル!?

 つーかなんでこの人真っ裸なの!? この格好で一体どこから来たの?


 とにかく何とかして上げないと、この格好のままでいたらウチの禁域王の餌食になっちゃう!


「あの…… もしもし? 大丈夫ですか?」

「ぁぅ……ぁ?」


 女性が顔を上げた時、プラチナブロンドの髪の間から水色の瞳が覗いた…… なんて綺麗な瞳……


「ん?」


 キィィィ―――


「な…なに? この音……?」


 キィィイィィイイイィィィィ!!!!


「うわっ!!?」


 突然頭の中に大音量が響き渡る!

 黒板の引っ掻き音を数百倍に増幅したような音が耳を塞いでも直接脳ミソに響いてくる!?


 ヤバイ!! 不快なんてレベルじゃ無い!! 死ぬ!!

 一体何なの!!? 何が起こったの!!?




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