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レヴオル・シオン  作者: 群青
第六部 「神の章」
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第293話 乗鳥の神髄


 砦から外へ出ると、そこには小さな村が広がっていた……


 中へどうぞと言われたが、砦はほぼ素通りだ。

 思っていた以上に薄っぺらい砦だった。

 アレじゃ砦としての役目を果たせない…… が、そもそも必要ないのだろう。

 羅刹口は大軍が攻め込めない地形になっている、しかしそれならもう少し警戒は厳重にするべきだと思うのだが……

 俺とミカヅキが優雅にティータイムを始めるまで気付かないとか、警備がザル過ぎる。


 まぁヘルムガルドを攻める奴がそもそもいないか……

 レイドかウォーリアスか…… ミューズが鬼族(オーガ)の男を攫う理由は無い、アイツの性の対象は人族(ヒウマ)限定だからな。

 あとはマリア=ルージュくらいか…… アイツは浮遊大陸で空から攻めてくるから関係ない。


 そしてこの村も兵士が駐留しているワケでも無さそうだ。


「…………」「…………」「…………」「…………」


 女子供が多いようだ、あと老人か…… 若い男はほとんど見当たらない。

 彼らは遠巻きにこちらを見ている、俺達が珍しい……だろうな、ヘルムガルドに他種族が足を踏み入れる事など殆んど無いんだから。


 それとみんな和服だ、さっきの二人もそうだったが、鬼族(オーガ)は普段和服を着用しているのか。

 俺の中では和服と言えば白! ってイメージがある。

 少なくともミカヅキが和服を着ていたトコロは見た事が無い……


 それ以前にミカヅキって基本メイド服だからな…… 今もそうだし……

 ミカヅキの衣装パターンってメイド服か、魔導学院の制服か、パジャマ姿か…… あとは水着くらいしか見たコトが無い。

 メイド服率九割超え…… なんかすごく勿体無い気がしてきた、帰ったらもっとフリフリの沢山ついた可愛い服をプレゼントしてみようかな?

 おっと、もちろん他の嫁達にもだ、禁域王はみんなのダーリンだからな♪


 …………


 コホン、まぁそれは置いておくとして、村を見渡せばすぐにある事に気付いた。


「ここの村人はみんな角が一本しか生えてないんだな」


 確か鬼族(オーガ)は角の大きさや数が多いほど位が高くなったハズ、つまりここの村人たちは……


「ここは都から最も遠い僻地、鬼族(オーガ)の中でも最も位の低い者たちが暮らす村なんです」


 ミカヅキが教えてくれた。

 そう言えば鬼族(オーガ)は角というステータスで格付けされる階級社会だったな。

 そして角を幾らでも自由に出せるミカヅキが “忌み子” と呼ばれるようになった……


 生まれ持った異能力のせいで迫害…… 酷い話ではあるがなにも鬼族(オーガ)に限った話では無い。

 多分あらゆる種族でそういった風潮はある、白の場合は大事にされてたみたいだが、ミラの場合は魔王の娘ってコトで腫れ物扱いだった。

 俺や琉架も程度の違いは有れどそういったモノに晒された経験がある……

 いや、俺のケースは暗黒の病が悪化した結果による自業自得だったが……


 こう考えるとウチのギルドの女の子たちは結構ツライ目に遭った子が多い、その中でもミカヅキは取り分けツライ過去があったんだな……

 大丈夫、コレから幸せになればいい! 俺が幸せにしてやるゼ!!


「初めての方も居られるので念の為説明しておきますが、この大陸には他の領域よりも強い魔物が多く生息しております」


 おっと、鬼ジーサンの説明を聞き流してた、まぁ魔物の類は問題無いだろう、巨人狂戦士(バーサーカー)のビキニアーマー・ウォリアーがいるんだから……


「それではどうか充分にお気を付け下さい」


 あれ? もう追い出すの? 案内とかしてくれないの? ウチの案内役はあまり役に立たなそうなんですが……

 そもそもどこに向かうんだ? もうじき日が暮れそうなんだけど?


「それでは向かいますか、ヘルムガルドの都『央京』へ!」


 ネフィリムは元気いっぱいにそのまま歩き出す…… いやいやチョット待て!


「その『央京』とやらは何処にあるんだ? どれだけ掛かるんだ? どうやって向かうんだ? まずはそれを説明しろ」

「チッ…… 央京はここから北西方向におよそ……ゴヒェァゥクkm位でしょうか? 個人的には徒歩がおススメです!」


 コイツ…… 今舌打ちしたぞ?

 ゴヒェァゥクkm? 誤魔化さずにちゃんと言え、500…kmかな?

 それを徒歩って…… このメンツでも1週間は掛かるんじゃないか? やはりコイツには任せられん!


 しかし一度入国したんだし、ここからはホープを使うってのはどうだろう?

 あまり得策では無いか…… ホープは勇者の乗り物ってイメージが強い、勘違いされても困るしな。

 それに俺達は羅刹口から正式に入国したが、ホープは大陸の外から飛んでくる…… ホープ自身が不法入国してるって事になる。

 ホープが魔王スサノオに攻撃されたら色々とこじれるコト必至だ。


 やはり正攻法で行くしかないか…… その方が安全だろう。


「ミカヅキの意見を聞いてもいいか?」

「そうですね…… 個人的におススメできるのは船での移動でしょうか? ここからですと川をさかのぼる事になりますので10日前後は掛かると思いますが一番楽だと思います…… ですが……」

