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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
303/375

第297話 第4魔王 ~伝説~


 伝説の勇者ジークフリート……


 彼がシニス世界の歴史に残した足跡は大きい……

 歴代勇者の中で最強、もっとも知名度が高い。

 それは人族(ヒウマ)のみならず、他種族の間でも知れ渡っている。

 しかし何を成したか…… それを詳しく知る者は少ない。


 500年前に現れた29代目勇者ジークフリート、勇者は25年周期で現れる突然変異なのだが、しかしその実働期間は10年にも満たない。

 覚醒から定年までがおよそ10年前後…… その期間に何を成せるかが勇者の評判に繋がる。

 歴代勇者の中でもっとも功績を上げた男、それが勇者ジークフリートだった。


 しかし500年の時間は長い、長命種の寿命よりも長い時間は偉大なる功績を忘れさせるには十分な時間だった。


 それでも伝説という形でその偉業は人々に語り継がれている……

 単純に彼以外の勇者がナニも成し得てこなかったからかもしれないが……




 ジークフリートは勇者に覚醒した15歳で、当時グラウネス地方を恐怖のどん底に落としていた帝王獅子(ダレイオス)を単独で撃破。

 その後もアルカーシャ王国を襲った第6魔王の眷属を退けたり、滅亡の危機にあった炭鉱族(ドワーフ)を救ったり、お祭り戦争でトゥエルヴを襲った第11魔王の使途を倒したり、人族(ヒウマ)で初めて要塞龍・ホープとヒンデンブルクを従えたり…… etc. etc.

 そして歴代勇者で唯一の覚醒者でもある。


 現代まで語られている伝説は多くあるが、どこまでが真実で、どこからが創作なのか……

 真実を知る者は殆んどいない……


 そしてそんな最強の勇者でも、魔王殺しを成し遂げることは出来なかった……




 …………


 俺が知る勇者ジークフリートの伝説なんてこの程度だ、男勇者の事なんかわざわざ調べようとは思わない。

 もちろん神代書回廊(エネ・ライブラリー)を使えば詳しく分かるだろうが、正直大して興味も無い。


 要するにアレだ、バカ勇者の大先輩だ。

 この認識で充分だろ?



「伝説の勇者ジークフリート、お前のウワサは俺がこっちの世界に来た当初からちょくちょく聞こえていた。

 大昔に当時最強の仲間を率いて第4魔王に挑んだバカ勇者の伝説を……」

「フッ、ヒドイ言われ様だな…… だが、否定も出来んな」


 そう、思い返してみればコイツの言動には色々と奇妙なところがあった。

 勇者関連の情報に妙に詳しかったり、現勇者への当たりもキツめだった、あれは不甲斐ない後輩を見て憤っていたんだろう。

 お前もあんまり人のこと言えないけどな…… だって魔王殺してないしな、俺に言わせれば一般人と大差ない。

 まぁ現勇者(アレ)よりはマシか。

 龍人族(ドラグニア)のじーさんがコイツにだけ厳しめだったのは、不能仲間だからじゃない、元勇者で以前にも顔を合わせた事があったからなんだ。


「あの……! ちょっと待ってください!」

「ん?」


 ミカヅキが頭を抱えている。

 ちなみにネフィリムは固まったまま未だに再起動していない。


「そこの筋に……ジーク…様は…… 元・勇者?」

「うん、そうみたいだな」

「500年前って…… そんな寿命を持っているのは上位3種族だけですよね? 人族(ヒウマ)がそんなに長い時間生きていられるハズ……」

「あ~……うん、そうだよね……」


 そこから先の説明は本人にしてもらおう。

 ジークにアイコンタクトを送る、ほら、さっさとゲロってしまえ!


「ふむ、それは簡単なことだ、それこそが俺に掛けられた呪いだからな」

「呪い…… まさか……」


「そうだ『不老不死の呪い』だ」


「ふ……不老不死……

 つまり…… ナニをやっても死なな……い?」

「そういう事になる」


 コイツの不老不死は魔王の不死性を遥かに上回る、殺す方法はナニかあるとは思うけど、今のトコロ有効な手立ては思い浮かばない……

 火山にでも突き落とせば死ぬかな? おあつらえ向きにココは火山だが、身体から泡を出す能力とか持ってないよな?


「死なないってコトは…… 呪いを取り出すことも……?」

「あぁ、無理だ」

「それじゃ…… マスター達が訪れるまでの私の1年は……?」

「あぁ、無駄な時間だったな」


 コラ、もっとオブラートに包んで言えよ。


「私の貴重な青春の1年間は……」

「うむ、戻るコトは無いな」


 ジークめ、暗殺されそうになった日々の恨みをここぞとばかりに晴らしてやがるな。


「マスター…… すみません、コイツ殺してイイですか?」

「イイって言いたいんだけど不老不死なんだよね、コイツ……」

「クッ……ゥゥ~~~!!」


 ………… ミカヅキがやり場のない怒りに震えている、可哀相に……

 この事実を隠していた俺もあまり偉そうなことは言えない。




「ジークフリートよ、お前は何をしに戻ってきたのだ?」

「あの日の約束を果たしに来た、魔王を殺せるだけの力を得て……な」


 苦悩するミカヅキを無視してジークとスサノオが会話を続けている、あの日の約束? お前の息子が死んだ500年前のコトか?

 いやチョット待て、魔王を殺せる力? まさかとは思うが……それって…… 俺のコトじゃねーだろーな? オイ! こっちに視線を送るな! フザケンナよテメー!!

 何が悲しくて筋肉の為に第4魔王と戦わなければならないんだよ!


