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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
330/375

第324話 世界の行く末・前編


「ん……? うぉっ!?」


 自分たちのいる場所が突然日陰になった、見上げると結構近くにラグナロクが来てた。

 島サイズの瓦礫を無視して突っ込んでくる、いくら結界があるからって大胆すぎる…… てかこの距離まで気付かないとは、俺も動揺してたのかな?

 魔王グリムが呪いの様な遺言を残したせいだ、あんにゃろう……


「迎えが来ました、八大魔王同盟の皆様もラグナロクへどうぞ……」


 ヴァレリア女史が取りあえずついて来いという…… 果たして取りあえずでついて行っていいモノだろうか?

 ついて行ったが最後、あれよあれよという間に高いツボとか羽毛布団を買わされそうで…… じゃなくて、最終リベンジマッチに参加させられやしないだろうか?


 参加させられそうな気がする……

 とは言えだ、黎明の子エネ・イヴェルトの復活、持ち去られた魔王カオスの心臓、覚醒バカの存在…… 八大魔王同盟も無関係を決め込むワケにはいかない情勢だ。

 今後何が起こるのか分からない以上、情報は必要だ。

 そしてその情報を今一番持っていると思われるのが龍人族(ドラグニア)だ。


 ココは素直にご招待に応じるべきだな。

 みんなに目配せしてヴァレリア女史についていく。


 ジークは当たり前ですって顔でついてくるけど、招待されたのは八大魔王同盟だけなんだよね。

 まぁ元勇者はアドバイザーに使えるかもしれないな。

 まさかネフィリムに会いたいからついてくるんじゃないだろうな?


「おぉ~♪ ラグナロク! 中に入るのは初めてじゃのぅ♪」

「なにが悲しくて巨人の巣窟に行かなきゃいけないのよ? ハァ……」


 先輩魔王のウィンリーとアーリィ=フォレストの反応は真逆だ、俺も後者の意見と同感だ。


「カミナ……」

「ん?」


 俯いたままリリスが声を掛けてきた。


「カミナは…… 手を出さないで」

「?」

「これは私がやらなきゃいけない事だから…… 手を出さないで」


 リリスの眼には強い決意のようなモノが見えた…… いつものパターンなら助けを求める様な…… 縋る様な目をしてくるのに……

 今回はマジなのか?


 しかし…… 危ういな。


 この状況、この眼、まるで自分の命と引き換えにしてでもやり遂げると語っているようだ……

 確かにアンチ神様同盟の盟友たる魔王、カオスとグリムは逝ってしまった、残されているのはリリスだけ……

 他の魔王はエネ・イヴェルトに特別な感情は抱いていないからな。

 つまり敵対する理由がない。


 だがそれは困る、リリス・リスティスは将来俺の嫁の一人として幸せに暮らす予定だ、こんな所で命を落とされては俺の予定が狂う。

 だから……


「わかった、だがなリリス、無理だと思ったら俺を頼れ、知恵くらいは貸してやれる」

「っ! …………うん、ありがとう…… 覚えておく」


 助けてくれる仲間がいる……ってコトを分からせておけば、一人で敵に突っ込むってことも無くなるだろう。

 今のリリスを見てると本当にやりかねないからな。



---



--



-



 魔王城ラグナロク


 主のいなくなったこの城は、もはや魔王城とは呼べないかもしれない……

 これからは浮遊大陸か第2領域の枕詞で呼ぶのが適当かもしれないな…… まぁどうでもいいか。


 そんな巨人の大陸、巨人の城のアホみたいに広い議事堂…… 俺達はそこに通されていた、しかしそこには巨人は一人もいない。

 勝手に使ってもいいのかな?


 巨人騎士は大きな被害を受け、残りの四天王は一人は投獄、他の2人はICUだ……


 …………


 ラグナロクはもうダメなんじゃねーの?

 ヴァレリアさんの手腕にかかっているが、ソレの脇を固める人材が貧弱すぎる。

 魔王グリムは本当に呪いみたいな遺言を残しやがった、別種族の人に責任と枷を託した…… 本っ当に迷惑なヤツだ。



 ゴロゴロゴロ……



 ん? 何の音だ? 雷か? しかし窓もないこの部屋でそんなものが聞こえてくるとは……

 あぁ、腹ペコ魔王ウィンリーの腹の音か…… あれ? 違う?



 ゴロゴロ……ゴトッ



「あ」


 現れたのはネフィリムだった、その姿は麻袋に穴を開けただけのような服、手錠をされ、足には鉄球付きの足かせが…… ゴロゴロうるさかったのはあの鉄球か。

 見事なまでの囚人ルックだ、もしあれで着ている服が青と白のボーダーだったらよりコメディ感が高まっていただろう。

 もう裁判で有罪判決受けたのかな?


 なんとなく…… ひと回り小さくなったように見える…… 気がする。

 彼女、この会議に参加するの? その資格は無いような気がするんですが?


「さて…… それでは揃ったようなので今後のことを話していきましょうか……」


 ネフィリムを参加させるんだ、ヴァレリアさんって寛大だなぁ……

 肝心な時に役に立たないどころか、こちらの戦力を削ぎ、足を引っ張ったやつだぜ?

 俺なら公開処刑にしてやるトコロだ、もしくはアイツの目の前でジークの手足を切り落として拷問するトコロを特等席で見せつける、コレが一番の罰になるだろうからな。

 ジークは完全なとばっちりだ…… だがジークにも原因の一端がある、なんと言うか…… 連帯責任?


