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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第321話 第1魔王 ~変換消滅~


「うぉっ!?」


 バチッ!!


 覗き見魔術の中継が切れた。

 魔王カオスと魔王グリムの激突の余波だ、まさか周辺ごとゴッソリ消滅してないだろうな?


「リリス! 再接続だ!」

「わかってるわよ!」


 リリスが慌てて中継を繋ぎ直す、俺にも魔術自体は使えるが、現場に繋げるのはマーキングを施したリリスだけだからな。


 …………どうなった?


 最後の瞬間、魔王グリムの攻撃は確かにカオスを捉えていたと思う……

 あの至近距離で魔力枯渇、更には対消滅だ、コレで倒せなければもう倒す手段はない。


 魔王グリムが勝ったと思う……

 ……思うのだが、嫌な予感がする。


 入念な準備をしてきたアンチ神様同盟の勝利だと思うんだが、魔王カオスの…… エネ・イヴェルトの不審な行動がどうしても気になる。


 頭の中にはどこかのアニメで見たようなワンシーンが浮かぶ。


 必殺技を撃ち合った二人が煙の中に立っている。

 片方が突然 膝を着き、勝負あったって演出がされる。

 しかし数瞬遅れてもう片方が大量に血を吹き出し倒れる。


 つまり先に倒れたほうが勝つフラグだ。

 料理対決で後攻のほうが勝率が高いみたいな感じだ。


 とりあえずグリムは先に倒れろ、そうすればきっと勝てる!



 グラ……



「ん?」


 揺れた?


「ねぇ、今なにかユラっと…… あ」



 ドオオォォォン!!!!



「ぅおおおぉ!!??」


 突然ものすごい揺れに見舞われた、直径100メートルはある巨大ハンマーでティマイオスを横殴りにされたような、そんな衝撃だった。


「きゃーーーっ!!」

「ひうっ!」

「わわわわわっ!」

「……あ、きゃ~……」


 上下左右、俺の周りはあっという間に美少女まみれだ、スバラシイ。

 琉架と白は最初から隣りに座ってたからわかる、俺の胸にミラが飛び込んできたのは……アレだけの揺れだから仕方ない。

 ミカヅキに至っては立つのも難しい揺れの中、わざわざ俺の背後に回ってその豊満な胸で俺の頭を包み込んでくれた…… きっと俺の頭を守ってくれたんだろう、メイドの鏡だな…… 「きゃ~」が棒読みだったけど。


「その手が……あったか!」


 そんな俺達を見てアーリィ=フォレストが悔しげな顔をしている、どうやら余計な知識を覚えてしまったらしい、次に同じような事があればこの美少女まみれの中に彼女も追加されるだろう。

 楽しみだ。


「うぅ…… 今のナニ?」

「衝撃波……かな?」


 4000km以上離れていてあんな強烈な衝撃波がやってくるのだろうか?

 津波なら分かるんだが…… いや、星が吹っ飛んでもおかしくない対消滅が起こったならこの程度当然かもしれないな。

 或いは方角が悪かったか…… どちらにしても現地は大変なことになってるんじゃないか?


「繋がったわ」


 リリスの声とともに再び立体映像が映し出される。

 しかし何も見えない…… 煙か? 映像は真っ白だった。


「とにかくズームアウトしてみるわね」


 どれだけ引いても映像に変化は起きない、時折瓦礫のようなものも映り込むのだが…… もしかして浮遊大陸吹っ飛んだ? さすがにリアル大陸サイズのギルディアス・エデン・フライビが丸ごと落ちたとは思えないが……


「あ……」


 画面の端っこにようやく大地が映り込んだと思ったら、なんか…… 浮遊島だ……


「龍尾平原は崩壊したみたいね」


 どうやらギルディアス・エデン・フライビの一部が砕けたらしい。

 一定以上の大きさの瓦礫は浮力を保っている、何故小さい方が落ちて大きい方が浮いているのか? 意味が分からん、聖遺物の効果範囲から切り離されていないってコトか?


 この分だと龍尾平原を取り囲んでいた巨人騎士たちは全滅だな、グリムの後方にいた奴らは生き残ってるかも知れないが、結果だけ見れば無駄な犠牲だな。

 それでもエネ・イヴェルトが逃げ出した時の為には必要な人材だったが…… 他にやり様は無かったのだろうか?

 まぁ、今更そんな事を言ってもどうしようもない、始める前に結果などわかりはしなかったんだから、それより魔王カオスと魔王グリム、龍人族(ドラグニア)たちは?

 海に落ちたか? だとすると探すのは難しいな……


「いた! 見つけた!」

「!」


 映し出されたのは…… 片腕の無い龍…… ティアマトだ、また変身したのか。

 コイツの向う先に魔王カオスと魔王グリムがいるハズ……だ。


 煙の中に大きな影が見える、ちょっとした島サイズ、ここか?

