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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
321/375

第315話 始動


 八大魔王同盟が集結してから3日が経った……


 リリスに特別なリアクションは見られない、俺の思い過ごしだったのだろうか?

 それならそれで構わない、俺が参加しない魔王戦とスポーツ中継なんて結果だけ分かれば十分だ。


 今日も朝8時起き…… ウチの子達はみんな真面目だから生活リズムを崩さない、本当は昼まで寝ていたいのに……

 そんな八大魔王同盟の住む屋敷に、ついに俺の味方が現れた!


 ガチの引きこもり魔王 アーリィ=フォレスト・キング・クリムゾン・グローリーだ!


 彼女だったら俺と一緒に昼まで寝てくれる!


 …………


 そんな淡い期待をしていた時期が俺にもありました……


 俺の予想に反してアーリィ=フォレストは普通に朝起きてくる…… 何故だ!? 孤高の引きこもりは周囲の迷惑や苦言などには一切耳を貸さず、我が道を行くと思ってた。

 しかし実際は文句も言わずに8時起き、どうやら無理に周りに合わせているようだ。

 寝起きのヒドイ顔色を見れば一目瞭然だ、同じ顔色をしている俺が言うんだから間違いない。


 彼女は彼女なりに社会復帰しようと努力しているらしい、俺の個人的な都合でグウタラ生活を強制するコトは出来ない。


 でもなぁ~…… せっかくジャージをプレゼントしたのに朝ちゃんと着替えて出てくるんだぜ? 信じられん! あなた一体誰ですか?

 むしろ琉架やリリスの方がダラしないくらいだ。


 と、いうワケで俺も生活習慣を改善する必要がありそうだ、はぁ…… 昼まで寝てたい……


 そんなある日の朝のコトだ……

 俺が睡魔との激しい戦いに辛くも勝利し、傷ついた身体を引きずるように階段を下りてくると……


「ん?」


 窓の外、テーブル大地の端っこでウィンリーが一人佇んでいた。

 ウィンリーが一人でいる所を見るのは久しぶりだな、最近は大体伊吹が常時愛でてる。

 寝起きにあんな所に立ってたら落ちるんじゃないかと気が気じゃ無いが、普通に飛べるウィンリーなら心配するだけ無駄だな。


 しかし何をしているのだろうか? ラジオ体操?ってワケでも無さそうだし……

 少し気になる……



---



 ……ので、ウィンリーの様子を見に来た。


「おはようウィンリー、どうかしたのか?」

「む? カミナか、おはようございますですじゃ♪」


 うむ、朝から元気いっぱいだな、実にウィンリーのキャラに合ってる。


「どうにも風が騒いでいる気がしてのぅ、外に出てみたら懐かしい風が吹いておるのじゃ」


 ??


 もしかしてアレか? ウィンリーもとうとう暗黒の病を発症してしまったのか?

 そうだな…… 誰もが一度は通る道だ、俺もかつては学校の屋上で全身に風を浴びながら、空の奏でる鎮魂歌(レクイエム)を感じていたモノだ。


 分かるぞ? その気持ち……

 だから俺は決してバカにしたり、冷めた目で見たりしない。

 存分に魂を暗黒色に染めるがいい……


 俺も少し付き合ってやるとするか。


「風が……()いているな…… 嘆きと哀しみを孕んでいるかのようだ……」

「そうか?」


 アレレ? 手酷い裏切りにあった気分だ。

 ウィンリーは乗ってくれなかった…… チクショウ! 恥ずかしい!


「むしろ長い間、停滞していた風が動き出して歓喜している様に聞こえるのぅ」

「あ…… そうなんだ……」


 リアルに風の声を聴いていたのか、有翼族(ウィンディア)の種族特性で…… なんて紛らわしい! てっきり例の病かと思ったのに!


「それで? 風はなんだって?」

「うむ、どうやら1200年間止まっていたギルディアス・エデン・フライビが動き出した様じゃ」


「……………………

 ……………………

 ……………………へ?」


 ギルディアス・エデン・フライビ? ?? なんだって?


「え~と…… どういう意味だ?」

「そのまんまの意味じゃ、第1領域、浮遊大陸ギルディアス・エデン・フライビが1200年振りに動き始めたのじゃ。

 どうやらあの寝坊助魔王が目覚めたらしいのぅ」


 寝坊助魔王…… それはつまり第1魔王カオス・グラン・ドラグニアのコトだろ?

 黎明の子エネ・イヴェルトの精神を監視していた奴が起きてきたってコトは……


 いよいよ……なのか?



---



 朝食の席、全員が集まっているその場でウィンリーが感知したギルディアス・エデン・フライビの再始動、それをみんなに告げた。


 パリーン!


