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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
332/375

第326話 後継者


 世界の行く末を決める会議は終わった。

 ……と言っても具体的なことは何も決まっていない、敵の所在も、敵のお目当ての場所もわからないんだからどうしようもない。


 現状、出来ることは少ない、結局は相手の出方を待つしか無い。

 しかし厄介な敵を前にただ待つだけってワケにはいかないよな? 仕方ないから勇者を世界一の嫌われ者にすることに決定した。


 多少可哀相な気もするが…… まぁ勇者は元々世界規模で嫌われてたから今までと大差ないだろ?


 例え勇者がデクス世界の子供達から石を投げられようと、店の入口に勇者お断りの張り紙を出されようとも、勇者の手配書の目の部分に画鋲を刺されようとも、良心の呵責に苛まれる必要はない。

 コレはアイツが元々持っていた勇者の特性の一つ「疫病神特性」の所為なんだから。


 それはそうと……


龍人族(ドラグニア)達はこれからどうするんだ?」


 まさかとは思うが事後処理を全部リリスに押し付けて傍観したりしないだろうな?

 コレはお前たちが始めた戦争だ、ちゃんと最後まで責任持てよ?

 この際だ、お前たちが絶滅しようと関係ない、ただし俺を巻き込むなよ?


「余は神聖域に戻る、推測が正しいか? どれほどの被害が出ているか? 何か手がかりは残されていないか?

 それらを調べないワケにはいかない」


 アルヴァは取りあえず一回実家に帰るようだ…… そんな事いいからリリスを手伝え!……って言いたいトコロだが、確かに神聖域の現状は確認しておく必要がある。

 でもアルヴァも引きこもり気味なんだよなぁ…… 万全の準備をして臨んだ最終決戦でボロ負けした引きこもりが自分の領域に帰ったらどうすると思う?

 俺なら二度と出てこない、外に出たら「この無能が!!」って責められそうで…… 責任取って「もう一度戦え!!」って言われそうで……


 …………


 出てこなかったらその時はその時だ。

 強引に乗り込んでハンマーでゲームハードをぶっ壊してやるか。


「私はラグナロクを立て直します、兵の七割を失ってしまいました、当分は身動きがとれないでしょう」


 ………… これは…… 仕方ないか、魔王グリムの遺言だ。

 本当なら巨人族(ジャイアント)の問題は巨人族(ジャイアント)自身の手で解決するべきなんだが、現在のラグナロクのトップである四天王、その3人の内2人は入院中で面会謝絶……

 残りの1人は能力的にも人格的にも任せられないときてる……

 今も会議に参加しているのに一言も発しない…… 完全に場違いだ。


 だから仕方ない……

 つーかグリム! もっと脳筋以外の人材も育てておけよ! 死ぬ覚悟があったんなら尚更だろ!


「それで…… レビィはどうするんだ?」

「私は…… カオスの心臓を探すわ、悪いんだけどデクス世界まで連れてってくれると助かるわ。

 あと向こうのことを教えてくれる案内役もいると助かる」


 おぉ、予想外、リリス並みにやる気に溢れてるじゃん。

 だが案内役の手配はリリスに任せよう、俺が紹介できる人なんか先輩くらいしか思い当たらない、そして先輩を紹介したら「面倒事に巻き込むな!」って言われて絶対に怒られる。


「それじゃ私はすぐにデクス世界に戻って諸々の準備を整えるわ、レビィも一緒に行く?」

「えぇ、同行させて貰うわ」


 え、いきなり連れてくの? う~ん…… ま、羽や尻尾を出さなければ見た目は人族(ヒウマ)と大差ないからな。

 但し大和に連れてくのは避けるべきだ、洋物AV女優みたいなレビィは相当目立つ!

 どことなく「オ~! イエ~ス! イエェーースゥ!!」とか言いそうな顔してるから。



 俺がそんなしょうもない事を考えてる内にリリスとレビィはとっとと行ってしまった。

 しまった、アドバイスする暇がなかった…… ま、いいか。


「ねぇ神那……」

「うん? どうした琉架?」

「ん…… えっと…… 私達も協力した方がいいのかな?」

「いや、リリスには手を出すなって言われた」

「え? そうなの?」

「色々あるんだろぅ、2400年前にやらかした“原罪”の贖罪とか」

「あ…… そっか、だったら余計なお節介とかはしない方がいいね?」

「そうだな…… まぁリリスが潰れないように見守る程度かな?」

「! フフッ♪ うん、そうだね」

「?」


 笑われた? 俺変なこと言った? それとも鼻毛でも出てたかな? すぐに帰って身だしなみチェックしなきゃ!