 その浮遊島は真ん中が大きく抉られており、今にも真っ二つに割れそうだった。


「コレがグリムが生み出したエネルギーの射線か?」


 ならこのくぼみを辿って行けば、その始点にグリムがいるハズ……

 体を全部消費して無ければ……だけど……


「…………いた! グリムだ!」

「お」


 映像に小さく映し出されたグリムは五体満足……じゃない、右腕がが無くなっているようだ。

 『変換消滅(レラティヴィティー)』により消費したのか…… よくよく考えれば魔王グリムはもともと20メートルを超える巨体を持ってたハズ、それを圧縮したんだった。

 圧縮を解放すれば人一人を消滅させるのに使う質量は指2~3本で十分過ぎるハズだ。

 むしろ右腕だけとはいえ、ずいぶんと大盤振る舞いしたものだ。


 そういえば龍人族(ドラグニア)も真の姿は巨大な龍だったな…… どちらも圧縮されてたと考えれば、よくそれだけの質量で事足りたな?

 あとは変換したエネルギーを使ったのか、それはもう莫大なエネルギーだっただろうからな。


「カオスは!? エネ・イヴェルトは何処に!?」


 全てを消滅させたなら安心だが、遠くへ飛ばしただけだったら大問題だ。

 ただアレだけのエネルギーなら地球外へ追放されてるかもしれないな…… それならまぁいいか、2度と帰ってこないなら……

 でも出来る事なら死体を確認しておきたいな……


 …………あ


 もし倒してたら魔王カオスのギフトとかグリムが継承するんじゃないのか?

 アイツが変な野心とか抱かないとイイんだが…… 誰にも止められないぞ?


「うぅ…… おに~ちゃん…… 落ちてる……」

「ん?」


 白が何かを見つけたようだ、落ちてる? 小銭とか?


「魔王グリムの前方…… 10メートル……」

「前方10メートル?」


 この映像では確認できない。

 しかしその言葉を聞いたリリスが映像を寄せる…… ん? ホントだ、何か小さいモノがポツンと…… なんだ?


「うぅ…… 心臓が落ちてる……」

「!?」


 次第に落ちているモノが見えてきた、そこには弱々しい鼓動を打つ心臓が落ちていた。


「魔王カオスの心臓……」


 星が吹っ飛ぶようなエネルギーを受けても焼け残ったのか…… そういえば魔王レイドの心臓も核融合爆発から焼け残ったな。

 もっともあの時とはエネルギー量が比較にならないが……

 もしかしたら心臓にだけ『絶対無敵(インヴィクティア)』を掛けたのかも知れないな…… 無駄な足掻きを…… あの状態じゃ文字通り手も足も出ない…… 違った、手も足も身体もなんにも無い。


 まだ油断はできない、しかしこれはアンチ神様同盟の勝ちだろ? 勝ちと呼ぶにはあまりにも犠牲が多すぎるが。


 いやいや、プラスに考えよう!

 これで八大魔王同盟に対抗できる戦力は無くなったんだ! コレで安心して余生を過ごせるってものだ!


 …………


 魔王グリムが変な野心とか出さなければ……な。

 消耗しきっているグリムを今の内に処分するって手もあるが、敵対しないと誓っちゃったからなぁ…… まぁ隣人とは仲良くしよう。




 魔王グリムがゆっくりと歩き出した、足を引きずってるようだ、相当消耗しているのか…… 或いは内臓とか血液も消費しているのかも知れないな。


『…………』


 落ちている心臓の前にグリムが立つ、止めを刺すのか…… 何か喋りかけてるようにも見えるが、残念ながらこちらまでその声は届かない。

 そしておもむろに左手を上げる……



 これで全ての決着が付く……





 そう思ってた―――





 ドスッ!!



 何故かその音だけは耳に届いた。


「!?」

「なっ!?」


 突然だった! 魔王グリムの胸から剣が飛び出してきたのだ!


『ガフッ!!?』


 グリムが血を吐く、あの位置は心臓をやられた?

 一体何が起こった!? カオスは身体から心臓を取り出し囮にでもしたってのか!?


 グリムが膝を付き、その後ろに隠れていた者の姿が映し出された……


「は?」


 その者は赤い髪をし、青い鎧を纏っていた…… もの凄く見覚えのある男だ、魔王の居る所に必ず現れて、場をかき回して、そして無様にやられていく……



 そこにいたのは……



 勇者だった。



 あの稀代のバカ勇者ブレイド・アッシュ・キース・アグなんとか……だ。



「……っえ?」

「なっ……」


 みんな一様に驚いている、俺も同じ気持ちだ、なんでアイツがあそこにいるんだよ?




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