「………………」

「マスターに船は無理……ですよね?」

「船は無理……ですね」


 俺から意見を求めておいて申し訳ない。


「それでしたら…… ライドルニスを使うのがよろしいかと……」

「ライドルニス?」

「ヘルムガルドで一般的に使われてる乗用生物です、他領域でいう所の馬の代わりです。

 デクス世界で例えるとダチョウに近い生物ですね、これなら3日ほどで都に到着するでしょう」

「じゃあそれで決まりだな」


「くそっ!」


 今 小声で「くそっ!」って聞こえたぞ、ネフィリムの奴だんだん隠さなくなってきたな。



---


--


-



 ライドルニス……

 俺のイメージではゲームで出てくる黄色くて臭い鳥のイメージだった……

 ところがだ……


「ケェ!」


「………… デカイな」

「そうですか? コレくらいの大きさの魔物なんていくらでも居るじゃないですか」


 魔物はな…… 4メートル台の魔物なんか腐るほど居るけど、4メートル台の鳥は見たこと無い。

 ダチョウというよりモアだな。


 ただこのサイズならジークやネフィリムも問題なく乗れそうだ。

 乗れないなら俺とミカヅキだけ乗って二人は走ってついてこさせようと思ってたんだが……

 なんだったらロープで引きずったっていい、二人ならきっと薄皮一枚剥ける程度の怪我しかしないだろう。


「日が暮れるまでまだ少し時間がある、行けるところまで行ってしまおう」


 ジークがまた無茶なことを言う。


「待て待て、魔物が出るんだろ? 野営するのか? お前が寝ずの番をするなら別に構わんが……」

「心配いらん、魔物除けの精霊魔法がある」


 あぁ、そんな便利なものあったのか、だったらいいか。

 野営の準備はミカヅキがしてきてるし……

 いや待て、そんなモノがあるなら魔宮攻略時に披露しろよ、それともあの時はまだ使えなかったのか?

 肝心な所で使えないガッカリ賢王め!


「………………」


 ネフィリムが無言で睨んでくる、非常に不満そうだ。

 そんなに早く着くのがイヤか? 俺を睨みつけないで、プランを出したジークに文句言えよ。


「では俺が借りてくるとしよう」

「お供します」


 ジークとネフィリムが二人連れだって村の出入り口付近にある小屋へ向かって行った。

 その姿はまるで俺と白みたいだ…… 大きさが全然違うが……




 しばらくして戻ってきた二人は3頭のライドルニスを引いていた。

 ……ん? 3頭?


「カミナはミカヅキと一緒に乗れ、元々ライドルニスは複数人を乗せるモノらしい」


 ジーク…… 気が利くじゃねーか、お前とネフィリムじゃ2ケツは出来なくても、俺とミカヅキなら可能だ。

 もし2頭だけ連れてきて、ジークの後ろに俺を乗せようとしたらぶん殴ってたトコロだ。

 そしてもしネフィリムの後ろに俺を乗せようとしたら俺がぶん殴られてたトコロだ。


「デクス世界育ちのカミナには操獣スキルは無いだろ?」


 そう言えばそうだった……


「ではマスター、どうぞ……」

「あぁ、よろしく」


 ミカヅキの後ろに乗り腰に手を回しキツめに抱きつく。


「うっ……///」


 おやおや~? ミカヅキさん耳が真っ赤になってますよ?

 これはなかなか素晴らしい、帰る時ライドルニスを1頭買って帰ろっかな?



 その日は完全に日が落ちるまで走り、その場で野営となった。



---



 ジークとネフィリムが野営地周辺の魔物狩りに出かけた。

 いくら魔物除けの精霊魔法でも、ランクが高い魔物全てを遠ざけるのは難しいそうだ…… 微妙に使えない。あんなに自信満々だったクセに……


 それともコレは嘘なのだろうか? 魔物狩りはあくまで名目、実はそこら辺の茂みの奥で月光花を咲かせてるんじゃないだろうな?

 後学の為に覗きに……行く気が起きない……

 筋肉と筋肉のぶつかり合い…… 俺の人生には一切必要ない要素だ。


 大体ジークさん家の引きこもり息子は未だに部屋から出てこない、その引きこもり息子を部屋から引きずり出す為にアイツはヘルムガルドまでやって来たんだ。

 ジークから誘うことはまず無いな。


 問題なのはその逆のパターンだ。

 最近露骨にジークに色目を使う様になってきたネフィリムが暴走して、そこら辺の草むらに乙女ジークを押し倒したりしたら……

 ジークの秘密が暴かれたら…… 待っているのは超弩級の修羅場だ。


 その時は頑張ってネフィリムを止めてくれ、俺はこの件に関しては一切関与しないから。


 それから1時間、日もすっかり落ちて周囲が暗闇に包まれたころ二人は戻ってきた。

 衣服に乱れ……は無いな。

 もっとも全身血塗れだけど…… アレ全部返り血かよ…… プロレスごっこを隠す為にワザと血を塗りたくって来たワケじゃ無いだろうな?


「さすが巨人族(ジャイアント)四天王の一人だな、惚れ惚れする強さだったぞ?」

「そんな……/// ジークこそ凄まじい剛拳、惚れ直…… 見惚れてしまいました///」


 剛拳って…… お前って職業“賢者”だよな? やっぱり賢者ってのはあっちの意味の賢者か…… お前もうバトルマスターとかにジョブチェンジしろよ。



---



 翌日、朝食を済ませたらすぐに出発する。

 今日はミカヅキに操獣スキルを教わりながら進む……


 何故ワザワザそんなモノを教わるかって? そんなの決まってるだろ? ミカヅキの後ろに乗るより前に乗る方が得られるモノが多いからだ。


「マスター、方向を変える時は手綱をこう……」


 ムギュ♪


「こうか?」

「はい、お上手です、それでこう……」


 ムギュギュ♪


 素晴らしい…… 昨日よりもさらに素晴しい!

 背中に押し付けられる豊満な実り、実にイイ感触だ。

 楽しい旅になりそうだ!




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