 リリスがカップを落として割った…… 絵に描いたようなショックの受け方だ、よりにもよってマイセンの高級品を……

 あとでコッソリ琉架に直してもらおう、金持ちでももったいないものはもったいない、アレは琉架が実家から持ってきたお宝だからな。


「とうとう動いたのね…… それじゃもう始まってるわ……」

「………… 行くのか?」


 イヤだけど聞いておかねばならない、リリスは八大魔王同盟の一翼だが、それと同時にアンチ神様同盟の構成員でもある。

 最後の戦いが始まっているなら参戦する……かな?


「いいえ…… 私の役目は見届ける事だから……」

「見届ける?」

「えぇ…… もし彼らが失敗したら、その時は残された私が計画を引き継ぎ終わらせるの……」


 また嫌なフラグを建ててくれる、そんな言葉を口に出したら本当に失敗しそうじゃないか。

 それにこの見届け役…… 魂胆が透けて見えるぞ?


 もし失敗したら戦力として八大魔王同盟を引っ張り込むのに都合が良いからリリスが見届け役に抜擢された…… そんな気がする。

 イヤだぞ? ラグナロク・龍人族(ドラグニア)連合が負ける様な相手と戦うのは。


 邪推だといいんだけど……


「とにかく私は私の使命を果たします」


 そう言うとリリスは魔神器から魔力微細制御棒(アマデウス)を取り出した…… 何をする気だ?


「第2階位級 索敵魔術『遠隔視』リモート・ビューイング」

「!」


 床に直径3メートル程の魔法陣が現れる、その中にはここではないどこかの風景が映し出されていた。


「その魔術は……」

「そう、創世十二使のエリックの『千里眼(リモート・ビューイング)』を解析して新しく作った魔術よ」

「『幻想追想(メメント・モリ)』は使わないのか?」

「仮に『千里眼(リモート・ビューイング)』をフルサイズで記録しても、限界射程が4000kmじゃ目的の場所が見れないかも知れないでしょ?

 実際に今のティマイオスの位置からではギルディアス・エデン・フライビは見れないわ。

 だから射程距離に関係無くマーキングした場所を見れる魔術を作っておいたの」


 なるほど…… さすがは魔道の祖だ、そして最終決戦の地はギルディアス・エデン・フライビなのか…… 今は4000km以上離れている、うん、安心してみていられるな。

 ポップコーンとジュース片手にじっくりと観戦させてもらおう、もちろんちゃんと応援もするぜ?


 しかし一つ問題がある……


「おい、リリス…… 見辛いぞ?」


 この魔法陣ビジョン、戦場を真上から映してるものだから分かり辛い、戦況を見るだけならむしろこの方がイイかも知れないが、このロングショットでは戦いの内容が分からない。


「うっ…… 大人数で見ることは想定して無かったのよ……」


 お前一人だったらコレで十分だったとでも言うのか? これじゃ結果しか分からんぞ。

 この後の戦いに参戦する気はないが、今後の為にも魔王グリムや龍人族(ドラグニア)の戦い方や能力は知っておきたい、俺はスポーツ選手じゃないから相手選手の実力を分析する必要は無い、しかし同盟以外の魔王や龍人族(ドラグニア)の戦力は知っておいて損は無い。

 それを知る絶好の機会なんだから。


「カミナ君、カミナ君」

「ん?」


 アーリィ=フォレストが俺のシャツの裾をクイクイ引っ張ってる、いつの間に俺の背後に回った?

 俺が13の人だったら、思わず顔面にグーパン喰らわせるトコロだった。


「アレが使えるかもしれません」

「アレ?」


 アーリィ=フォレストの視線の先を追っていくと…… そこに居たのはミラだった。

 おいおい、さすがにアレ呼ばわりは怒るぞ?


 …………あ、ミラの事じゃないのか。


「ミラ」

「はい? なんでしょう?」

「アルテナを試してくれ」

「アルテナ様……? あぁ! アレですね?」


 アレ呼ばわりはアルテナの事だった、一応人格はあるが……まぁ…… 器物だから許容範囲内かな? 本人は怒るかもしれないが……


「『覗見方形(ピーピングキューブ)』」


 魔法陣の上に巨大なガラスの箱のようなものが現れる、今までは昔の戦略シミュレーションみたいに配置くらいしか分からなかった戦場が、一気に3DのTPSっぽく進化した……


 こんな使い方ができたのか、さすが元持ち主、よく知ってるじゃないか。

 そして俺は今まで大きな考え違いをしていた、この『覗見方形(ピーピングキューブ)』は大して役に立たない能力だと思っていたがとんでもない!

 この能力はエロDVDなんかの映像から完全3D映像を作り出せるってことだ!

 まさに究極のアーティファクトだったんだ!

 男の子の夢が詰まっている!


 今度試させてもらおう、この一連の騒動が収束したら……

 この程度の希望は死亡フラグにならないよな?




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