 まぁネフィリムの処遇を含め、ラグナロクの全権を委ねられたのはヴァレリアさんだ、俺がどうこう言う権利はない。

 だが今後の事よりまずは反省をすることが大事だ、相当な犠牲を出したんだからな。


「今後のことより先に失敗の原因を救命するほうが先じゃないか?」

「失敗の原因ですか…… 原因は明白です。

 我々はエネ・イヴェルトの手駒を予想できなかったことです」


「勇者か…… 確かに勇者が、まさか覚醒して現れるとは思わなかったな。

 だいたい勇者ってどうやって覚醒するんだ? ジーク、お前の時はどうだった?」

「覚醒はある日突然だったな、何の前触れもなく唐突に覚醒した、特別な条件はなかったと思う」


 役に立たないアドバイザーだ、やはり勇者なら経験値が溜まってレベルアップ的な感じかな?


「ソレに関しては一つ仮説がある」

「? 仮説?」


 発言したのはアルヴァだった。


「49代目勇者は恐らく封印された神の力を得たのだろう」

「封印された神の力ぁ~?」


 胡散臭っ! なんだよ封印された神の力って? 封印されてたのになんで得られるんだよ?


「アイツが次元トンネルを使って移動しているのを見た時、真っ先にこの可能性が頭に浮かんだ。

 恐らく神聖域が侵されたのだろう」

「神聖域?」


 神聖域って確かお前が管理人やってた要塞龍ガーランドの寝床だよな?

 他にも『中央大神殿(リ・カテドラ)』があったとか……

 あとは……


「そうか、歴代勇者の墓か!」


 ジークが何かに気付いたように言った、そうそう、そう言えば大量の墓があったな、将来的にはあそこにお前の墓も建てられる予定なんだよな。

 もっともその為には不老不死の呪いを解き、死ななきゃいけないんだが……


「勇者だけではない、全ての祝福者の墓だ、それが暴かれたのだ」

「祝福者…… それはつまり……」

「祝福者とは神の祝福を受けし者……

 つまりエネ・イヴェルトの力の一部を植え付けられた者たちだ」


 エネ・イヴェルトの力の一部…… あぁ、そういう事か……

 神聖域とは聖域でも墓場でもなく、神の力を少しずつ削ぎ、それを封印するための地だったんだ。

 ほんの僅かでも神の力をエネ・イヴェルトの元へ還元しないために、精霊をこき使って世界中から集めていた…… 気が遠くなる作業だ、しかもどれほどの効果があったのかも分からない。

 その上、1200年も掛けた大事業は、最終決戦の裏側でこっそり破綻していました…… 魔王カオスが、エネ・イヴェルトがダラダラ時間稼ぎしていたのはそれ待ちだったんだな。


 大事な物が隠してあるならそっちにもガードマンを付けとけよ、覚醒前の勇者なんか時給800円くらいのバイトでも相手が務まるのに。


「勇者が覚醒に至ったカラクリは分かった、だがそれ以前にエネ・イヴェルトはどうやって勇者に接触したんだろうな?」

「? どういう意味だ?」


「今代の勇者は果てしなくバカだ、ちょっとくらいのお導きで的確に動かすコトなど不可能だ。

 勇者を誘導し、エネ・イヴェルトに都合の良いように動かす為には付きっきりで行動を指示する存在が不可欠だ。

 大体アイツはデクス世界にいたんだぞ? それを誘導し、そして神星を操作する奴が必要だ。

 要するに敵はまだ他にも居るってことだろ? もしかして魂を分裂とかさせてたのか?」

「魂を分裂させることは可能だろう、元々形の無いモノだ、だがそれは有り得ない」

「その理由は?」


「エネ・イヴェルトの魂が入り込める肉体が存在しない、唯一可能だったのがカオスだ。

 例え半神族である我々龍人族(ドラグニア)でも不可能だ…… だが……」

「?」

「神星の操作は神族にしかできない……ハズだった」


 神星の操作は神族にしかできない……


「つまり神族の生き残りが居るって意味か?」

「それこそ有り得ない、今現在生きている神族はエネ・イヴ様のみ、そのエネ・イヴ様も封印されているからな」


 例えどんなにあり得なくとも、神聖はリアルタイムで操作されていた…… タイマー操作ってコトは無いだろう?


「だったら次代神族(ネオ・ディヴァイア)の三柱神…… その生き残り…… 或いは死体に魂を突っ込んで操っている……」

「バカな……! 2400年も前に死んだ者の肉体が現存しているハズが無い!」


 普通に考えればそうだ、ミイラや死蝋になっていたとしても、中に魂が入ったからといって自由に動けるとは思えない。

 だが…… 三柱神の一人は “神殺し” グリム・グラム=スルトによって殺された…… 恐らくこれは間違いない。

 ならもう一人は? エネ・イヴの『進化神化(ディヴァイアス)』を至近距離で受けて死んだと言われている。

 もし仮に、その最後の一人がその時死んでいたとしても、進化した肉体だけは朽ちることなく残っていたとしたら?


 …………


 いくらなんでも荒唐無稽すぎるか。

 しかしエネ・イヴェルトには勇者の他に手駒が二人…… 最低でも一人は存在しているってコトだ。

 しかもそいつは神族だ、そうでなければ辻褄が合わない。


 マジで生きてる可能性あるぜ? 三柱神最後の一人……




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