 あとはとにかく事態が動くのを待つ、動かなければそれも良しだ。

 自宅待機だな…… 俺の大好きな自宅待機。

 自宅警備員と言い換えてもいい。


 よし、帰るか。

 そう言えばネフィリムはこの会議に出席した意味がなかったな、完全に萎縮していて恋愛脳筋の乙女色発言を披露する機会もなかった。

 おかげで会議がスムーズに進んだ。


「ジ……ジークッ!」

「おぉネフィリムよ、随分みすぼらしい格好をしているな?」

「あぁ…… 見ないで…… 今の私を見ないでください///」


 自分から声を掛けておいてソレは無いだろ?

 見ないでと言いながら胸の谷間を見せつけようとするな、その必要以上に硬そうで胸筋だけでピクピク動きそうな胸を……

 こいつ反省が足りなくねーか?


「あれ? ジーク……」

「ん? どうした?」

「いえ…… その、左目どうしたんですか? 血が出てますよ?」


 ?


「なに? これは…… ッ!? ウッ!?」


 ジークが突然顔を抑えたまま膝をついた。

 大袈裟な不能不死者だな、タンスの角に足の小指でもぶつけたのか?


「これは…… まさかっ! そういう事か……!

 カミナよ……」

「あん?」

「どうやらさっそく事態が動いたらしいぞ?」

「はぁ? いや、別に急いでないからそういうのは2~3日後でいいよ」

「つまらん冗談を言ってる場合ではない、スサノオが死んだんだぞ?」


 つまらんとは何事だ! 俺はただイベントは一気に起こさず一拍置いてからタイミングを見計らって順次発生させろと……


 …………


 ん?


「誰が死んだって?」

「スサノオだ、お前もよく知っている第4魔王 “鬼神” スサノオだ」


 何言ってんだコイツ?


「なんで?」

「分からん」


 分からんじゃ無くて理由を言え理由を!


「どうして?」

「俺に分かるのは死んだことだけだ」


 だから理由を言え! いや…… 何となく理由は察しがついたけど……


「なして?」

「そういう仕掛けがされていた……としか……」


 イラッ!


「ハッキリ言え!!」

「第4魔王の力…… 確かカミナがミストと呼んでいたモノか…… それがたった今俺に継承されたからだ」


 ジークの左眼からは血が流れおちていた…… 俺のよく知る症状だ。

 いやいやいや! チョット待て! なんでこの場に居ない魔王の力がこの筋肉に継承されるんだよ!

 お前、スサノオにボロ負けしたじゃねーか! それでなんでお前が力を継承するんだよ!?


 やはりあの呪い発生器の神剣『素戔嗚(スサノオ)』か? あれにスサノオのミストの殆どが込められていた? 無機物使途を作るのと同じ要領だろうか? どうすればそんな事ができるのか全く分からん、何かの呪いを駆使したのだろうか?


「お前…… 一体どんな契約結びやがったんだ?」

「この結末は予想していなかったワケでは無い、「力を得るための代償を払ってもらう」と言われていたからな……

 まさかこんなに早いとは思わなかったが……」


 いや、色々おかしいだろ?

 魔王スサノオは唯一寿命を持つ魔王だった、だから後継者を探していたのか?

 なんで元勇者を後継者に選ぶんだよ? コイツに渡すくらいならミカヅキに継承させればよかったじゃないか、鬼族(オーガ)独特の文化ってやつは理解できん。


「スサノオは誰かに殺されたのか?」

「いや、おそらく衰弱死だろう、誰かに殺されたのなら魔王の力はソイツに継承されるハズだ」


 そう……だよな? エネ・イヴェルトとは関係なく、たまたまこのタイミングで寿命が尽きた……

 或いは自殺でもしたのか? 八咫霊山にはジークの切り落とされた腕が残ってたハズだ、ソレを心臓に刺せばジークにミストが継承されるのも分からなくはない……かな?

 いや…… この説はかなり無理がある……

 一応スサノオの死は確認しておくべきだろう。


「まぁこれで九大魔王同盟の誕生だな」


 何勝手に決めてんだゴルァ!!!!

 誰がテメーの加入を許した!!? 魔王同盟に俺以外の男は要らん!!

 どうしても魔王同盟に入りたければ美少女に生まれ変わって出直せ!!

 重要なコトだが転生物のラノベみたいに記憶を引き継ぐんじゃねーぞ!! 例え美少女でも中身が元筋肉じゃ愛せない!




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