「約束通り魔王を殺せる力を貰い受ける」


 ナニを言ってるんだこの筋肉は? 魔王を殺せる力を得てから魔王殺しの力を貰い受ける? 意味が分からん。


「おいジーク、お前はどんな約束をしたんだ? 大体勇者のクセに魔王と取引したのか?」

「俺の目的は昔から変わっていない、魔王を殺せる力を得る…… それだけだ。

 カミナには話した事があっただろ?」


 男の話など忘れ……あ~…… 確か…… ギフトに匹敵する力が欲しかった……だったっけ?

 残された時間が少なく、自らの実力に限界を感じていた……とか……

 あぁ、残された時間が少ないって勇者の定年の事だったのか。


「お前覚醒勇者だったんだろ? だったらさっさと抹殺対象の魔王を倒しに行けよ」

「俺が倒したかった魔王はみんな軍隊持ちだった、どうしたって時間が足りなかったんだ」


 …… 確かに、たとえ当時の世界最強メンバーだったとしてもたった4人で軍隊を相手にするなんて無理だ、コイツの標的はきっとレイド、ウォーリアス、ミューズ、後はマリア=ルージュってトコロか……

 誰にも気付かれずに魔王だけを暗殺ってのは難しい。


「それ故に有用な呪いを求めた、まぁそんなに甘くは無かったがな……」


 不能の事を言ってるのか…… どんなに有用に見えても呪いは呪いだ、何かしらのデメリットは存在するだろう。

 『認識消失の呪い』には永遠の孤独が…… 『不老不死の呪い』には永遠のEDが付いてくるとか……


「アレから500年…… ようやく魔王を倒せる力を得た、魔王スサノオよ、お前の呪いの力を貰い受ける」

「…………」


 お前自身は魔王を倒せる力を持ってないだろ? 思いっきり人任せじゃないか。

 てか…… 呪いの力を貰い受けるって…… え? お前もしかして魔王になるつもりか? 元勇者のクセに?


「500年か…… 人族(ヒウマ)にしては随分ノンビリしていたな? お前が倒したかった魔王は既に残っていないだろ?」


 ? コイツは何でマリア=ルージュが倒された事を知ってるんだ? いや、マリア=ルージュに限った話じゃ無い、ヘルムガルドに住んでいたら世界情勢から取り残されそうな気がするんだが……

 魔王グリム経由でリリスが教えたのかな?


「お前には関係ない話だと思うが?」


 あらジークさんったら強気だな、でも俺を頼るんじゃねーぞ?

 しかし魔王スサノオの言うコトももっともだ、今や穏健派の魔王しか残って無い、聞いた限りじゃ第1魔王も世界征服とかするタイプじゃないしな……

 まさか…… お前の殺したい魔王って俺のコトじゃ無いだろうな?


 …………


 微妙にアリそうで困る…… 俺って日頃の行いが悪いからなぁ……


「そうだな…… 確かにワシには関係ない話だな」


 魔王スサノオはそういうと腰を上げた……

 その姿を見て愕然とする…… いや、何というか…… ヨボヨボだ、さっきまで振りまいていた威圧感が無くなった…… 完全にただのお年寄りだ、吹けば倒れそうな…… にもかかわらず視線だけは相変わらず鋭い。

 さすがの俺でもこんなおじーちゃん殺すの嫌だぞ? どこぞのゴリラジジイ並みの威圧感を放ってないと戦えない……


「衰えたな魔王スサノオ…… 何故だ? 魔王であるお前が何故そこまで衰弱している?」


 やっぱりそうだよな? 少なくとも500年前はこんなじゃ無かったんだ、いや、ミカヅキが追放された頃はもうちょっとシャンとしてた様だし……

 どういう事だ? 半不老不死の魔王が経年劣化するハズ無いし…… 考えられる可能性があるとすれば…… 呪い……か? 認知症……ってワケじゃ無さそうだが。


 いや、それよりもチョット待て! いきなり対第4魔王戦のゴングが鳴らされそうだ。


「少し落ち着けジーク、お前が第4魔王と戦うのを止める気はないが、その前に少し話をさせろ」

「………… ふぅ…… そうだな、少し落ち着こう」


 正直、あのヨボヨボっぷりならジークでも勝てそうな気がする、だからこそ先に話をしたい。


「お前は……」

「失礼、自己紹介がまだだったな、俺は霧島神那、一応新世代の魔王の一人だ」

「そうか…… お前が新しい第3魔王か……」


 う~ん…… 本当に何で知ってるんだ? まぁイイ。


「魔王スサノオに聞きたい、呪いを解呪する方法を……」

「お前もジークフリートの仲間なら知っているだろ? 呪いとは死ぬまで解ける事は無い」

「俺が聞きたいのはそれ以外の方法だ、あるんだろ?」

「………… 何故そう思う?」


 何故かって? そんなの簡単だ。


「アンタが終焉の子エネ・イヴに呪いによる封印を施したからだ」

「!」

「封印したという事は、いつかそれを解除しなければならない日が来るという事だ。

 そうでないなら殺した方が手っ取り早いし安全だ」


 リリスの反応を見るに、終焉の子エネ・イヴに恨みがあったワケじゃ無いだろう、むしろ罪悪感で押し潰されそうに見えた。

 魔王プロメテウスが未だに次代神族(ネオ・ディヴァイア)に忠誠を誓っていた様に、リリスも未だに古代神族(レオ・ディヴァイア)に…… 終焉の子エネ・イヴに信愛にも似た感情を抱いている節が見える。


 そんな相手を永遠に解けることの無い呪いで封印するとは思えない。

 ……ま、あくまで予想だけどね?




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